Facebookがサングラスブランド「Ray-Ban」とのコラボレーション「Ray-Ban Stories」を発表した。ウェアラブル機器ではあるが、GoogleグラスのようなAR機能はまだ搭載していない。しかし、共同創業者兼CEOのMark Zuckerberg氏は、スマホを超える存在になるという野望を隠さなかった。
5メガピクセルカメラを2つ搭載したFacebookメガネ
「Ray-Ban Stories」
9月9日、FacebookとRay-BanのEssilorLuxotticaが発表した「Ray-Ban Stories」は2社の提携に基づく初のFacebookグラスとなる。製品名にこそFacebookの名称が入っていないが、Facebook、いやZuckerberg氏にとっては社運をかけたAR/VRの歩みにおける第一歩となる。
Ray-Ban Storiesは、Ray-Banのフレームの左右上部に5メガピクセルのカメラを搭載したメガネ(度付きも可能)だ。右横フレームにあるボタンを軽くタップすると録画が始まり、長押しすることで写真を撮影できる。動画は最大30秒。録画中は、カメラの横にあるLEDライトが点灯し、周囲に撮影中であることを知らせる。フレームにはマイクも内蔵されており、「Hey Facebook, Take a picture」と音声コマンド(Facebook Assistant)によりカメラを操作できる。
Ray-Ban Stories本体には写真500枚、動画は30秒まで保存でき、それらを専用のスマートフォンアプリ「Facebook View」にダウンロードして管理できる。編集したり、それをFacebook、Instagram、WhatsAppなどに投稿することもできる。
スピーカー(”オープンイヤースピーカー”)も内蔵されており、スマートフォンとBluetoothで接続してポッドキャストや音楽を聞くことができる。単にアイウェアとして楽しみたいときは、電源ボタンを押してオフにできる。
Ray-Ban Storiesは3種類のフレームスタイル(Round、Meteor、Mayfarer)があり、それぞれ4色展開。合計で20種類から自分の好みのものを選ぶことができる。価格は299ドルから。
すでにRay-Banのウェブサイトで販売を開始しており、米国、カナダ、イタリアなど6ヵ国(日本は含まれない)の直営店でも購入できる。
AR/VRを次のプラットフォームと位置付けるZuckerberg氏
Ray-Ban Storiesは革新的か? おそらくそうではない。コンセプトは、Snapchatの「Spectacles」と同じと言えるだろう。Spectaclesは5年前の2016年に初代が登場。すでに第4世代が発表されている。
動画の共有が大切なソーシャルサービスにとって、すぐに写真が撮れるデバイスというのは理想なのかもしれない。
しかし、Zuckerberg氏の野望はそこを超えている。「(メガネは)次のプラットフォーム」「スマートフォンはもはや、人々の生活において必須ではなくなる」。Zuckerberg氏は、Ray-Ban Storiesの発表に合わせた公開したEssilorLuxotticaの幹部と対談動画でこう語っている。
Zuckerberg氏の言葉は、プラットフォーマーと競争の面からも、ソーシャルサービスの進化の点からも分析できる。
たまたま6月、フランスで開催されたベンチャーイベント「Viva Technology 2021」でZuckerberg氏がオンラインで会場のモデレーターと対談したのを見ていたのだが、ここでZuckerberg氏はAR/VRへの狙いを熱心に語っていた。
FacebookがOculusを買収したのは2014年、OculusのようなVRは「存在」の感覚を届けるものとZuckerberg氏は位置付けた。Zuckerberg氏は、「画面、スマートフォン、ビデオチャット……なんとなく一緒にいるというマイルドな感覚は持てる。だが、別々の場所にいるという前提の意識がある」と現在、我々が日常的に使う技術の限界を指摘、これに対し、没入型であるVRはその中で一緒にいるという感覚が味わえるとした。
VRは重さとネットワークなどの技術課題に挑戦し続けてきた。最初はコード付きだったが無線になり、そして5Gの時代に入りつつある。Zuckerberg氏は2020年末に発売された「Oculus Quest 2」でVRは変曲点を迎えたと話した。
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