究極の選択を迫るシエラのトレッド
さて、ジムニーとシエラのもっとも大きな違いはトレッド。これはホーシング、すなわちデファレンシャルギアと車軸が収まるケースの長さに現れます。
画像はフロント右側のホーシングを前から見たところ。上がジムニー、下がシエラ。ぱっと見てわかる通りシエラの方が長い。画像左端のナックルから銀色のスタビライザーリンクの間を延長しているのが分かります。このトレッド拡大に伴うスペックの差を書き出してみました。
トレッドの拡大に加えて、シエラのホイールはインセット5mm。これはインセット22mmのジムニーより車輪が外に出る設定です。タイヤも20mm幅広なので、これを覆うオーバーフェンダーが必要となり、そのフェンダーに合わせて前後バンパーも大型化。その結果ジムニーより幅170mm、長さ155mm大きくなったのがシエラというわけです。ちなみに最低地上高と全高が5mm違うのは、シエラが外径の大きなタイヤを履いているから。
つまりシエラは樹脂パーツが張り出しているだけ。室内の広さはジムニーと同じです。シエラのバックミラーが防眩式、ジムニーはただのミラーという違いはあるものの、室内の造りも変わりません。
だけど、これがカッコいいんですな。特にリアビューの印象が全然違っていて、路上で後ろにつくと「おおおシエラやっぱええなあ」と、つい声に出てしまう。2台並んだところを見比べてみると、ジムニーがメルセデスのGクラスとすれば、シエラはジープのラングラー。フェンダーとバンパーだけで、こうも見え方が変えられるものかと、デザイナーの手腕に感心せざるを得ません。
そして、このトレッドの差が究極の選択を迫ってくるのであります。
トレッドは広くても狭くても雪道では一長一短
全幅が170mmも拡大したおかげで、シエラは狭い道を走るのが難しくなりました。絶対的には5ナンバー枠の幅1700mmを超えない小さな車ですが、ジムニーが林業やインフラ事業者に受け入れられたのは、より狭い林道を走れる軽自動車だからこそ。
実は幅の狭いクルマが便利なのは、雪国の一般道も同じです。車道の両脇に除雪した雪が積み上げられると、4車線あった道路は2車線に、2車線だった道路は1車線に近づいてゆき、徐々に対向車とのすれ違いが難しくなって参ります。
加えて、降雪→圧雪→融雪→凍結を繰り返した結果、路面は落差の大きな凹凸だらけで毎日がオフロードレースのような状態。まさにジムニーシリーズ大活躍のシーンと思いきや、これが大問題。氷雪路の落差にに車輪を落とすと車体はあらぬ方向へ振られ、特に重心の高い車は横転しそうで怖い思いをしますから、ここはトレッドの広さが欲しい。
すれ違いの楽なジムニーか、凍結路面の凸凹に強いシエラか。ここが私的には究極の選択なのであります。
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