「AYA SCORE」「まちのコイン」が目指すもの:

地方創生に「スコア」や「コイン」が使えるワケ

文●石井英男 編集●ASCII

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まちの個性化を目指した「まちのコイン」

佐藤 僕らは創業23年目。鎌倉に根ざし、自分たちでも地域活動をやって、まちづくりに参加している地域企業なんですが、地域にこだわっている企業って思ったほど多くはなくて。「地域企業がもっと増えればいいのに、仲間が増えればいいのに」と思っていたんですが、上場すると、僕らも「なんで地域事業やってるんですか?」とか「東京にきたらいいじゃないですか」と言われることが多かった。そのとき企業が地域にこだわる意味はなんだろうというのをうまく説明したいと思っていた時期が長かったんです。実感的には良さがわかるんだけど、説明するのがなかなか難しかったので。

カヤック 佐藤純一氏

 そんな中で立ち上げたのが、移住スカウトサービスの「SMOUT(スマウト)」。登録すると地域からいろんな募集ごとのスカウトが届くというマッチングサービスをやっているんです。今は登録数は3万人で、市町村ベースで700市町村くらい。だけど、本当はもっともっと動いてもいいのになと思っていて。

SMOUT(スマウト)

 このごろは、いろんなまちが均質化してしまっていますよね。戦後、機能的に開発されてきたことで、地方も便利になってきてはいるんだけど、街道沿いはどこも同じ風景だし、どこに住んでも同じような感覚になってきているというか。エキゾチックな情緒あふれる旅の体験もできないし、大体どこも駅を降りたら一緒じゃんと。これはまちに個性が足りないからだと思うんです。

 たとえば伊豆はサイクルタウンだということになれば、サイクルベンチャーが集まるかもしれないし、世界的レースが行なわれるかもしれない。自転車を趣味にする人は、伊豆と都市で二拠点居住をするかもしれない。まちが個性化して社会が多様化すれば、選択の余地が生まれ、「自分にぴったりなまちはあそこだ」と気付くことができる。それはコンテンツ的な価値創造です。

 僕らはコンテンツ広告やゲーム、マンガなどのコンテンツ事業をずっとやってきたエンターテイメント企業です。漫画でもゲームでも、コンテンツというのは、好きな人はすごく好きで、嫌いな人は大嫌い。好き嫌いがあるからこそ、愛着が生まれる。僕らがずっとやってきたコンテンツ的な考え方でたくさんのまちが個性化すれば、個人も企業も自分たちにピッタリあった地域が見つかるだろうと考えたんです。そこで、じゃあまちを個性化するにはどうすればいいんだろうと。

 たとえば自分たちのまちを自転車のまちにしたいと思ったとき、「自転車で店に来てくれたら500コイン!」とやったら、どんなお店でも参加できるじゃないですか。そうして、自分たちのまちが個性化していくことに多くの人や団体が関わる仕組みづくりをしようと思ったのが「まちのコイン」なんです。

「まちのコイン」の仕組み

 まちのコインは累計14地域に導入されていますが、最初にやることは、「このまちをどういうふうなまちにしたいか」という設定を決めること。加盟店、僕らは「スポット」と言うんですが、コインを使ってまちがそういう方向になるような体験をしたり、逆に体験をすることでコインをもらえるような形にする。そうしてコインがおもしろおかしく使われていけば、徐々に自分たちのまちが個性化していって、なりたいまちになっていく、そういうツールなんですね。ゲーミフィケーション的な考え方も取り入れて、まちがなりたいようになっていく。ちょっと公共的な考え方も入れながら、仕組みとして動かしていくという。

 そのときコインを動かす中心になるのはあくまで市民なんです。まちづくりは行政の仕事と考えている人が多いと思うんですが、行政のまちづくりは基本的には平均化していくというか、誰もが安心して暮らせる形になっていく。やればやるほど、どこで暮らしても誰もが平均的な暮らしができるんだけど、それ以外の人たちが「めっちゃ好き」という愛着が生まれることはなかなか難しい。その愛着を生むのは市民なんじゃないかと思うんですよね。

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