正しいプロセスを身につけて効率良く英語を学ぶフェーズ2→3の学習方法
ネイティブの英会話が聞き取れる「音声変化」5つのルール 英語パーソナルジム「スタディーハッカー」講師に聞く
2021年10月22日 08時00分更新
社会人になってから「英語をマスターしたい」と、一念発起して勉強を始めたものの、思うように身に付かず、中途半端なまま学習を止めてしまったり、せっかく通っていた英会話教室に行かなくなってしまったりする人は多いのではないだろうか。
そこで本連載では、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」や、英語学習コーチングサービス「STRAIL」などを運営する株式会社スタディーハッカーに取材し、目標達成まで挫折せず効率的に進められる英語の学習方法を紹介する。
連載の第3回では、フェーズ3の目標である「音声知覚ができている」状態を目指す。各フェーズの詳細については、連載の初回でも詳しく解説しているので、併せて参考にしてほしい。
フェーズ1:ゆっくり読めば理解できる(リーディング)
【今回の記事】
フェーズ2:すばやく読める(リーディング)
⬇︎
フェーズ3:音声知覚ができている(リスニング)
フェーズ4:理解の処理がすばやくできる(リスニング)
フェーズ5:記憶にとどめておける(リスニング)
フェーズ6:正確に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ7:流暢に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ8:複雑に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
なぜ英文が読めるのにネイティブの話は聞き取れない?
前回は、フェーズ1から2に到達するための学習として、英文を「チャンク」と呼ばれる意味のあるかたまりに分解して理解する「チャンクリーディング」を教えてもらった。日本人に多い、英文を最後まで読んで後ろから訳す「返り読み」のクセをなくし、英語の語順のまま処理できる回路を鍛えることで「すばやく読める」ようになることが目標だった。
フェーズ2は、英文をある程度スムーズに読めるにもかかわらず、うまく聞き取れない人があてはまる。読めば意味はわかるのに、同じ内容をネイティブに話されるとちんぷんかんぷんという人は案外多いのではないだろうか。
英文を読めば理解できるのに聞き取れない理由の1つとして、話すと音声が変化することがあげられる。例えばネイティブが「ルカリッ」と言っていたのを聞いて、何のことかと思ったら「look(ルック)at(アット)it(イット)」だった、などという経験をしたことはないだろうか。たとえ単語単体の発音をわかっていても聞き取れない、ということが多々ある。私たちは、話すスピードが速いから理解できないと考えてしまいがちだが、それだけではなく、実際の発音と学習者が知識として持っている発音にギャップがあるから聞き取れないのだ。
フェーズ3の目標でもあるリスニング時の「音声知覚」だが、音声知覚とは、音を聞いたときに音声の中から単語を認識できる能力のこと。「音声知覚ができている」状態になるには、「ルカリッ」と言われて「look at it」という3単語を認識できるようになる必要があるわけだ。話しかけられたときに単語を認識できるようにならなければ、言われた内容を理解できるようにはならない。
音声変化のルールは全部で5つ
音声知覚を効率よく鍛えるには、どのように英語の音声が変化するかを先に理解しておくと良い。覚えるべき変化のルールは全部で5つとそこまで多くはない。音声変化のパターンを学んだ上で集中的にトレーニングをしたスタディーハッカーの受講生の中には、早い人なら2〜3週間でかなり聞き取れるようになると、同社常務取締役 兼コンテンツ戦略企画部部長の田畑翔子氏は話す。
もちろん留学などをして英語をシャワーのように浴びれば、音声変化を知らなくても徐々に聞き取れるようになるかもしれないが、日本にいるとそこまで英語に触れる機会は多くない。先に音声変化のルールを意識的に学ぶことで、学習効率を上げるのが得策だ。
まずは、次に紹介する5つの音声変化のルールを覚えよう。なお、ENGLISH COMPANYがリリースしているアプリ「Listening Hacker」を使えば、音声変化のルールをインプットしながら発音練習ができ、効率良く身につけることができる。
ルール1:連結(単語同士がつながって発音される)
単語の最後が子音で終わっていて、次の単語の最初の音が母音であるときに起こる。
「in (イン)a(ア) car(カー)」であれば、「in」の子音(n)と母音である「a」が連結して「イナ」と発音されることがあり、全部合わせると「イナカー」と変化する。
ルール2:同化(隣り合う音に影響を受けて、異なる音に変化する)
「would(ウッド) you(ユー)」を「ウヂュー」と発したり「could(クッド) you(ユー)」を「クヂュー」と発したりするなど、学校でも習うことがある変化。他にも「place(プレイス) your(ユア) order(オーダー)」なども「プレイシュアオーダー」と変化することがある。
ルール3:脱落(あるべき音が発音されない、あるいは聞こえにくくなる)
「that’s (ザッツ)right(ライト)」であれば「ザッツライ」と発するように、最後の「t」
という子音が聞こえなくなることがある。聞こえなくなった音を推測する必要がある、難易度が比較的高い音声変化。
ルール4:弱形(弱く短く発音される)
冠詞、前置詞、人称代名詞、接続詞、助動詞、be動詞などといったよく使われる語の中には、「強形」「弱形」という2種類の発音を持つものがある。たとえば「our」の「強形」は「アワー」で「弱形」は「アー」に近い音になる。
ルール5:ら行化・はじき音化(「t」や「d」が日本語の「ら行」のような音で発音される)
「t」や「d」が母音にはさまれたときや、母音と「l」にはさまれたときに起こる変化。「citizen」
の中にある「t」は、前後の音がどちらも母音になっており、「スィティズン」よりは「スィリズン」に近い音になることがある。
ディクテーションやオーバーラッピングを併用
音声変化のルールを覚えた後は、英語を聞き取って紙などに書き取る「ディクテーション」に取り組もう。文章の内容を把握するというより、単語一つひとつの音声を聞き取ることを目指す。聞こえた英語をすべて書き取るため、聞き取れていない箇所がはっきりわかる。注意したいのは、音声知覚を向上させるために取り組むのであれば、文法知識などにもとづいた推測に頼りすぎないこと。5回ほど聞いても書き取れない場合は、答え合わせをして確認しよう。スペルがわからなければカタカナで書いたりしても構わないので、なるべく空白をつくらず、どんな音が聞こえたかを書き出してみるとよい。
ディクテーションで聞き取れない箇所を把握したら、なぜ聞こえなかったかを自分で分析する。その時役立つのが音声変化のルールだ。実際にはどんなふうに発音されているのか、どうして聞こえなかったのかが理解できたら、発声練習をして定着を促す。このときに「オーバーラッピング」を併用すると効果的だ。オーバーラッピングはスクリプトを見ながら音声に合わせて同じように発音するトレーニングで、ついていくためには音声変化だけでなくリズムや抑揚まで真似る必要がある。日本語にない発音や英語らしいリズム、イントネーションも身につく。
「大切なのは、(ディクテーションで書き取ってわからない箇所を確認するだけでなく)オーバーラッピングの練習を通じて音を再現できるまで何度も練習すること」と話すのは、同社コンテンツ戦略企画部の堀登起子氏。実際に発音することで音声変化や英語らしいリズムや抑揚が身につき、英語を聞くための瞬発力を養えるという。
このトレーニングは長文だと負担が大きいので、まずは短い英文でOK。簡単な単語だけで構成されている教材からスタートしてみよう。「5つの音声変化がわかれば英語はみるみる聞き取れる(StudyHacker/ENGLISH COMPANY著:マイナビ出版)」を使うと、音声変化のルール確認から、ディクテーション・オーバーラッピングまで通して練習することができる。
人が言葉を聞いて理解するためには、「音声知覚」→「理解」という処理をこなす必要がある。今回のフェーズ3では、音声変化のルールを理解して、その前半部分にあたる「音声知覚」を効率よく身につけた。次回のフェーズ3→4では、後半にあたる「理解の処理がすばやくできる」ようになるための学習方法を紹介する。
■関連サイト
株式会社スタディーハッカー
Listening Hacker for iOS(App Store)
Listening Hacker for Android(Google Play)
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