このページの本文へ

「中小企業のDX化を推進、ハイブリッドワーク実現を支援」販売チャネル拡充などに取り組む

シスコ、中小企業向けビジネスを加速する重点戦略を発表

2022年01月14日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 シスコシステムズは2022年1月13日、中小企業向けビジネス戦略についての記者説明会を開催した。同社 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏は「セキュアなネットワークの実現とともに、中小企業のDX化を推進し、持続可能なハイブリッドワークを実現する」とコメント。「パートナーとの連携」「オンライン体験の拡充」「市場への新たなルート」を重点戦略として取り組む考えを示した。

シスコシステムズの中小企業向けビジネス戦略。「パートナーとの連携」「オンライン体験の拡充」「市場への新たなルート」に注力する

シスコシステムズ 専務執行役員 アジア太平洋地域SMBビジネス統括の鎌田道子氏、同社 執行役員 SMB・デジタル事業統括の石黒圭祐氏

販売チャネルと提供サービスを拡充する3つの重点戦略

 石黒氏は「パートナーとの連携」「オンライン体験の拡充」「市場への新たなルート」という3つの重点戦略について、それぞれの意味と具体的な戦略を説明した。

 まず「パートナーとの連携」では、通信キャリアパートナー、全国対応サービスパートナー、ディストリビューターおよび地域パートナーとの連携を強化する。シスコによると中小企業向けビジネスの国内パートナーは現在1200社に達しているが、「これまでのSIモデルでの提案だけでなく、提供するサービス形態が変化している。そうした変化にあわせたパートナーとの連携を進める」という。

 たとえば通信キャリアパートナーであるNTT東日本では、オフィス・店舗向けマネージドWi-Fiサービス「ギガらくWi-Fi」を提供し、すでに30万契約を突破。また全国対応の閉域VPNとしてマネージドSD-WANサービスを提供するなど、パッケージ化した提案が加速しているという。これらの成果に基づき、NTT東日本はシスコのパートナーアワードジャパン「Managed Service Provider of the Year」を受賞している。

 全国対応サービスパートナーであるリコージャパンでは、2019年からワンストップマネージドサービスの「Meraki Smart Service」をすべての都道府県で展開。2021年4~9月期には、前年同期比で187%増という成果をあげた。今後は、安全なネットワークをクラウドのなかで提供するクラウドセキュリティの新サービスとして「Cisco Umbrella」を提供するという。同社も「Small & Midsize Business Partner of the Year」を受賞している。

NTT東日本、リコージャパンとのパートナーシップの成果

 ディストリビューターでは、ダイワボウ情報システム(DIS)が地域パートナーとの連携を強化し、ハードウェアだけでなくソフトウェアやマネージドサービスの提供を開始。同社を通じたMerakiの販売パートナーは、2019年度比でおよそ2倍となる386社に拡大したほか、今後はセキュリティマネージドサービスにも新たに展開していくという。同社は「Japan Distributor of the Year」を受賞している。

 2つめの「オンライン体験の拡充」は、Webナビゲーションやデモ、トライアルをオンラインで提供するとともに、Eコマースを強化する考えを示すものだ。「ネットワーク、セキュリティ、コラボレーションという3つの軸は、いずれもクラウドソリューションがベースになっている。いかに簡単に、速く、良さを体験してもらうかが大切であり、そこにオンラインが活用できる。ここを強化していく」と説明する。

 その具体的な取り組みとして、説明会ではAmazon.co.jpとの連携について説明した。「当初はWi-Fiアクセスポイントの『Meraki Go』の販売からスタートしたが、現在は取り扱い製品数が70製品にまで拡大しており、今後も製品数を増やしていく。アクセスポイントやルーター、スイッチングハブといったネットワーク系の製品だけでなく、ウェブカメラやヘッドセットなどのコラボレーション系の製品もラインアップしており、BtoBだけでなく、同時にBtoCのニーズも獲得できている」と述べる。

 またWebex.comでは、カンファレンスの双方向性とエンゲージメントを最大にする「Slido」のサブスクリプションを統合し、Webexの基本機能として月額1790円のWebex利用料のなかで利用できるようにした。さらに、2022年2月11日までの期間にWebexを年間契約すると、3カ月無料で利用できるキャンペーンも開始している。

オンラインチャネルのAmazon.co.jp、Webex.comにおける取り組み

 「市場への新たなルート」については、新たな価値創造やソリューションパートナーとの協業を推進すると説明した。「お客様が欲しい、買いたい、使ってみたいといった場合にどこにアクセスするのかという逆引きから、新たなチャネルを開拓している。シスコが持っていなかった新たなチャネルの活用により、付加価値を提供したい」という。

 具体的には、ビックカメラと法人専用窓口を通じた新たな販売ルートについて協議を開始していることを明らかにした。「ビックカメラの各地域の営業部門が、訪問およびオンライン販売する際にも、シスコ製品を扱ってもらうことになる。新たな働き方をする際の商品群を組み合わせて提案することも可能であり、中小企業の近くでビジネスをしているパートナーを通じた販売ができる」としている。

新たな販売チャネルとしてビックカメラの法人窓口を追加

小型コラボレーションデバイス「Webex Desk Mini」など新製品を投入

 中小企業に最適な製品群として、ネットワークではMerakiシリーズを強化。新たにセキュリティアプライアンスの「Meraki MX75」や、オンラインカメラの「Meraki MV2」を投入するほか、セキュリティではDuoやUmbrellaに加えて「Meraki SASE」の機能を追加。コラボレーションでは「Webex Meetings」「Webex Calling」やWebexデバイスのほか、新たに「Webex Desk Mini」や「Webex Slido」「Socio」を提供する。「今後は、家庭でも使ってもらえるようなデバイスも展開していく」とした。

 今回の説明会では、家庭内でも設置/利用できる小型コラボレーションデバイスとしてWebex Desk Miniを初公開した。液晶ディスプレイやスピーカー、マイクなどを一体化しており、背面にあるハンドルを使って持ち運びもできる。Webexだけでなく、ZoomやTeamsでも利用できるほか、ハードウェア単体の販売だけでなくソフトウェアとn連携、ライセンスやサブスクリプション型の販売も想定しているという。

 加えて、販売パートナー向けプログラムを世界規模で拡充する計画も明らかにした。

中小企業向けにクラウド管理型ソリューションポートフォリオを拡充

小型コラボレーションデバイス「Webex Desk Mini」を初披露。WebexだけでなくZoom、Teamsなどにも接続して利用できる

日本の中小企業向けクラウドビジネスは「世界的に見ても最新型」

 シスコの中小企業向けビジネスはグローバル全域で大きく成長しているが、日本市場はグローバルおよびアジア地域を上回る成長を遂げており、なかでもクラウド関連売上の伸びは大きいという。2022年度第1四半期のクラウド関連売上は前年同期比で370%に達し、アジア地域全体の伸び率を大きく上回っている。

 シスコシステムズ 専務執行役員 アジア太平洋地域SMBビジネス統括の鎌田道子氏は、「新型コロナの感染拡大前から、ネットワークビジネスの中核となるMerakiへの販売シフトに力を注いでおり、これがコロナ禍でのニーズにマッチした」と述べ、日本における成功モデルをアジア地域、さらにグローバルへと展開していく方針を示した。

 「日本でクラウドシフトを達成した成果をもとに、今後はアジア地域全体の中小企業ビジネスを加速させることになる。ネットワーク、セキュリティで構築した基盤をベースに、コラボレーションやハイブリッドワークといった次のクラウドシフトに取り組むことになる。また、海外ではあまりマネージドサービスが活用されていない状況があり、NTT東日本やリコージャパンのように、マネージドサービスをパッケージ化し、ジョイントマーケティングなどにおいて実績をあげている例も少ない。これを日本のベストプラクティスとして、世界に展開できると考えている。今後は、世界的に見ても最新といえる中小企業向けクラウドビジネスに挑むことになる」(鎌田氏)

中小企業向けビジネスの推移(日本、アジア地域平均)

 シスコでは、日本の中小企業向けビジネスにおいて過去2年半に渡り「マネージドサービスの加速」「オンラインビジネスの成長」「クラウドビジネスの伸長」という3つの戦略を推進してきた。

 鎌田氏は「もともとは東京オリンピック開催による経済活動の活性化を背景にした戦略であり、新型コロナウイルスの感染拡大は想定していなかった」ものの、パンデミックによる市場環境の大きな変化によって、マネージドサービスやオンラインビジネスの利用が増えて「シスコの戦略は想定以上に加速した」と説明する。

シスコが中小企業向けビジネスで取り組んできた3つの戦略

 3年前の国内中小企業向けビジネスは、売上の約8割がオンプレミス製品であり、SIビジネスが主流だった。顧客対象の企業も従業員250人以上の規模が中心だったが、「コロナ禍では、250人以下の企業におけるテレワーク需要が急速に拡大したり、DX推進が大きく加速したりといった動きが見られた。最新四半期ではクラウド関連ビジネスの売上げが6割近くになっている」という。

 そうした変化によって、「どうやってICTを活用したらいいのか、働き方をどう変えたらいいのかがわからない、誰に聞けばいいのかわからない」といった課題を抱える顧客企業も増えた。「中小企業ではクラウドのメリットに対する理解がまだまだ低いのが実態。ICTの使い方やメリットをより理解してもらうことが大切だ」と述べた。

■関連サイト

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード