国際認証「B Corp」取得に向けた取り組みも:
古本ビジネスの「おかしい」を変えたいバリューブックス
業界構造を変えなければならない
中村:古本買取のビジネスの課題として上がってくるのが、買い取れない本が送られてくることです。そもそも買い取れなかった本が古紙のリサイクルに回るのは同じなのに、わざわざ売りたい方のご自宅から弊社まで届けてもらってしまうことで古紙回収までの動線が伸びてしまうという課題があります。
「なんでも送ってください、送料無料ですよ」というほうがユーザーの反応は良いので、弊社も含めて業界全体がそっちの方向にふれていたんですが、本当は環境的にもビジネス的にもあまりよくないんじゃないかと思って。それで思いきって送料をいただいて、買い取れない本を処分するためのコストがかかってるということをユーザーに認識していただくことを始めたんです。
そこで、本をたくさん送りたいという方が、売れる本と売れない本をどう仕分ければいいのかというときにテクノロジーの力で解決できないかなと。本棚の写真を1枚撮るだけで仕分けできる仕組みができたらいいよね、ということで「本棚スキャン」を作ったという流れです。
僕らとしては買い取れない本にかかるコストが減ると、ユーザーへの還元率も上げていけると考えています。一見ユーザーに反応してもらえる「無料」とか「便利」という訴求と、実際の構造上は負荷がかかって、回り回ってユーザーの買取金額が安いことになってしまう業界構造をなんとか変えていきたいという取り組みの一環です。
藤木:業界全体のやり方に抗うような方法は勇気が必要だったんじゃないでしょうか。
中村:そうですね。社内からも反対されたし、数字的にも大きく下がってしまったんですけど、10年以上も解決できないでいた、「どうしても買い取れない本が入ってきてしまう」という課題に取り組めるんじゃないかなと思ったんです。
弊社も含めて、よく「古本の買取金額が安い」と言われる大きな要因はそこにあるんじゃないかと思っていて。弊社からすると大して儲かってないんだけど、ユーザーからすれば1000円で売れるはずの本を100円で買い取られるなんておかしいと思われる。その背景にはたくさんの売れない本があり、そこには送料と人件費がかかってしまっているんですよ。
それは送料の有料化だけではまだ改善できていなくて、今は「査定手数料」をいただくことも検討しています。買い取れる本も買い取れない本も人件費は等しくかかってくるので。そのぶん買い取れる本は今より高く買い取ります。
そうしてリアルな価格構造をサービスに反映させることで、ユーザーが正しい行動をしやすくなるところがあると思うんですよね。ユーザーへの還元率は上げたいけど、どこにコストがかかるかというのは言っていかなければと思っています。