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編集部員の「これ、買いました」 第1回

アメリカのものとはちょっと違う、ユーロな雰囲気:

フランス軍のモッズコート「M-64パーカー」を買った

2021年10月29日 16時00分更新

文● モーダル小嶋 編集●ASCII

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タグから製作年とサイズを確認

タグは首の後ろに来るような位置にあります。画面中央右側のあたりに、もう一つタグがあったような感じも……

 さて、このM-64パーカーはいつ生産されたものなのでしょう。本体のタグを見てみます。

もうちょっとアップで。「U.T.A.H. PARIS 1986 86C 5060/7585」とありますね

ここは製造場所と製造年を示しています

 タグの上側には「U.T.A.H. PARIS 1986」という表記。フランス軍のパンツなどで「U.T.A.H. TOULOUSE」というタグを見たことがあるので、ここは「1986年、パリ製」ということを示していると思われます。このM-64パーカー、1986年生まれの筆者と同い年ということになります。ごめんなさい、「U.T.A.H.」が何の略かは調べておきます……。

ここはサイズ表記と、「だいたいこれぐらいの体型の人向け」という表示

 「86C」というのは、サイズの表記です。大ざっぱにいうと、胸囲が86cm、ということ。後ろの「C」というのは「Courte(短い)」の頭文字。「M(Moyenne、平均)」と「L(Longue、長い)」もあります。よって86Cは「胸囲が86cmで、その中でも丈が短いもの」ということになります。

 タグの下にある「5060/7585」は製造番号っぽく見えますが、おおよその身長と胸囲を表しています。「5060」は「身長150〜60cm」、「7585」は「胸囲75〜85cm」。つまり、身長150〜60cm、胸囲75〜85cm向けのサイズですよ、というわけ。

 このように同じサイズでも丈が選べる仕様はミリタリーものではおなじみで、例えばアメリカ軍のジャケットなら、同じ「SMALL」でも、「SMALL - X-SHORT」「SMALL - SHORT」「SMALL - REGULAR」「SMALL - LONG」……といった具合に、胸囲と身長にあわせて丈の長さが選べるのです。

筆者が所有するアメリカ軍のBDUジャケットのタグ。「SMALL - X-SHORT」。わかりやすくいうと、胸囲がSサイズ、丈がXSサイズ……ということになる

 ちなみに、筆者は身長172cm、体重63kg。「えっ、じゃあ86Cでは小さいのでは?」と思われるかもしれません。

 もっとも、M-64パーカーはあくまで「ジャケットなどの上に着る」ことを想定されているので、相当デカめに作られています。サイズをざっくり測りましたが、身幅が63cm、着丈が84cm、裄丈が86cmぐらい。

 筆者が暮らす東京で、シャツとカーディガンや、ニットの上などに着るぐらいとかなら、86Cでもちょうどいいと思います。もちろん、それより大きめのサイズで、ガバッとオーバーサイズ気味に羽織る人もいます。ある程度背丈のある人なら86の上のサイズである「92」「96」あたりがいいかも。それこそ、「踊る大捜査線」のように着たいなら、丈の長い「92L」「96L」などを探すといいでしょう。

 ただ、筆者は肩幅が狭いので、大きめのコートを着ると、てるてる坊主のオバケみたいになる。そのために、あえて小さめ(といってもタイトには見えませんが)のサイズを選んでいるのですね。

ディティールをチェック

 続いて、細部のディティールをチェックしていきます。

フードを被る。襟は高め

 街で着る分にはフードを被ることはあまりないと思いますが、そもそも軍用なので、帽子などを被っていても余裕のサイズ。雨風を防げるようにでしょう、襟はかなり高く、ボタンで留められるようになっています。

ジッパーとボタンで前を留める

 前立てはジッパーとボタン。まあ、年代物なので、ボタンはともかく、ジッパーはちょっとサビています。将来的には交換するか、丁寧に錆びを落とさないといけないかも。

 ところで、M-64パーカーのボタンはデカいです。500円玉と同じくらい。これは手袋をしている戦闘中などでもすばやく外せるように、なのかな。また、ボタンを留める部分は比翼仕立て(ボタンやジッパーなどが隠れるように、二重にした前立ての処理)になっています。防寒性を高めるため風が入ってこないように、あるいは木の枝などに引っかからないように……という配慮でしょう。

ボタン留めは比翼仕立て。このボタンが大きい

袖を留めるボタンもこのサイズ

 ポケットはスナップボタンで留めるフラップが付いていて、かなり大きい。文庫本ぐらいは普通に入ります。小さいタブレットぐらいでもいけるかもしれません。

フラップ付きのポケット。文庫サイズならスルッと入る

 先述したように、肩はラグランスリーブ。肩幅を神経質に合わせなくてもよいですし、肩が回りやすく、シルエットとしてもソフトな印象です。この部分が、M-64パーカーを着たときの印象を決定づけている気がします。

 ちなみに左肩のあたりに、「ARMÉE FRANÇAISE」というステンシルが付いている場合もあります。そちらのほうがより雰囲気があると考える人もいますが、筆者としては「なんだかんだ、自分はフランス軍に関係ない人間だしな……」とも思ってしまうので、ステンシルがないものでよかったかな、という気はします。

袖が襟ぐりまで切れ目なく続いているラグラン袖

 裏側のドローコードを絞ることで、ウエストが調整可能です。86Cぐらいのサイズを筆者が着る分にはあまり出番がなさそうですが、ちょっと大きめのサイズを着ている人には重宝するかもしれません。

裏側にあるドローコードを絞ってウエストを調節可能

ボアライナーも取り付けられるが
こだわりがなければインナーダウンの併用などもアリ

 このM-64パーカーには専用のライナーが付けられるようになっていて、それによって寒いところでも活動が可能になります。逆に言えば、ライナーを外せば、春や秋でも着られる厚さになります。

M-64パーカー用のボアライナーです

 ライナーは作られた時期によって仕様が違うらしく、厚さが変わっているものもあれば、起毛面の表と裏が違っているものまであるそうです。また、M-64パーカー本体とセットで作られたわけではなく、別々に生産されたため、本体とライナーの作られた時期が違うということはザラです。むしろ、同じことのほうが珍しいぐらい。

 いずれにしても、サイズが同じなら問題はないのですが、古着などの場合、本体とサイズの違うライナーが付いて売られていることもあったとか……。まあ、チェックすればすぐわかるので、レアケースではあります。

襟の部分に品質表示のタグがあったんですが、取れちゃってますね

 筆者が購入したものはセットになっていたのですが、ライナーのタグが取れていました。何年製かはわかりませんが、袖丈と身丈は合っていますので、サイズは「86C」のはず。

 生地は……なんだろう、クロロファイバー(ポリ塩化ビニル系の繊維)かな、と思ったのですが……。アクリル製のもの、ポリエステル素材のものなどもあるそうなので、もしかすると製造年代によって異なるのかもしれません。

本体とライナーはボタンで着脱します

 ライナーを付けて着ると、なんだか「モコッ」とした感じになります。それもそのはず。再確認ですが、86Cは「身長150〜60cm、胸囲75〜85cm向け」。しかも、「ライナーを付けて、ジャケットなどを着て、その上に着る」サイズになっていますから、ライナーを付ければ、172cmの人間には若干モコモコしてしまうわけです。

ライナーを入れるとモコッとした印象になります。ちなみに撮影時、ボタンをちゃんと留めなかったので、右足のあたりにライナーがちょっとずり落ちました

 まあ正直、1960〜70年代ならともかく、今では薄手のインナーダウンが数千円程度で売られているわけで、ライナーを付けて着るより、インナーダウンを下に着たほうが楽だという考え方もあります。そのあたりはお好みで。

 ちなみに、デッドストックにせよ、古着にせよ、本体とライナーがセットになっていることもあれば、バラ売りされていることもあります。購入する際には確認しておきましょう。

一味違うモッズコートが欲しいなら検討してみては

 今やモッズコートは数え切れないほどのブランドやショップが手掛けていますし、あえてフランス軍のコートに手を出すというのは、いささかアンティーク趣味かもしれません。防寒性でいえば、最新の繊維で作られたものにはどうしても劣りますし。

 とはいえ、質実剛健な作りと、縫製のていねいさも含めたちょっと優美なシルエットなど(昔のアメリカ軍のものなど、かなり大ざっぱな縫製のものもありまして……)、M-64パーカーにしかない魅力があるのも事実。

 ショップや状態にもよりますが、デッドストックでもライナー付きで2万円するかしないかですし、コートとして考えればそれほど高価ではありません。アメリカ軍のものより安いですし、人と被りにくいというメリットもあるかも。

 お目当てのサイズがあるかどうかは運次第なところもありますが、普通のモッズコートとは一味違うアウターが欲しいのであれば、検討する価値はあるかと。

たくさん着たいと思いまーす


モーダル小嶋

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。一人めし連載「モーダル小嶋のTOKYO男子めし」もよろしくお願い申し上げます。

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