樹脂とデザイン 石川県の地域企業同士の共創が新ブランドを生む
石川県の創業機運を狙う「第1回いしかわスタートアップステーション2021」開催
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ARASの事業は、「そもそも樹脂の美しさとは何なのか、樹脂の魅力とは何か、樹脂には1個1個違った表情があってもいいのでは、という思いの中で立ち上げたブランド」(石川氏)だったそうだ。「樹脂というと、安価に大量生産された短命なモノに使われる機会が多いことから安っぽいというイメージが付いているが、『樹脂にしか実現できない価値や魅力があるはず』という大きな問から始まったプロジェクト」(上町氏)としてスタートしている。
ARASの事業を行う上で石川氏が重視しているのが、一緒にチームとしてやっていく雰囲気作りだった。そこで、「どうしたらいい製品ができるのか、ということを時間をかけて会話をしている」(石川氏)という。
また、そういった姿勢について上町氏も非常に共感しているとのことで、「デザインを提案した数は100を余裕で超えていて、試作したものも多いが、その中には世に出さなかったものも多くある。ただ、何のためにやるのか、どういった価値を作りたいのか、という議論がまず先にあって、やる前から『できない』と口にせず、とにかくまずやってみて、その結果を互いに分析して次に繋げる、、という点が一緒にやっていて非常に心地よく、いちばん望む姿で関係が構築できている」(上町氏)と感じているそうだ。
こういった考えによる関係性の構築により、実際に製品を製作する現場にもいい雰囲気ができているという。例えばseccaからは、製品の色味について抽象的なコンセプトしか指定していなくても、現場も含めたしっかりとした話し合いができていることで現場の職人がそのコンセプトをしっかり飲み込んで、seccaのデザイナーが求める色を作り出すことができているそうだ。上町氏は、「人生の大切な時間の一部を使う以上、関わる皆が自分事として愛情を持ってものづくり=仕事に取り組める環境をつくる、それがいいモノづくりに絶対必要となる条件で、それが石川樹脂工業との間でしっかりできている自信がある」と述べたが、この言葉が両社の関係性を如実に示していると言っていいだろう。
そういった中、石川氏は、地域経済ならではの共創やパートナー作りといった部分がコロナ前後で大きく変わったと感じているそうだ。コロナ前は、人材が採りやすい、ベンチャーキャピタルが多い、会社が多いので話もしやすいということから、東京でベンチャーを立ち上げるメリットが多くあったと指摘。しかしコロナ後では、テレワークなどリモートで仕事がしやすくなったことで採用でも距離の垣根がなくなり、地方でのベンチャー立ち上げや人材確保のハードルが下がったと感じているという。
そして、地方で事業を行なう上でどう人材と繋がればいいのか、という質問については「昔ながらの友人などのツテを使うのがいちばんいいと思っている」(石川氏)と指摘しつつ、「SNSなどでみんなに『助けて』と言えば助けてもらえることが多い。こういった人いないかな、と聞くと、自分は無理だけどこんな人がいるよ、と教えてくれるので、ちゃんと”助けて”と言うことだと思う」と述べた。
また上町氏は「オープンイノベーションだろうが、企業と企業が仕事でつながろうが、人と人との関係性が築けない以上はその先に何も生まれないと思う。ちゃんと一緒にビジョンを共有して、一緒に歩んでいくことにコミットできる信頼関係を築いていくのが大事だと思っている」と述べ、最終的には人と人の関係性構築が重要と指摘した。
その後、特許庁総務部企画調査課ベンチャー支援班長の鎌田哲生氏が参加し、特許庁のスタートアップ支援策などについて説明。特許庁では「知財アクセラレーションプログラム IPAS」において、スタートアップ向けの知財戦略支援プログラムを提供。また、47都道府県に無料相談窓口となる知財総合支援窓口を用意しており、そういった支援策や相談窓口を積極的に活用してほしいと説明した。
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