【後編】KLKTN代表 岩瀬大輔氏、ヤングマガジン鈴木一司編集長ロングインタビュー
NFTはマンガファンの「推し度」や「圧」を数値化する試みである!?
2022年04月17日 18時00分更新
ファンの度合いを可視化する
岩瀬 もともとヤングマガジンさんにご提案したときにお話したことなのですが、NFTは「ファンの度合い」を可視化できるというのが、1つ、面白いポイントかと思っています。
―― ファンの度合い?
岩瀬 今までは、どの作品が何万部売れたかは把握できても、「誰がどれだけ買っているか?」というお客さんの固有名詞では把握できなかったと思うんです。
作品がまだ話題になっていない初期から買っている方とか、たくさん買った方とか。先ほどの8ページ全部購入している方もそうですね。初回で30ページ買っている方がいて、もし『code:ノストラ』がヒットして映画化されたら、この30枚買った方は、間違いなくヤングマガジンさんから試写会イベントの招待券を送られると思います(笑)
そんなふうに固有のファンの発見や、熱意の度合いが可視化できることで、新しい体験が生まれるのではと。
―― いわゆる「圧が強いファンとその行為」の可視化ですね。イベントで見る「痛バッグ」の文化と似ていますね。バッグにレアな缶バッジをたくさん付けて、推しに対する“愛の度合い”を示すという。また、ゲームでイベントをがんばると「トップ100」とか「○○さん推し」とか、プレイヤーネームに付けられる特別なバナーがもらえたりします。そういうものと似ていると感じました。
岩瀬 まだ機能ができていませんが、NFTを多数所持している方にゴールドコレクターみたいなバッジを付けたり、購入していただいたあとのメリットをうまく実装していきたいです。
鈴木 僕はたとえば、第1話を買ってくれた人にサイン会の優先券プレゼント、といったことができればいいと思ってます。作家さんも喜ぶし、読者も喜ぶから。NFTを通して、そんなコミュニティーを岩瀬さんたちとうまく運営していければいいなと思ってます。
岩瀬 コミュニティーは、すでにK-POPのNFTで実装しているものがあります。Discord内でK-POPアーティストの誕生日を祝う催しをやっていたりします。
―― マンガにはコミュニティーを形成できる熱いファンがいることを最初から意識していらっしゃるのですね。
岩瀬 はい。海外には「Fandom(ファンダム)」という言葉がありますが、これはファンたちが作る1つの小宇宙ですね。マンガにも熱いFandom的なものがあります。
鈴木 岩瀬さんが仰ったFandomですが、昔はマンガ誌にもFandomというか、出版社と読者のコミュニティーが機能していたんです。読者にアンケートを取って、読者の声を反映させてマンガを作っていくという。でも最近それが非常に難しくなってきているところがあるんです。
―― と、いいますと。
鈴木 たとえば読者さんの間で作品が盛り上ったらいいなと思って、Webやアプリに「コメント欄」を付けたとします。すると、コメントのなかには作家さんにとってダメージとなるような言葉も書かれたりするからです。
それは愛の裏返しだったり、匿名だから勢い余ったところもあると思うんです。とはいえ、得てして読者のコミュニティーを僕らが主導しようとするとなかなか成立しないんです。ファン同士で自然発生的にできたものはたくさんあるのですが。
そういう意味で、コミュニティーを作って作品を盛り上げていくというご提案が、僕らにとっては願ってもない、非常にありがたい内容だったのですね。
―― 最後に今後の展開や抱負を教えてください。
鈴木 出版社としては、作家さんや作品のためになることを考え、応援してくれる読者さんを大事にしたいですね。NFTではファンイベントもやっていきたいです。今後、作品も増えていく予定ですので引き続き注目してもらえるとうれしいです。
岩瀬 日本のカルチャーの人気や熱量のすごさというのは、香港で会社を作って海外に出て、あらためて気づかされたところでもあります。わかりやすいのは、世界の名だたるサッカー選手たちが『キャプテン翼』を観て育った、みたいなところですよね。
特に、日本食とマンガ・アニメは日本を代表するコンテンツだと思っています。引き続き、NFTのような試みを通して、海外の人も巻き込んでコンテンツを盛り上げていきたいなと思います。
〈前編はこちら〉
この連載の記事
-
第58回
アニメ
辞職覚悟の挑戦だった『ガールズバンドクライ』 ヒットへの道筋を平山Pに聞いた -
第57回
アニメ
なぜ『ガールズバンドクライ』は貧乏になった日本で怒り続ける女の子が主人公なのか?――平山理志Pに聞く -
第56回
アニメ
マンガ・アニメ業界のプロがガチトークするIMART2023の見どころ教えます -
第55回
アニメ
日本アニメだけで有料会員数1200万人突破した「クランチロール」が作る未来 -
第54回
アニメ
世界のアニメファンに配信とサービスを届けたい、クランチロールの戦略 -
第53回
アニメ
『水星の魔女』を世に送り出すうえで考えたこととは?――岡本拓也P -
第52回
アニメ
今描くべきガンダムとして「呪い」をテーマに据えた理由――『水星の魔女』岡本拓也P -
第50回
アニメ
NFTで日本の漫画を売る理由は「マンガファンとデジタル好きは重なっているから」 -
第49回
アニメ
緒方恵美さんの覚悟「完売しても200万赤字。でも続けなきゃ滅ぶ」 -
第48回
アニメ
緒方恵美さん「逃げちゃダメだ」――コロナ禍によるライブエンタメ業界の危機を語る - この連載の一覧へ