正しいプロセスを身につけて効率良く英語を学ぶフェーズ1→2の学習方法
チャンクリーディングを身につけて 返り読みのクセを取り除く
2021年10月15日 08時00分更新
社会人になってから「英語をマスターしたい」と、一念発起して勉強を始めたものの、思うように身に付かず、中途半端なまま学習を止めてしまったり、せっかく通っていた英会話教室に行かなくなってしまったりする人は多いのではないだろうか。
そこで本連載では、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」や、英語学習コーチングサービス「STRAIL」などを運営する株式会社スタディーハッカーに取材し、目標達成まで挫折せず効率的に進められる英語の学習方法を紹介する。
連載の第2回にあたる本記事では、フェーズ1から2へ上がるための学習方法を解説する。なお、各フェーズの詳細やフェーズ0の学習内容については、第一回の記事を参照してほしい。
フェーズ1からフェーズ2へ到達するには
前回の記事でも紹介した通り、スタディーハッカーは、学習者のレベルに合わせた最適な学習方法を提案している。その際に用いているのが、外国語を習得するメカニズムを科学的に研究する「第二言語習得研究」の知見に基づき、到達レベルを0〜8のフェーズに分けた次の「英語力マップ」だ。
フェーズ0:基本文法・基本語彙(基礎知識)
【今回の記事】
フェーズ1:ゆっくり読めば理解できる(リーディング)
⬇︎
フェーズ2:すばやく読める(リーディング)
フェーズ3:音声知覚ができている(リスニング)
フェーズ4:理解の処理がすばやくできる(リスニング)
フェーズ5:記憶にとどめておける(リスニング)
フェーズ6:正確に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ7:流暢に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ8:複雑に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
第一回で紹介した内容を簡単におさらいすると、フェーズ0の人は中学や高校卒業以降、英語の勉強をしておらず、文法や語彙などの基礎知識をかなり忘れてしまっている状態だ。そこからフェーズ1に到達するための学習方法として、中学レベルの英単語や文法からインプットしていくことを前回はアドバイスしてもらった。地道に学習を重ねることで、まずは日本語に訳しながらでもよいので「ゆっくり読めば理解できる(フェーズ1)」ようになるわけだ。
今回目指すフェーズ2は「すばやく読める」状態であると定義されている。フェーズ1の人は基礎文法や日常的な語彙がある程度身についており、意味を確認しながらゆっくり読むことはできるが、英文を左から右へ流れるように理解するのはまだ難しい。
返り読みのクセを取り除く
英文をスムーズに読めない理由のひとつに、英単語を逐一日本語に置き換えたり、一文全体を綺麗に訳そうとしたりすることがあげられる。英語と日本語は語順が異なるため、一度に訳そうとすると後ろから前に戻って読む必要がある。これは「返り読み」と呼ばれ、日本語を母語とする日本人学習者に多く見られるクセだという。正確に読めても瞬時に理解することはできないため、実際のビジネスシーンでは、ネイティブの会話スピードについていけなくなってしまう。
そこで、この段階では英文を英語の語順のまま処理できる回路を鍛えることが大切だとスタディーハッカーの田畑氏は話す。リスニングでは、音が聞こえた瞬間に意味を処理していく必要があるからだ。
チャンクリーディングで意味のかたまりを理解する
具体的な学習方法として紹介してくれたのが、英文を「チャンク」と呼ばれる意味のあるかたまりに分解して理解する「チャンクリーディング」のトレーニングだ。文の先頭から意味のかたまりを見つけて理解しながら音読し、返り読みをしないように意識することで、ネイティブと同じように英語の語順で理解できるようになるという。例えば、次の英文を見てみよう。
Thank you for your wonderful support in taking part in the 55th New Jersey Annual Speech Contest.
この一文を自然な日本語の文章にすると次のようになる。
(in the 55th New Jersey Annual Speech Contest.)
・参加した際の
(in taking part)
・あなたの素晴らしいサポートに感謝します。
(Thank you for your wonderful support)
上記の通り、日本語にすると後ろの英文が前に来るが、チャンクリーディングでは次のように先頭からかたまりごとに順番に意味をとらえていく。
・Thank you for your wonderful support
(あなたの素晴らしいサポートに感謝します)
・in taking part
(参加した際の)
・in the 55th New Jersey Annual Speech Contest.
(毎年恒例となっている第55回ニュージャージースピーチコンテストに)
最初は違和感が残るかもしれないが、チャンクごとの理解に慣れてくると、「誰が?」「どうした?」「いつ?」といった次にくる内容を想定しながら読めるようになる。返り読みの必要もなくなり速読力がつくと田畑氏は話す。
数は少ないが、チャンクリーディングができる市販のトレーニング教材も用意されている。また、スタディーハッカーが提供する会員制のWebサービス「ENGLISH COMPANY MOBILE」でも、チャンクごとに句切られた英文教材を用いて音読などのトレーニングができる。チャンクごとの訳もついており、自分で句切ったり意味を調べたりする必要がなく、スマホから手軽に練習することが可能だ。
ただし、自分の語彙でほぼすべて理解できる教材を選ぶこと。未知の単語がほとんどないか、あっても一割未満に収まる英文を教材にして、知らない単語や文法はトレーニング前に調べておく。また、音声データが付属している教材を使用し、正しい発音で読み上げることも重要だ。音読スピードがゆっくりだったり途中で止まったりしてしまうと、リーディングスピードが上がらないため、発音でつまずくことがないようにしておこう。
音読前には、チャンクを素早く日本語に置き換える「サイトトランスレーション」を取り入れるのも効果的だ。チャンクを見たときに瞬時に意味が思い浮かぶかをチェックする方法で、日本語がすぐに出てこないということは、知らない単語があったり文法が理解できていないということになるため、不足している知識を見つけるのにも役立つと堀氏は話す。
チャンクリーディングの練習期間としては、1日20〜30分のトレーニングを1ヶ月程度続けるのがひとつの目安。意味の切れ目をある程度自然に理解しながら読むことができるようになるという。音読をする際には、頭の中で情景を思い浮べたり、実際に自分が話しているかのようになるレベルまで何回も同じ教材を使ってトレーニングをしたりすることが大切だ。単に声を出すだけでなく、意味内容を正確に理解しながらスムーズに読めるようになるまで続けよう。暗唱にもチャレンジするとさらに効果的だ。次回は、フェーズ2→3の段階における効率的な学習方法を解説する。
■関連サイト
株式会社スタディーハッカー
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