「たてもの」と「まち」のイノベーション第2回

清水建設がビルにOSを入れた理由は、昔から「デジタルゼネコン」だったから

文●遠藤諭(角川アスキー総合研究所) イラスト● ほさかなお

提供: 清水建設株式会社

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求む、ビルを“開発”したい人

ーー DX-Coreというものができると、それを使って空調のIoTで話題になった米Nest社みたいなサービスを考える企業も出てくるかもしれません。DX-Coreを使って「会議の空気が重いときにみんなを笑わせるシステムを作りたい」とか予想もしないような提案もあるかもしれません。そういう人たちは、どうやって開発に参加できるのですかね? まだ、コンソーシアムがあるわけじゃないですもんね。

本田 コンソーシアムを組むほど大げさなことではないかなというところもあり、なるべく仕様公開をして多くの人に集まっていただく取り組みはしてます。ただ、セキュリティにかかわることなので完全オープンというわけにはいかないですが。

ーー 普通にJSONとかでピッと渡す感じですよね。作ったものを実験したいときは?

本田 いまはSwaggerみたいな公開APIは用意してあるので、外からAPIを叩いて遊ぶことはできますね。

ーー 自分で用意したセンサーやアクチュエーターをつないで遊ぶことはできるわけですね。なるほど、開発に関しては外に開いている。こういうたてものOSのコンセプト的なことは、清水建設さんとしてはどんな背景があって出てきたのですかね?

本田 「スマホ化したほうが他社と差別化できるよね」ということで5年前くらいから営々とやってきていました。ただ、どちらかというとビジネスで差別化というよりは、建物として本来どうあるべきかを40〜50年の開発の中で、清水として考えた結果がDX-Coreという形であらわれてきているんじゃないかなと。中央監視設備のBECSS(総合ビル管理システム)を中心にやった中、空調の制御って人と結びつけないといけないよなと。人が歩いてきたり、表情だったり人数だったりに合わせて制御していかないと人の生活は豊かにならないよねと。

ーー それはどなたかが絵を描いたんですか?それとも当然だろうと思っていた?

本田 当然だろうと思ってたんですね、たぶん。

ーー DX-Core向けのアプリやサービスですが、通常の開発とは違った部分があるんでしょうか? APIを使うぶんには、そこはクライアントサーバーシステムの素晴らしいところというか、サーバーは文字どおり下僕となってアプリに呼ばれれば必要なことをやる感じですかね?

本田 連携先のシステムから呼ばれて、そのなかで連結させてる感じですかね。

ーー リアルタイム性はどうでしょう?

本田 ありますよ。リアルタイム制御ができないと意味のないものって結構あるじゃないですか。たとえば3分後に結果が出力されるとかしたら……。

ーー 警報が3分後に鳴ったら怒られますね。

本田 そうです。基本的にイベントドリブンなので、何かの事象が発生したものをインプットするとあらかじめ決まっているアウトプットが出る。内部的なフロー制御ツールでフローを決められるようになっています。

越地 リアルタイム制御で一番わかりやすい例がロボットですね。建物の1Fとかをよく警備ロボットが巡回していますが、あのロボットは1Fしか警備できないんです。エレベーターに乗れない、セキュリティエラーで入れない、自動ドアが開けられない。それをロボットとエレベーター、入退室管理設備をDX-Core経由で連携させているので、ロボットがセキュリティを通過して、エレベーターに乗って、自動ドアを開ける……というのを全部自動でできる。いまトライアルで案内ロボットをやっているんですが、それが際たるものですね。

ーー エレベーターとの連携はたしかにリアルタイム性が問われそうですね。開発してて面白かったところ、苦労したところは何でしょうか?

菅原 先ほど建築系SIerという言葉があったんですが、今回は建物や設備を作りながら提供サービスも検討し、DX-Coreの基盤を作りながらどの設備を連携させるか、どういう仕様で通信させるかというのを随時決めていくのが苦労しました。逆にそうすることで、何か変更が発生しても、全体の工事が進んでいる中の変更なので工程などもうまく調整して完成させる。というところが、建設業者の中のSIerとしてのいいところなのかなと思ってます。

ーー ヘタすると順序が逆転しそうですね。

菅原 そうですね。カメラでこういう映像を撮りたいのでここにはカメラをつけるようにするとか、取りたいデータとかやりたいことを優先させて、逆に建物側に調整してもらうというのはあると思います。

ーー 使いたいアプリで物理的なビルが変わってきたら楽しいですね。

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