編集部員の「これ、買いました」 第2回
「PRISON BLUES」ブランドのペインターパンツを購入:
メイド・イン・プリズン! アメリカの刑務所で作られたデニムを履く
2021年11月11日 16時00分更新
ディテールをあちこちチェックしていく
プリズンブルースのペインターパンツ、細部の仕様を見ていきましょう。
フロントのフライ(前面の開く部分)はジッパーフライです。刑務所で作られたプリズンブルースらしく、トップボタンには「PRISON BLUES」の文字とともに、檻を思わせる模様があしらわれています。
ジーンズにはおなじみのリベットにも、「PRISON BLUES」の刻印が入っています。このあたりは抜かりなし、というところでしょうか。
バックポケットの両サイドも、外からリベット留めされています。ジーンズでは裏リベット(表からリベットが見えない)のものも多いので、プリズンブルースのそれは、質実剛健といった印象を強く与えます。
またペインターパンツということで、タフに扱えるように、バックポケットとサイドポケットの連結部分に、リベットが2個打ってあります。サイドポケットに重いものを入れても、破れないように……という補強でしょうか。この狭い間隔で2つのリベットを留めているのはけっこう珍しいかもしれません。
裾はシングルステッチで仕上げられています。シングルステッチは、1本の上糸(針糸)と、1本の下糸(ボビン糸)を、布の中央で絡み合わせて、2本の糸で縫い目を形成する縫い方。表と裏の見え方が同じになります。
ジーンズの裾はチェーンステッチ(環縫い)の仕上げも多いです。上糸と下糸が二重に交差して縫い目を形成する縫い方。表と裏で縫い目の見え方が異なりまして、裏面のループが連なった状態が鎖に見えるのでその名が付いています。
チェーンステッチはもともと刺繍などに用いられるものですが、「生産性を高める」という合理的な理由でジーンズに採用されました。
シングルステッチ(本縫い)では、下糸をボビンに巻き取って縫製します。下糸がなくなるとボビンに糸を巻き直す必要があります。一方、チェーンステッチは糸を巻いているコーンから上糸も下糸もいっぺんに使用するので、下糸をこまめに交換する必要がなく、制作の効率がよいとされています。
ただ、チェーンステッチには、下糸が1ヵ所ほどけてしまうと、全体が一気にほどけてしまうという弱点もあります。一方、生地と糸の収縮率が異なるため、洗うとキュッと引き締まり、生地の表面が波打つ特徴があります。これによって生じるアタリ(物などに擦れたり当たったりして生まれる、部分的な色落ち)が独特の表情を生みます。
どちらがよいというものではなく、各々に個性がある、ということです。大量に生産されるものだったジーンズが効率のよいチェーンステッチを多用するのも、ラフに使われるペインターパンツの裾がほどけにくいシングルステッチで裾を仕上げるのも、どちらも理にかなっています。
極端に太過ぎないのがポイント
さっそく履いてみました。全身のコーデを撮影するべきでしょうが、今回はパンツの紹介なので、シャツインして、パンツだけがわかるような写真で。一応、ベルトも締めました。
筆者が胴長短足なので、いまいち締まらない感じもありますが……。縫製はすこし雑なところもあるものの、作りはしっかりしていますし、生地もよい色落ちが期待できそうです。
レングスは30インチなのですが、アメリカ製のハンドメイドということもあり、結構サイズにバラツキがあるそうです。そのあたりはおおらかにとらえたいところですが、さすがに極端に短くはありませんでした。まあ、足が長くない筆者にはちょっと足元の収まりが悪いかも。
ルーズに履きこなしたいなら、積極的なワンサイズアップもいいかもしれません。筆者はゆるいウエストのパンツをベルトでぎゅっと絞るのが苦手なので、ジャストサイズを選びがちなのですが、このあたりはお好みです。
ややレングスが長くて足元がもたついている感じがあるので、ちょっと太めにロールアップをしたら、すこしヤンチャな見た目になりました。とはいえ、これぐらい折らないとストンと落ちてくれないので、さすがに裾上げを考えたいところ。
問題は、どれぐらい裾上げするか、ということなんですが……。これも好みがあるので一概には言えませんし、先ほども言ったように、裾の仕上げもシングルステッチかチェーンステッチか、悩ましいところですし……。
というわけで、もうすこし履いてから考えてみようと思います。あまりこだわりがない筆者の場合、お直しに行って「あっ、もうこれぐらいでいいです」などと、あっさり終わりそうな気もします。
総評ですが、ペインターパンツといっても太すぎないし、テーパードが強くかかっているわけでもない。野暮ったすぎず、タイトすぎずという、ありそうでない太さです。
人ともかぶらないでしょうし、かぶったらかぶったで(多分)話は弾むでしょう。価格も1万円しないので、ちょっと太めのデニムパンツがほしい人の選択肢としてオススメです。
モーダル小嶋
1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。
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