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「たてもの」と「まち」のイノベーション第2回

清水建設がビルにOSを入れた理由は、昔から「デジタルゼネコン」だったから

文●遠藤諭(角川アスキー総合研究所) イラスト● ほさかなお

提供: 清水建設株式会社

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 「たてもの」と「まち」のイノベーションについて、清水建設さんの協力によるシリーズの第2回は、たてものOSと銘打つシステム「DX-Core」についてのインタビューをお届けする。同社が手がけた大規模賃貸オフィスビル、メブクス豊洲に導入したDX-Coreとは、一体どんなものなのか? 清水建設の知られざる側面をお聞きできたり、インタビュー後半のアイデアソン大会など、とても刺激的な内容となった。

ビルをスマホにしてしまえ

ーー たてものOS「DX-Core」についてお聞きしたいんですけど、そもそも、たてものの中のどの設備にコンピューターが入っているものなんですかね?

菅原 空調や照明を制御するコンピューター、入退室を管理するコンピューターなど様々な種類がありますね。

清水建設株式会社 情報ソリューション事業部 システムイノベーション部 AI・IoTグループ 菅原 理(すがわら さとる)氏

ーー だとすると、コンピューターでビルを制御しはじめたのはいつごろなのでしょう?

菅原 弊社でいうと、空調照明制御用のソフトを自社開発してたんです。それ自体は、パソコンがない時代、約50年前からありました。1960年代ごろですね。

ーー パソコンは、1970年代末だったわけだから……。

菅原 OSのない時代ですね。

ーー 1960年代あたりだとするとミニコンを導入していたりですかね?

本田 弊社の研究所の方が基板の設計からやっていたんですよ。

清水建設株式会社 情報ソリューション事業部 システムイノベーション部 AI・IoTグループ 本田力也 (ほんだ りきや)主査

ーー なんと、ハードウェアから手掛けられていたと! カー、クーラー、カラーテレビで《3C》とか《新・三種の神器》と言い出したのは1960年代後半でしょうか。大きなビルに空調も入ってくるとまとめて管理したくなる。ということは、ビルのなかにネットワークはあったんですか?

菅原 ネットワークはありました。が、設備ごとにまずは制御させるのがベースにありました。たとえばテナントの部屋に人がいなくなったら警備連動とセットで空調を止めるとか、要望があればそういうことをやっていましたが、単体で動かすのが建物設備の基本になっていました。

ーー 自動車などは内部通信ネットワークというと、そのプロトコルが標準規格のような形で定着していると思いますが、ビルのネットワークにもそういうものがあるんですかね?

菅原 なかったですね。

ーー そこでDX-Coreのお話につながってくるのですかね? 世の中がデジタル化してきて「できますかね?」というお客さんがいてもそうはなっていなかったと。

本田 今までは、「交わらせない各設備の強さ」みたいなものがあったんです。何かが壊れたときにつながっていると影響を受けやすいじゃないですか。それを堅く守っていくという設備志向のほうが強かったというのが今までですね。施設というのは、各社、異なるベンダーがやっているものなので。ネットワークを統合するとトラフィックをどうするんだとか、保守をどうするんだといった、調整業務が発生するというのもあります。

ーー ネットワークに標準的なものがないのもあるでしょうね。

越地 10〜15年ほど前からシスコさんが統合ネットワークをやりましょうという動きはあったんですけど、ようやくここになって日本でも立ち上がってきたかなという感じです。数ヵ月前、他社のゼネコンが統合ネットワークをやるという話がありましたが、これまでなかなか進まなかったんですよ。

清水建設株式会社 情報ソリューション事業部 システムイノベーション部 AI・IoTグループ 越地信行(こしじ のぶゆき) グループ長

ーー 海外の映画やドラマだとビルの設備がすべてネットワークでつながってて、ここを操作するとここのドアがすべて閉まる、みたいな演出があったりしますよね。現実はああなってないんですか?

菅原 海外ではなっているところもありますね。

ーー なぜそんな違いが出るんですか? 日本の建設会社ってドバイや中国などの凄いスケールのビルなんかも作っていて、ジャンルとして日本の産業の中でいけてるように見えるじゃないですか。

菅原 IT化の設備としての考え方の違いじゃないですかね。日本のシステムの作り方って、ひとつのシステムを堅牢にして動かしつづけるっていう思想があるんですけど、海外は、分散してれば一個壊れてもいいかなという考え方。日本はそこがあんまり許容されないようなところがあります。

ーー お客さんがいままでは海外のような形を望んでないから?

菅原 そういうところもあるかもしれないですね。

本田 これまでは統合するモチベーションがなかったんですよね。今回DXでいろんな設備をつないでいきましょうということでモチベーションが出てきたと。

ーー なるほどなるほど。ということで「DX-Core」とは何かに戻るとどうなるのでしょう?

菅原 設備を連携させるためのソフトウェアのプラットフォームのことだと思ってもらえればいいかなと思います。

ーー アプリというのは、空調を制御するシステムなどそれぞれの設備ごとにあるじゃないですか。そのままでは、メーカーもバラバラなものを繋ぐのは難しいけど、そこを吸収してつなげるようにするという感じですかね?

越地 シンプルに言うと、建物をスマホ化したいっていうイメージです。スマホ化するにはアプリをのっけますけどOSは必要ですよねと。当然スマホやパソコンは数年でリプレイスしてOSもアップデートする。車も10年くらいの償却ですけどソフトウェアを入れてアップデートしている。建物も100年もつのにそういう機能ないよねと。じゃあ建物もスマホ化して、どんどんアップグレードできるように仕組みを作ろうという発想です。

ーー 要するにソフトウェアを1つ作ろうという発想ですよね。ケータイ電話もむかしは機種ごとに機能が固定的だったけど、iOSやAndroidといったOSが出てきたことでアップグレードしていけるようになった。

菅原 最終的にはユーザーが好きなアプリを使って建物を運用できるようにしたいというか。

ーー この部屋使ってないのにエアコン動いてるじゃんとわかって対応するようなことが入室管理と連動してできるみたいなものを作ったとして、それをアップグレードで対応するとか。SDGs時代にビル全体のエネルギーの最低化とか、求められるセキュリティがより複雑化するなど、社会的に求められるものも変わってきますからね。それが、たてものOSで、DX-Coreはその……。

菅原 固有名詞で、商品名ですね。

ーー こういうことは業界的に来ていると?

菅原 少しずつ始まっているところです。

ーー 清水建設が一番進んでるということですか?

菅原 そうですね。

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