電子帳簿保存法の改正概要と受発注業務の対応ポイント

文●ユーザックシステム 編集●アスキー編集部

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対象となる電子取引とは

電子帳簿保存法の改正点や電子取引データの保存の必要性について説明してきましたが、対象となる電子取引とはどのようなものでしょうか。電帳法の対応が必要となる受発注業務を具体的に見ていきましょう。

(1) EDI による受注、出荷、請求データなど
(2) WebEDIによる受注データのダウンロード、アップロードなど
(3) ECサイトで受注したデータやECサイトで購入した領収書など
(4) 電子メールによる受注や発注など
(5) FAXを複合機などで受信しデータのまま保存する場合など

(1) EDIにおいては情報システムが管理している場合が多く、業務プロセスも明確で、電帳法の対応が検討しやすいと言えます。しかし、一般的にEDIの受信データは基幹システムに取り込んでしまえば削除するケースが多いので、「日付」「取引先」「金額」で検索可能なデータベースに保管しおきましょう。

(2) WebEDIは取引先の発注サイトにアクセスし、対象のデータをダウンロードする方法です。主に担当者が手作業で操作し、マニュアルが存在しない場合も多いため、この機会にWebEDIによる受注業務を洗い出し、どのようにデータ保管するか整備する必要があります。

(3) 商品をECサイトで販売している場合、その受注データのダウンロードもWebEDI同様にデータ保存が必要です。また、事務用品や備品をECサイトより購入した場合の領収書もブラウザー画面のスクリーンショットやPDFなどで保管する必要があります。

(4) 電子メールに添付される注文書や請求書も電子取引です。メール本文のみに取引内容が記載されている場合も電子取引となります。メールそのものの保管、またはメール本文をPDFにして保管する必要があります。

(5) FAXの場合、複合機やコンピュータで受信してそのまま保管している場合は電子取引となります。

図3:電子帳簿保存法の対象となる受発注業務における電子取引の具体

 以上の受発注業務は電子取引の一例です。担当者が個別に対応しているWebEDIやメールなど、情報システム部門が把握していない業務も含まれます。どの部署でどのような電子取引があるのか、業務の棚卸しを実施し電帳法の対応方法の検討をすすめましょう。

受発注業務における対応ポイント

 それでは電子取引による受発注業務の電帳法はどのように対応すれば良いのか、EDI、WebEDI、メールを中心にご紹介しましょう。電子データの保存は文書管理サービスを利用した例です。いかに手間をかけずに確実に電子取引データを保存するのか、そのプロセスが重要となりますので、自社の業務と照らし合わせて、どういう手順が必要になるのかをご確認ください。ここでは受信業務を例に説明していますが、送信業務も同様の考え方となります。

(1) EDIの電帳法対応

 EDIは取引先ごとにデータレイアウトが異なるため、受信ファイルも個別管理している企業が多くあります。受信データごとに個別プログラムを作成し、基幹システムと連携しているケースもよく見られます。この場合、文書管理システムにデータを保存するためには、受信データごとに検索キー(日付、取引先、金額)の登録が必要となります。取引先やメッセージ数が増えるとその作業も膨大になりますので、RPAで自動化するなどの効率化も合わせて検討しましょう(図4)。

図4:EDIの電帳法の対応例①

 文書管理システムへの保存がRPAで自動化できるとは言え、受信ファイルごとの運用は管理が煩雑になります。そこで、このような受信データごとの管理を改善するためには、標準DB(データベース)の利用をお勧めします。図5は取引先ごとの受信ファイルを当社EDIシステム「EOS名人」の流通BMSの標準DBで一元管理している例です。「EOS名人」または自社で独自に標準DBを構築することで、文書管理システムや基幹システムとのデータ連携が一元化でき、保守性も向上します。EDIの取引先が多い場合は、受信データを標準DBに集約しましょう。

図5:EDIの電帳法の対応例②

(2) WebEDIの電帳法対応

 取引先の発注サイトからデータをダウンロードするWebEDIも、EDIと同じような対応となります。ダウンロードしたファイルごとに検索キーやデータを文書管理システムにアップロードします。データのダウンロードやアップロードはRPAで自動化できますが、やはりEDIで説明したようにデータは標準DBで一元管理する方がよいでしょう。図6はEDIとWebEDIを標準DBで一元管理し、文書管理システムと連携したパターンです。

図6:EDIとWebEDIの電帳法対応

(3) メールの電帳法対応

 メールによる受発注業務も見積、受注、発注、出荷、請求など様々あります。その多くは担当者宛のメールではないでしょうか。そのデータ形式もEXCEL、CSV、PDFなどの添付ファイルのほか、メール本文に書かれた取引情報など様々です。そのいずれも電子データ保存が必要です。

 これら一連のメール操作もRPAで自動化したいところです。しかし、画面操作を記憶して自動化する一般的なRPAでは、メール操作の自動化がうまく処理できない場合があります。受信フォルダから対象のメールを特定し、メールによってどのような処理をするか判断する必要があります。また、添付ファイルを解凍するパスワードが別のメールで送られてくる、添付ファイルからデータを抽出して保存するなど、複雑な処理が必要となります。さらに、メールは様々な担当者に送られてきますので、保存対象はもれなく集約する必要があります。また、間違ったメールが送られた場合はどうするのか、といった点も考慮が必要です。

 「Autoメール名人」はメーラーとデータ変換機能を内蔵しているメール専用のRPAであり、このような複雑なメール操作を確実に自動化できます。メールによる受発注が多い場合は「Autoメール名人」を利用した自動化も検討してはいかがでしょうか。

図7:メールの電帳法対応

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