「たてもの」と「まち」のイノベーション第2回

清水建設がビルにOSを入れた理由は、昔から「デジタルゼネコン」だったから

文●遠藤諭(角川アスキー総合研究所) イラスト● ほさかなお

提供: 清水建設株式会社

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清水建設はSIerだったのだ

−− 建設会社、大手ゼネコンのなかでは、自社内にシステムを作る事業部がきちんとあるのはめずらしいそうですね。

菅原 建設会社なので、設備も含めて施工という立場でやっていますが、要件定義からソフトの調整までの要員を自社で抱えている建設会社はまずないですね。

越地 実は我々の事業部って、昔システムインテグレーター認定制度ってあったじゃないですか。建設業なのにあの認定を取っているんです。ゼネコンではそんな会社はほかにはありません。さらにそれを事業部としてやっていたんですよ。

ーー 外に向けてそうした事業を展開していたと?

越地 中央監視システムを50年前からやっていたというのは、事業としてシステムを開発し、建屋に導入していたんですね。その延長で、入退室管理設備、監視カメラ設備、ネットワーク設備や電話設備のシステム間連携を少しずつやっていく中で、「建物系システムインテグレーター」として活動していたんですよ。

ーー おー。建物系システムインテグレーターだと。自動車の関係の人たちは、よく「車室」という言い方をするんですけど、車の車体自体と内装って別の世界ですよね。ビルも、ビル自体と内装とかソフトウェア的な部分が出てくる。

菅原 こうしたテナント様向けのビルでは、内装は、お客様が連れてくる業者さんがやる場合もありますが弊社が大体やっています。さらにその上で中央監視設備など導入するソフトウェアも自社でやっています。

ーー なるほど、それをやれる部隊があると。

菅原 そういうふうに建物に加えて中央監視設備のようなソフトウェアも自社で作れるのも弊社くらいしかいないんじゃないかと。

ーー それを他社の仕事にも広げていくということですかね?

越地 いままでは、清水建設の建てる建物プラスお客さんのお手伝い程度でした。最近はDX-Coreもあり、AIインテグレーター事業というのもありまして。ぼくらのエンジニアリング事業本部には、情報部隊の他にプラントの部隊がいるんですよ。工場の製造ラインを作るところなんですけど、そことタッグを組んでシステム開発みたいなことをやっているんです。ご存知かと思いますが、QBBベビーチーズってあるじゃないですか。たとえば、あの検品業務はわれわれがシステムを開発してるんですよね。

六甲バター神戸工場 製品検査エリア(プレスリリースより)

製品検査システム(同)

ーー 清水建設さんといえばコンクリート練って建物を作るイメージがあったんですが、工場のプラントも作ってるんですか!

越地 工場建屋だけでなく製造ラインも構築するエンジニアリング事業もやっています。

ーー 工場のラインってロボットみたいなもんじゃないですか! 今だと検品もあるからAIもあってみたいな。

菅原 一般的にはだいたいパートナーを組んでやられますけど、我々は内製というか自社でやれる設計構築部隊を持っています。

ーー さきほど、ITで清水建設が一番進んでるんですか? みたいな話がでましたが、そもそもめちゃそのあたりをやっているところが特徴だぞと。

菅原 なので、今までは弊社が設計施工した件名に導入する業務だけだったけど、他社設計施工の建物に対しても力を入れてきていますDX-Coreもそう。実際問題、今まではもともとのお客さんが入り口だったけど、全然違うところにもチャンネルを広げていこうじゃないかということですね。

ーー ほかの建設会社に売っていこうということ?

越地 そうですね。ほかの建設会社の物件というんですかね。

ーー 建物をコンピューター的に見るとレイヤーがあるわけじゃないですか。他社が作ったビルでもオーナーと話がつけば空調とかをコントロールする部分、ソフト的な部分としてDX-Coreを入れることが可能になる。パッケージにしたらどうですか?「DX-Core」と書いた一太郎の箱みたいなパッケージを作るとか。

(一同笑)

ーー 建設に限らず、たとえば電気製品にしろ機械にしろ、あらゆるジャンルはテクノロジーによって成立してそれ自体のあり方も変化してきたわけですよね。先ほど建設会社はコンクリート練ってるみたいな大変失礼なことを言ってしまいましたけど、鉄筋コンクリートも100年以上前になると思いますがハイテクだったわけですよね。そして高層ビルが作れるようになった。それによるまちの風景の変化はすごいじゃないですか。コンピューターというテクノロジーによる構造計算によってそれが超高層ビルへとさらに変化した。ここで、DX-Coreを取り入れることでビルをスマホ化する。それが、御社にはできるということなんですね。

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