今や日本が誇る輸出産業の一つとなったアニメ。その業界と地域の発展を願いながら、世界から選ばれるアニメ聖地を選出する「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」は毎年新たな作品を追加してきた。しかし、2021年は新型コロナウイルスの影響で投票が中止となり、今回2年ぶりの更新としての2022年版の発表会が開催された。
2022年版では「やくならマグカップも」シリーズの岐阜県多治見市や、現在放送中の「白い砂のアクアトープ」など最新の作品を含め、新たに17作品がアニメ聖地として認定された(すでに認定されていた作品に新たな地域が追加認定されたものも含む)。新たに認定されたアニメ聖地は下記の通りだ。
「空の青さを知る人よ」(埼玉県秩父市)
「さよなら私のクラマー」(埼玉県蕨市)
「アマガミSS」(千葉県銚子市)
「戦翼のシグルドリーヴァ」(千葉県館山市)
「ラブライブ! 虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会」(東京都港区、江東区)
「ラブライブ! スーパースター!!」(東京都渋谷区、神津島村)
「おちこぼれフルーツタルト」(東京都小金井市)
「スーパーカブ」(山梨県北杜市)
「やくならマグカップも」(岐阜県多治見市)
「ひぐらしのなく頃に」(岐阜県白川村)
「エヴァンゲリオン」シリーズ(静岡県浜松市、山口県宇部市)
「ゆるキャン△」(静岡県浜松市)
「宇崎ちゃんは遊びたい!」(鳥取県倉吉市、三朝町)
「竜とそばかすの姫」(高知県越知町)
「放課後ていぼう日誌」(熊本県芦北町)
「恋する小惑星」(沖縄県石垣市)
「白い砂のアクアトープ」(沖縄県南城市)
また施設・イベントとして、東京都豊島区にある「豊島区立 トキワ荘マンガミュージアム」も追加された。
今年の投票は6月21日から11月30日までの163日間にわたりウェブ上で実施されたほか、アニメ聖地の施設などでのリアル投票も合わせて行なわれた。例年は海外からの投票が多かったが、新型コロナウイルスの影響により、海外で開催されるイベントでの投票PRができなかったことや渡航制限による「行ってみた」投票の減少、また個人情報保護法が厳格化した国もあり、投票数に大きな影響が生じ、国内投票比率が約78%となった。その国内の投票数は約3万1000票で、過去最高の投票数となっている。
国内のファンへの影響としては、大都市圏から遠隔地への「行ってみた」率が大きく低下しており、逆に近郊では「行ってみた」率が大幅に向上している。これは、今年10月の緊急事態宣言解除以降、急激に変化しているトレンドとリンクしており、行動制限におけるアニメファンの渇望感の現れとも取れる。
発表会では新たに聖地認定された自治体の代表が登壇し、挨拶が行なわれた。
「スーパーカブ」山梨県北杜市 上村英司市長(ビデオメッセージ)
北杜市は山梨県西部に位置し、南アルプスや八ヶ岳連峰のある風光明媚な地域。アニメでは北杜市の美しい景観を精密に再現していただいた。温泉やキャンプ場もあり、絶景も楽しめる北杜市に来ていただきアニメの世界を体験していただきたい。四季折々でその表情も変わるので、何度も足を運んでいただき、北杜市のファンになってもらいたい。
「さよなら私のクラマー」埼玉県蕨市 頼高英雄市長
蕨市は羽田空港の3分の1である5.11km2という面積に7万6000人が住んでいる、日本で人口密度がもっとも高いコンパクトシティ。アニメ主人公の中学校のモデルである蕨第一中学校にはビッグフラッグが掲げられていて、京浜東北線から見ることができる。また市内にはキャラクターののぼり旗を300本設置。現在は聖地のウォーキングマップを作成していて、1月10日にはウォーキング大会を開催予定。都心から30分という利便な場所で、多くの人に来ていただき、アニメを通じて世界を盛り上げていければと願っている。
「竜とそばかすの姫」高知県高岡郡越知町 小田保行町長
高知県では四万十川が有名だが、作品にも登場した仁淀川は四国で唯一水質日本一に9回選ばれている奇跡の清流。キャンプ場もあり、鮎の友釣りのメッカでもある。ヒロインの住む集落にある浅尾沈下橋の風景が多く登場することで、作品公開以降とても注目を浴びている。豊かな自然、アニメの舞台となった風景を多くの方に見ていただきたい。また、他のアニメ聖地とも連携できればと考えている。
「白い砂のアクアトープ」沖縄県南城市 瑞慶覧長敏市長
南城市ではキャラクターの住民票を発行しており、それを目当てに訪れる人が増えている。南城市には世界遺産である斎場御嶽や、神の島である久高島もあり、海、歴史、そして文化もある地域。作品とのコラボ企画としてアニメふるさと納税にも力を入れており、寄付金を活用して聖地の保存活用事業を展開していきたい。新型コロナウイルスや軽石漂着などもあるが、落ち着いたらみなさんを歓迎したい。
「やくならマグカップも」岐阜県多治見市 古川雅典市長、株式会社プラネット 代表取締役会長 小池和人氏
全国の家庭で使われるお皿、茶碗、マグカップの約6割を作っている多治見市。茶道で使われる茶碗作りでは人間国宝が4人も出ているが、作ることはうまいが売ることがヘタなのが多治見市。
小池氏が10年間作っていたフリーペーパーが日本アニメーションの目に止まりアニメ化され一気にブレイクした。アニメによって多くの人が訪れている。アニメで町おこしができ、聖地巡礼で人が動く。こうした実験をさらに進め、世界に発信していきたい。
さらに「アニメ聖地88 旅の思い出コンテスト」大賞受賞者の鯛氏が登壇し、「天体のメソッド」の聖地である洞爺湖町を巡った際のエピソードを披露。次は「やくならマグカップも」の多治見市に行きたいと語っていた。
最後にアニメツーリズム協会理事長の角川歴彦氏が登壇。「マレーシアの出版社のM&A時のパーティーで歌で締めようとしてエヴァンゲリオンを歌ったところ、日本人だけでなく会場全体が歌いだし、アニメが世界の共通語になっていると感動した。この感動を形にしたいと思ったのがアニメツーリズム協会を作ろうと考えた発端」と、その成り立ちを解説。
そして「アニメ業界全体の数字がどんどん向上しており、輸出産業の一つとなっている。アニメ聖地に選ばれたことで、日本の存在を世界に広めていくコンテンツの起爆剤として参加したという気持ちになってもらえることが狙い。日本の存在感を世界に広めていくパートナーとして協力いただきたい」と、聖地認定自治体の方々にアピールして発表会は終了した。
なお「訪れてみたい日本のアニメ聖地88」の全作品一覧はアニメツーリズム協会公式サイト内で見ることができる(https://animetourism88.com/ja/news/2022edition)。