すみだメタ観光祭の集⼤成 墨⽥区初のメタ観光を体感できる公式ガイドツアー開催
メタ観光ツアーをリポート!スリバチ会長、墨田区のマナイタに現わる!?
筆者の玉置も理事で参加している一般社団法人メタ観光推進機構(所在地:東京都渋谷区、代表理事:牧野友衛)は12日、すみだメタ観光祭初のメタ観光公式ガイドツアー「スリバチ会⻑、墨⽥区のマナイタに現わる?!」を実施した。ガイドは、観光会議のキュレーターを務めた「東京スリバチ学会」の皆川典久会長。玉置も実際にツアーに参加し、新しい観光を堪能してきた。
今回のツアーは、「微地形から歴史を読み解けるか?」をテーマに、普段は高低差のある土地を巡ってスリバチなどの地形を読み解いていく皆川さんが、初体験の平坦ツアーに挑戦。凸凹の少ない墨田区を舞台に、すみだメタ観光祭で掘り下げてきた、川跡・古道・古刹・まちなみなどのレイヤーも駆使しながら、かつてなかったツアーを作った
今回の⽴寄りスポットは、曳舟川跡、⾏徳道、⻑命寺、旧向島花街、三囲神社、隅⽥公園(旧⽔⼾藩下屋敷)、北⼗間川など、土地の痕跡がたどりやすい場所と、街の形成の違い分かるゾーンを選択し、皆川さんがスリバチとともに活動をしている水都東京・未来会議で取り組む水辺や水路も加味した、メタ観光な視点がいっぱいのツアー。12日13時~15時30分の2時間半に及ぶ行程で(曳舟集合、押上解散)を歩いた。
今回、皆川さんが参加者に配った資料は、以下のような地図。現代の高低差はカシミール3Dを見ればわかるように、隅田川の対岸の台東区に比べ、墨田区は押しなべて低く、高低差が少ない。3枚目の江戸末期の地図で見ると、墨田区も高低差があったことが分かり、皆川さんの説明では、明治以降、近代になり、古い集落が形成され寺社町などもあった浅草(台東区)に比べ、人の密集が少なかった土地に工場が増えるようになり、特に高度成長期には大量の地下水が組み上げられ、地盤沈下が起きたことが、今の地形に表れているのでは、という事だった。皆川さんはスタート地点で、「いつもは高低差のある所を歩いてきたが、今回は”まな板”のように平坦な道を歩く初の試み。微妙な高低差で何が語れるかチャレンジだ」と語った。
以下、当日の街歩きを再現して、順に巡ってみた。最後には、墨田区がまた違って見えた。
【曳舟川あと】
暗渠マニアックスのワークショップでも歩いた、昔の曳舟川の暗渠上に出来た道、幅18メートルの曳舟川通り。曳舟川は、江戸時代に、本所の開拓に必要な上水として開削されたが、のちに、通船運河として改修された。旅人を船に乗せ、岸から引かせたことから、曳舟川と呼ばれるようになった、という。奥州街道や甲州街道など尾根を利用した道は若干の高さがあるが、暗渠に出来た道は微高差を感じるのは難しい。
【高木神社】
室町時代創建で、そのころから、このあたりは陸地で人がすんでいた。皆川さんによると、このあたりは砂洲だったのではないか、と。地名で、「木」が付くところは微高地が多いという。千駄木や代々木など。古くから陸地だったところが多い。
【飛木稲荷神社】
高木神社のすぐ近くにある、この神社には、土地の形成の説明版があり、皆川さんは大喜びだった。説明によると、江戸時代以前、このあたりは利根川の川口で、川の運ぶ堆積物により陸地化が進み、葛西地域の海岸線となり、平安・鎌倉時代には、後の本所、向島の境となる古川沿いの自然堤防となっていたと推定される、とある。
【鳩の街商店街】
このあたりは古い花街で、今は暗渠となった古川の一本隣の道。戦後に、進駐軍が、平和の象徴としてピジョン・ストリートと名付けたことから、今の名前がある。戦火を免れたことで、関東大震災後の防火のために作られた銅板葺きの建物も見られる。
【入り組んだ路地】
向島は入り組んだ路地が多く、本所に近づくと碁盤目状に整備されていく。明暦の大火後、本所は新興住宅街として整備されていったからだ。
【長命寺桜もち 山本や】
向島の名跡である長命寺を抜けて、隅田川の堤である墨堤に上がると、名物の桜餅の名店が。大島桜を塩漬けにした葉っぱでくるんだお餅は美味。享保の頃からあるという名店で、かつては正岡子規が二階に住んでいた。
【隅田川】
【三囲神社(みめぐりじんじゃ)】
土中から発見された白狐にまたがる老翁の像の周りを、どこからともなく現れた白狐が三度回って消えたと言う縁起から、神社の名前に。三井家が江戸進出時に、その名にあやかって守護神とし、旧三越池袋店のライオン像を移設、三井邸からは三角石鳥居も移設されている。
【牛嶋神社】
隅田公園の一家にあり、牛御前社とも称されて、本所総鎮守として崇敬を集めてきた。
【隅田公園(水戸藩下屋敷)】
【北十軒川(きたじっけんがわ)】
隅田川と旧中川を結び、江戸時代初期に開削された運河。スカイツリーの足元を流れる。水門により水害の恐れが無いことから、水辺が川に近く、川沿いの東武鉄道高架下には、東京ミズマチが開かれにぎわっている。隅田川には、古くはカミソリ堤防が多く、水が遠くなっているが、こうして、リスクを減らせば、水が近くなる。今回、微妙な高低差から、街の成り立ちを歴史を絡めて歩き、江戸時代には縦横に運河が走っていた墨田区の水辺、水路も歩いて感じた。街を立体的に体感できるのがメタ観光だ。
【ツアーに参加した松岡和久さん】
「今日はありがとうございました。墨田で2時間半持つのかと思っていたが、高低差だけでこれだけ歩けるとは思ってませんでした。暗渠や水路の歴史を紐解くと地形って本当に面白いんだな、と感じました。また、参加したいです」
【皆川さんの〆】
「普段、その土地の地形と実際の街の様子を対比して紐解く街歩きをやっている。本所と向島の特徴あるところを今日は歩きました。長い歴史に育まれたものが眠っていますね。多層なレイヤーで街を見る楽しさを感じました」
■皆川典久さんプロフィール
2003年に東京スリバチ学会を設立、凹凸地形に着目したフィールドワークで観察と記録を続けている。2012年に『凹凸を楽しむ東京「スリバチ」地形散歩』(洋泉社)を上梓、町の魅力を発掘する手法と取組みが評価され2014年に東京スリバチ学会としてグッドデザイン賞を受賞した。タモリ倶楽部やブラタモリなどのTV番組に出演。2020年には昭文社『東京23区凸凹地図』を監修、『東京スリバチの達人・分水嶺北部編/南部編』を同時出版。
【14日20時から!オンライントークシリーズ『すみだ新視点』Vol.5(ゲスト:皆川典久さん)】
12月14日(火曜日) 20時~20時30分
すみだメタ観光祭に携わった専門家を招き、新たな視点から墨田区の魅力を語ってもらうオンライントークシリーズ『すみだ新視点』。第五弾は、東京スリバチ学会会長の皆川典久さんを招き、皆川さんから見た墨田区の新たな観光的魅力やメタ観光への期待などを語ってもらう。
ゲスト:
・皆川典久(東京スリバチ学会会長)
聞き手:
・牧野友衛(メタ観光推進機構代表理事)
・玉置泰紀(メタ観光推進機構理事)
https://www.youtube.com/watch?v=1wHbXhDvcjE