ターゲットを絞り込んだがゆえのスペック
RX 6500 XTのスペックは以下の通りだ。RX 6500 XTを語る上で最も重要なのはメモリーバス幅64bit、インターフェースがPCI Express Gen4 x4接続であるという点だ。近年のゲーミング向けGPUはメモリーバス幅128bit以上であり、ゲームの描画性能より映像出力を増やしたい人向けのローエンドGPUで64bit幅が採用されている例が多い。64bit幅でx4接続ともなるとかなりCPU⇔GPUの帯域が狭くなるため、RX 6500 XTで遊ぶゲームは必然的にこのバス幅に合わせた描画負荷軽めのものになる。
またVRAMはデータレート18Gbps相当のGDDR6なので上位モデルより高速なチップを搭載しているが、容量は4GBに絞られている。こちらもメモリーバス幅同様に遊ぶゲームやゲームの画質設定を制約するファクターとなる。
メモリーバス幅やVRAM搭載量はハンデだが、これをカバーするのがRDNA 2の核心技術である「Infinity Cache」だ。RX 6500 XTはRX 6600の半分にあたる16MBのInfinity Cacheが搭載されている。
さらにRX 6500 XTではプロセスルールが変更され、既存のRX 6000シリーズよりも微細化の進んだ6nmプロセスとなった。これにより既存の7nmラインを圧迫せずに生産できるメリットもあるが、ハードウェア的にはより高クロックが狙いやすくなる。
事実RX 6500 XTのゲームクロックは2685MHz、ブーストクロックに至っては2825MHzに到達している(いずれもBoard Power 120W設定のファクトリーOCを想定した値)。エントリーモデルであるが故のハンデは、Infinity Cacheの効果と高クロック動作で帳消しにしようというのがRX 6500 XTの設計コンセプトといえるだろう。
もうひとつ残念なのは、今回のRX 6500 XTに内蔵されているRadeon Media Engine、つまり動画処理支援機能にはハードウェアエンコード機能が一切搭載されていないことだ。上位のRX 6600ではH.264なら4K@90fps、H.265なら4K@60fpsか8K@24fpsのエンコード支援機能があり、これをOBS Studioなどで利用することによりゲーム画面の録画やストリーミングが低負荷で実行できた。
しかし、RX 6500 XTにはそれがないため、RX 6500 XTを2枚めのビデオカードとして使い、エンコード処理だけさせるという使い方はできない。もちろんRadeonドライバー内蔵の録画機能(ReLive)も非対応だ。GPUのスペックや製品の想定ユーザー層を考えれば当然の帰結ではあるが、ちょっと残念ではある。
ちなみにデコードに関してはVP9/H.264/H.265のハードウェアデコードに対応しているため、YouTubeなどでの動画再生は問題ない。
この連載の記事
-
第458回
自作PC
Arc B580のRTX 4060/RX 7600超えは概ね本当、11本のゲームで検証してわかった予想以上の出来 -
第457回
自作PC
インテル新GPU、Arc B580の実力は?AI&動画エンコードは前世代より超強力に -
第456回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」は高画質設定でも最強ゲーミングCPUであることに間違いはなかった -
第455回
デジタル
「Ryzen 7 9800X3D」が最強ゲーミングCPUであることを証明する -
第454回
デジタル
性能が最大50%引き上げられたSamsung製SSD「990 EVO Plus」は良コスパSSDの新星だ -
第453回
デジタル
性能も上がったが消費電力も増えた「Ryzen 7 9800X3D」最速レビュー、AI推論の処理速度は7800X3Dの約2倍! -
第452回
自作PC
Core Ultra 200Sシリーズのゲーム性能は?Core Ultra 5/7/9を10タイトルで徹底検証 -
第451回
自作PC
Core Ultra 9 285K/Core Ultra 7 265K/Core Ultra 5 245K速報レビュー!第14世代&Ryzen 9000との比較で実力を見る -
第450回
デジタル
AGESA 1.2.0.2でRyzen 9 9950Xのパフォーマンスは改善するか? -
第449回
デジタル
Ryzen 9000シリーズの性能にWindows 11の分岐予測改善コードはどう影響するか? -
第448回
デジタル
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄 - この連載の一覧へ