米Qlik Technologiesおよびクリックテック・ジャパン(Qlik)は2022年1月11日、グローバルおよび日本における2022年の事業戦略について発表した。日本においては継続的に売上高の2ケタ成長を維持する一方、重点項目として「経営課題としてのアクティブインテリジェンスの訴求」「パートナーエコシステムの強化」「ユーザーコミュニティの醸成」の3点に取り組む方針を示した。
3つの重点項目に取り組み日本企業をデータドリブンにしていく
「経営課題としてのアクティブインテリジェンスの訴求」では、CDO(チーフ・データ・オフィサー/チーフ・デジタル・オフィサー)の設置と、データリテラシーの重要性の訴求に努める。クリックテック・ジャパン カントリーマネージャーの今井浩氏は「コロナ禍において、経営層はデータドリブン経営を指向している」と述べ、そうした企業に対する訴求を強めていくと語る。
「Qlikはデータリテラシーやスキルセットに依存することなく、リアルタイムにインサイトを提供できる。経営者を意識した形で、クリックテックのメリットを伝えたい。また日本のデータリテラシーのレベルは、グローバル平均に比べて半分以下となっている。これを改善することで、データドリブンの活用につながり、日本の社会を豊かにすることができる」(今井氏)
ここでは近日中に、日本企業におけるCDOの設置状況やデータ活用の実態を明らかにするCDO Clubとの共同調査を発表する。さらに日本のデータリテラシーの向上に向けて、gaccoとの連携により、無料講座の「誰でもわかる!データリテラシーの基本」を開催する計画だ。
「パートナーエコシステムの強化」では、「パートナーとともに、アクティブインテリジェンスが経営にもたらすビジネスバリューを伝えたい」と述べる。Qlikパートナープログラムを推進し、既存パートナーとの連携強化とあわせて新規パートナーの開拓も進める。具体的には、グローバルシステムインクデレータやグローバルテクノロジーパートナーに加えて、日本国内の販売パートナーとしてSIerやCIerとの連携を強化するという。
「日本における2ケタ成長をベースに、各パートナーとビジネスプランを決めていく作業を2022年2月まで完了させる。また、QlikパートナープログラムはSaaS、クラウドにフォーカスする形で展開し、SIパートナー、リセラー/チャネルパートナー、OEMパートナーに分け、投資を強化していく。顧客に対してQlikがアブローチしながら、パートナーとともに展開していく“コセルモデル(共同販売モデル)”も展開したい。また、毎月パートナー会を開催して情報発信も強化する」(今井氏)
「ユーザーコミュニティの醸成」では、これまでのユーザー会に加えて、新たに設置するユーザーコミュニティでコアユーザーを中心とした情報発信を進める。グローバルに展開するユーザーコミュニティ「Qlik Luminary 50」に加えて、日本独自のブログラムである「Qlikアドボケイト」を発足。これは約20社が参加する形でスタートし、今後、参加企業を増やすことになる。今井氏は「Qlikが持つ経営に対するユニークなバリューを、お客様の声として市場に届ける活動を強化する」と説明する。
ここでは最新事業戦略の共有、製品ロードマップの提供、ビジネスメリットの共有などを進めると同時に、とくに日本のユーザー企業が事例を重視することを捉えて、各種事例の共有を強化する。さらに製品の日本語化の状況を共有したり、製品開発チームに対する日本からの要望の取りまとめを行ったりする予定だ。Qlikアドボケイトは、四半期に一度のペースで開催予定だと述べた。
日本における導入事例:トリドールHD、NEC PC、あきんどスシロー
日本国内における顧客事例も紹介した。
丸亀製麺などを展開するトリドールホールディングスは、経営戦略の一環として「DXビジョン2022」を策定し、自社サーバー環境のクラウド移行やすべての業務のサブスクリプション化を進める。その一環として「Qlik Sense」を採用し、データ分析基盤をSaaSに移行したという。「迅速かつ柔軟にビジネスを変化させ、進化させるためにデータドリブン経営の基盤を構築する点で、Qlikに期待をしてもらった」(今井氏)。
NECパーソナルコンピュータでは、過去のデータ分析では不十分と判断し、DXを実現するための経営基盤を模索。Qlikが提唱する「アクティブインテリジェンス」を評価し、SAPのデータ分析におけるアナリティクスのモダナイズ化に取り組んだという。「より俊敏な意思決定と行動によって、経営革新を進めている」(今井氏)という。
回転ずしのあきんどスシローでは、全国の店舗で皿に貼付されたRFIDを読み取り、その情報を売上増加やサプライチェーンに反映させるために、自由度の高い分析を実現するQlikViewを導入しているという。
「受動的なBIのプラットフォームから脱却し、クラウドを活用した、アジャイルな経営基盤を求める企業、リアルタイムのデータ基盤を求める企業に、Qlikが採用されている」(今井氏)
アクティブインテリジェンス、アナリティクスデータパイプラインとは何か
米Qlik Technologies CSO(最高戦略責任者)のドリュー・クラーク氏は、グローバルの業績としてSaaSの年間経常収支が3ケタの成長を遂げていること、従業員数が前年同期比10%増となったこと、2022年度も好調な見通しであることなどを報告した。
「データ統合とアナリティクスの分野が、これほどエキサイテイングな時期はない。Qlik Technologiesは高い成長を遂げており、人員の採用や研究開発にも積極的に投資をしている。過去5年間に渡ってM&Aにより業容を拡大し、2021年にはNodeGraphやBig Squidを買収した」(クラーク氏)
また、さまざまな業界のグローバルリーダーをはじめ、全世界3万8000社がQlik製品を導入。国連とのパートナーシップに基づき気候変動対策の取り組みを行っていること、日本でも日本赤十字社などとパートナーシップを組んで、データアナリティクスプラットフォームを提供していることも紹介した。
Qlikが掲げる「アクティブインテリジェンス」についても紹介した。「アクティブインテリジェンスは、ビジネスインテリジェンス(BI)の次のフェーズ」だとクラーク氏は説明したうえで、「イベントから理解を得て、アクションにつなげることができる唯一の能力を持っているのが、Qlik Technologiesの製品である」と述べた。
「短期的に情報を得て、アクションにつなげることができる企業が生き残る。だが、ほとんどの企業はデータに対して『受動型』であり、データを理解することだけに注力している。リアルタイムで最新のデータを活用し、エンド・トゥ・エンドで管理されたパイプラインを提供し、トリガーアクションが行えるのがアクティブインテリジェンスであり、それを実現するプラットフォームがアナリティクスデータパイプラインである」(クラーク氏)
アナリティクスデータパイプラインは、複数のシステムからリアルタイムにアップデートを取り込み、保存する「自由/リアルタイム」、カタログとリネージでデータの信頼性の整理や統合を行う「発見/アナリティクスレディ」、記述的/規範的/予測的分析を行って洞察とアウトプットを行う「理解/ビジネスレディ」、コラボレーションやプロセスとアプリケーションへの組み込みを行う「行動/ダイナミック」の各段階を通じて、リアルタイムデータを活用し、情報に基づくアクションへと変換する。
「4つの要素を組み合わせることで、ローデータから、アクションへとつなげることができる。これは、Qlik Technologiesのアクティブインテリジェンスが統合したからこそ実現できるものである。SaaSの環境で提供し、どんなソースのデータにも対応できる点も他社との差別化になっている」(クラーク氏)
アナリティクスデータパイプラインの実現に向けて、買収による効果も生まれている。メタデータ管理ソリューションのNode Graph買収により、ユーザーはカタログ内の各データセットの出所や用途を容易に理解できる。またノーコードの自動機械学習(AutoML)ソリューションを提供するBig Squidも買収し、データサイエンティストでなくとも容易にキードライバー分析、予測分析、what-ifシナリオといった機械学習モデルを開発することを可能にしている。また2020年に買収したBlendr.ioが持っていた技術を統合した「Application Automation」によって、コード不要のデータ/アナリティクスワークフロー自動化も実現している。
加えて、RPAベンダーのUiPathとのパートナーシップ締結にも触れ、「UiPathのRPAを活用して、自動化したエンタープライズワークフローを実現。Qlik内で直接ダウンストリームアプリケーションのタスクの優先順位付けや、アクションを起こすことが可能になる」と述べた。
4分野のメガトレンドと照応するQlikの戦略
さらにクラーク氏は、データおよびアナリティクスのメガトレンドについても説明した。「アナリティクス」「データ」「アプリケーション+IoT」「コンピュート+SaaS」という4つの分野は、2000年を起点として10年周期の“波”が起きている。最初は低成長だったものがある時期から高成長となり、成長のスピードが鈍化したところで新たな波が生まれる――という繰り返しだ。そして、これら4分野の波は相互に作用しているとも指摘する。
「Qlik Technologiesの戦略は、これらの波と相互作用したものとなっている。顧客はデータがあらゆるところにあり、クラウドへの移行が進み、コンピュート性能が高まることで、新たなチャンスが生まれている環境に置かれている」(クラーク氏)
さらにメガトレンドによって、データを所有するIT側と、データを必要とするビジネス側の2者間で融合が進んでいるとも述べた。「データ統合がビジネス価値を高めることになり、データを活性させることが、ビジネスチャンスをつかむことにつながる」(クラーク氏)