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「スキル習得で平均26%の年収増加が見込める」など、データリテラシーの価値と現状の課題を説明

「データリテラシーに自信がある」日本の従業員はわずか5%、Qlik調査

2022年04月14日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 企業ビジネスにおいてデータ活用の価値が高まり、従業員自身でデータを使いこなせる「データリテラシー」を持つことが重要な時代になっている。しかし、Qlikが行った調査によると、「自分のデータリテラシースキルに自信がある」従業員は、日本ではわずか5%にすぎない。

 Qlikでは2022年4月7日、データリテラシーに関するグローバル調査の結果を発表した。上述した調査結果のほかにも、“データの時代”に向けた企業と従業員の意識ギャップや課題が浮き彫りになっている。

Qlikの調査「データリテラシー調査:スキルアップの革新」より

Qlikで最高教育責任者(CLO)を務めるケビン・ハネガン(Kevin Hanegan)氏、クリックテック・ジャパン カントリー・マネージャの今井浩氏

データリテラシーの重要さは理解しているものの……

 今回「データリテラシー調査:スキルアップの革新」として発表された同調査は、2021年の10月と11月、日本を含む世界7カ国(日、米、独、仏、豪、ニュージーランド)において、従業員50人以上の企業で経営層1200人以上、従業員約6200人を対象に実施しされたもの。日本からは200人以上の経営層、1000人以上の従業員が参加した。

 なお、Qlikが定義するデータリテラシーとは「データの読み込み、取り扱い、分析、疑問を持つことができる能力」であり、企業のデータリテラシーとしては、それらに加えて「組織内に伝える能力」も含まれる。

 今回の調査ではまず、企業経営層と従業員の双方で、データリテラシーを重要な能力だととらえていることがわかった。経営層の85%(日本のみでは87%)が「データリテラシーは将来、現在のコンピュータの使用能力と同じくらい不可欠になる」が回答している。従業員側でも58%(日本のみは54%)が「AI利用が拡大してもデータリテラシーにより自らの役割を適切に維持できる」と回答した。

 また、経営層の89%が「従業員がより良い意思決定のためにインテリジェントツールを使用すると予測」し、同じく79%が「生産性改善の目的でインテリジェントツールを使用すると予測」している。従業員に対して「意思決定を下した根拠をデータに基づいて説明してほしい」と考える経営層も89%と多くを占める。

 このようにデータリテラシーを重要視する姿勢は持っているものの、実際のスキルは追いついていない。冒頭でも触れたとおり、「データリテラシースキルに十分自信がある」とする従業員は、日本ではわずか5%だった。調査7カ国中で日本が最も少ないが、グローバル平均でも11%にとどまる。

各調査国における「データリテラシースキルに十分自信がある」従業員の割合

 データリテラシーを身につけるための取り組みはどうか? データに関するトレーニングについて、「データ主導型、かつ自動化された職場環境に対応できるように勤務先が準備していると感じる」という回答は21%。日本のみに絞るとさらに低い17%だった。スキルアップやトレーニングの機会が十分に展開されていないことを理由に、過去12カ月以内に転職したという従業員は35%に及んだ(日本のみは27%)。

データリテラシー教育に関する従業員の見方

 そうした企業の状況もあってか、従業員側には自主的に学ぼうという姿勢が見られる。「データリテラシーを習得するために自分の時間を投資している」従業員は78%(日本のみは67%)、そのために「自費で投資している」は64%(日本のみも64%)だった。平均で月に約7時間、およそ233ドルを費やしているという(日本のみは月7時間、およそ17800円以上)。

 なおデータリテラシーのスキルを身につけることで、平均26%の給与増額が見込めるという。日本ではさらに高く、調査国中最高の29%の増額になるという。これを国税庁が発表している平均年収(433万円)に当てはめると、平均的な日本の従業員であれば年収が128万円増える計算になる。

従業員が自主的にデータリテラシー獲得のための取り組みを始めている

 こうしたギャップ、すれ違いはどこで起きているのか? 調査によると、企業によるデータリテラシートレーニングの提供は増えているものの、その対象がデータ関連業務の従業員(データアナリストやデータサイエンティストなど)にとどまっているという。現実には、人事、財務、マーケティング部門などの従業員の3分の2以上が「業務を遂行する上でデータリテラシーが必要」だと考えているが、これらの部門の従業員にデータ関連のトレーニングを提供しているのは10社に1社にとどまる。

 Qlikで最高教育責任者(CLO)を務めるケビン・ハネガン氏は、「データやデジタルの変化などに対して、従業員がデータを安心して自信を持って活用し、意思決定をできるように企業として支援をしていく必要がある」と指摘した。

 そのうえで、企業に対して次の5つを提言する。

1、アクティブインテリジェンス※注の技術やソフトウェアによりサポートされるデータリテラシーの文化を醸成する
2、適切なツールとリテラシーによってデータへのアクセスを民主化する
3、技術は継続的に進化をしており、継続的な学習を実践し、時代に適応する
4、従業員に対してデータの透明性とガバナンスを確保する
5、継続的な改善とポジティブな変化のためにデータを活用する

※注:Qlikが提唱するアクティブインテリジェンスとは、リアルタイムにデータを取得や処理を行い、人間の直感を組み合わせることにより効果的に意思決定を行うこと。

 またクリックテック・ジャパン カントリー・マネージャの今井浩氏は、データ活用を進めるための企業への助言として、「CDO(最高データ責任者)などのデータ責任者の設置」「全社的なデータ活用文化の醸成」「従業員教育への投資」の3つを挙げた。

 中でも、全社的なデータ活用文化の醸成については、これまでの日本は「部分最適で力を発揮してきたサイロ型」だとしながら、「部分、部門で養ってきた強みを全社展開することが大切」であるとして、「脱サイロ」を呼びかけた。その具体的な進め方としては「ボトムアップとトップダウンを平行して進めることが大切」だと今井氏。改革や改善への意識が高い人を中心に部門を立ち上げたり、あるいはバーチャルに始めることができるとアドバイスした。

データ活用に向けたQlikの提言

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