PCオーディオ用の人気の音楽再生ソフトウェアである「Audirvana」に日本国内限定版が登場した。これは「Audirvana 本」と呼ばれる製品で、本はもとと読む。1万2800円の価格でオンラインサイトで販売されている(既存ユーザー向けの優待販売もあり)。30日間のトライアルも可能だ。
Audirvanaは昨年、新シリーズの「Audirvana Studio」をリリースしている。Audirvana Studioは従来の「Audirvana Plus」と比較すると操作性の改善や新しいDSPなど機能追加がなされた製品であることに加えて、買い切り(永続ライセンス)ではなく、サブスクリプション型のサービスになっている点が話題を集めた。
Audirvana本との違いは、Audirvana本が日本国内でのみ提供されるだけではなく、買い切りでの提供である点だ。主要機能は変わらないが、ストリーミングサービスとの連携がサポートされないという点だ。この変更については、2021年5月に開催されたAudirvana Studioのイベントで、今後Audirvanaのソフトがサブスクリプション方式に大きく舵を切ると発表された際、多くの質問や批判があり、抵抗感を示すユーザーが一定数いたことを思い出させる。
一方、ストリーミングサービスがサポートされないことに関しては「TIDAL」や「Qobuz」が日本ではまだ正式にサービスインされていないためだろう。PCを使ったハイレゾ再生というと、日本国内では購入した音源をPCにダウンロードし、ローカル再生する方法がまだまだ根強い。
Audirvanaはもともと、10年以上前にローカル音源を「インテジャーモード」など、よりハードウェアに近い階層のOS技術で高音質化を図ったことが特徴だった。この点が受け、特に日本のPCオーディオマニアで人気があったという経緯を持つ。Audirvanaの公式サイトを見ると、Aurirvana 本はAudirvanaの解説本などではなく、「Audirvana Origin」の訳語であることがうかがえる。これに「本」という単語を当てるのがいいのかどうかはともかくとして、原点回帰という意味で日本限定版が発売されたことは大いに納得できることではある。
しかし、この間に日本でもネットワーク再生が普及している。国内でもネットワークに強い音楽再生ソフトである「Roon」が台頭してきた。Audirvana Studioは操作性の向上やサブスクリプション方式の採用などRoonを意識したものではあったが、その牙城を切り崩すのは中々難しいものがあったのかもしれない。
他方で世の中がストリーミングに行き過ぎることや、サブスクリプション方式の提供形態が増えすぎていることに対して抵抗感を持つユーザーも多々いるということだろう。Audirvana Studioの利用料金は1年契約で9000円弱だが、2年、3年と利用し続ける場合に継続的に料金が発生してしまう。
サブスクから買い切りへ。こうした揺り戻しで業界がバランスを取るということも興味深い動きではある。
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