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渡辺由美子の突撃!隣のクラスタ界隈 第1回

【前編】ソリッド・キューブ原田奈美社長インタビュー

初音ミク、アイマス、ウマ娘の「モーション」を担う会社ができるまで

2022年11月19日 15時00分更新

文● 渡辺由美子 編集●村山剛史/ASCII

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「隣のクラスタも楽しそうだけれど、これまでの経緯がわからないのでイマイチ手を出しづらい……」そんな人たちに贈る新連載! 初回は、コロナ禍で爆発的な盛り上がりを見せている界隈の歴史について前後編でお送りします

後編はこちら

隣のオタクは何する人ぞ――

 近年、同好の士と話をしても、界隈(クラスタ)が異なると、話題の共有が難しいことに気がついた。

 ある友人は光る棒を振り、別の友人はVRゴーグルを被っている。VTuberにASMR、ライブに2.5次元舞台……。様々なコンテンツが発達したおかげで、私たちは楽しいオタクライフを過ごせているが、一方で、知るものと知らないものの差が大きくなり、“知識の分断”も起きている。

 本連載では、毎回1つの界隈にフォーカスし、現在の盛り上がりに至るまでの経緯も含めてキーマンに伺うことで、知識の共有を図れればと思う。

今最も熱い職業は「3DCGキャラの中の人」

 人間が実際に演技することで、キャラクターの動きがより魅力的になり、CGに生の息吹が吹き込まれる。まさに“動きの声優”とでも言うべき職業こそ「モーションアクター」。CG映像は、生の演技を入れることで表現の幅が広がり、現在では「CGライブ」という新たなコンテンツビジネスも誕生した。

 そこで今回は、コロナ禍で爆発的な盛り上がりを見せている「モーションキャプチャーで歌い踊る3DCGキャラクター+動画(ライブ)配信」界隈を追いたいと思う。業界誕生の経緯から現在までの歴史を知るために、筆者がお話を伺ったのは株式会社ソリッド・キューブ代表の原田奈美氏。

 モーションアクターの専門会社である同社は、電子の歌姫が歌って踊るリズムアクションゲーム『初音ミク -Project DIVA-』(2009年)のダンスモーションを担当して以降、『Project DIVA』シリーズはもとより、『アイドルマスター』『アイドリッシュセブン』『ウマ娘』など著名タイトル/シリーズに関わり続けているキーカンパニーだ。

 ゲームやアニメの制作現場でモーションアクターが求められるようになった草創期から同社起業、そしてリアルライブを開催できないコロナ禍において「モーキャプ3Dキャラ+動画」が爆発的人気を得るまでの約18年間に渡る試行錯誤の日々を語っていただいた。

株式会社ソリッド・キューブ代表の原田奈美氏にお話を伺った

それは北京原人から始まった

―― 近年、CGキャラクターのダンスは、アニメやゲーム、ライブなど様々なメディアで目にします。まずは原田さんが代表を務めるソリッド・キューブの事業内容から教えてください。

原田 私たちの会社では、人の動きをCGキャラクターに反映する「モーションキャプチャー」のなかでも、実際にダンスなどを担当する「モーションアクター」さんを起用して、演技を動画にするまでを担当しています。ダンスの振り付けや動きの演技指導をして、データとして使いやすい形まで持っていくのがお仕事ですね。

―― キャラクターをCG制作会社さんがモデリングして動かす工程は取材したことがあるのですが、その動きの元となるのがアクターさんの演技、というわけですね。では、原田さんが社長になられた経緯は?

原田 私は、2003年に野口(隆行氏)が経営する「スタジオキューブ(現・スタイルキューブ)」に入社しました。そこで声優部門を立ち上げ、マネージャー兼音響制作として働いていたんですが、2004年にキャスティング業の一環で初めてモーションのお仕事が来て、2009年からは初音ミクなどモーションのお仕事が増えました。

 そこで2016年にモーションキャプチャーの専門会社として「ソリッド・キューブ」を設立し、社長に就任しました。

※野口隆行氏:現芸能プロダクション「スタイルキューブ」代表。原田氏が入社した2003年前後には月刊アスキーにてライター(筆名「たかみゆきひさ」)として休刊までの10年に渡りPC関連の連載を担当、週刊アスキー秋葉原出張版ではプロモデラーとしての連載も持っていた多才の人。

―― CGキャラクターのモーションという仕事は、2010年代に本格的に始まったと思っていましたが、2004年には誕生していたのですね! どんな作品のどんなお仕事でしたか?

原田 『シーマン2 ~北京原人育成キット~』というゲームで「北京原人」の動きを。

―― 北京原人!? 想像していた「キャラクターのダンス」とは大きく違いますね。どんなアクターさんが動きを担当されたのですか?

原田 当時、うちの事務所に所属している役者のなかに、戦隊ヒーローのスーツアクターをやっている方がいたんです。ほかに中国拳法が得意な男性声優さんと、舞台経験のある女性声優さんが担当しました。

 そのときは「モーション」がどんなものかよくわかっていなかったので、『ダイナミックな動きが得意で、スーツアクターをやったり、キャラクターの演技ができる人であれば上手くいくのでは』と考えてキャスティングしました。その頃はまだ「モーション専門のアクター」という発想はありませんでしたね。

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