Insider Preview版ながらWindows 11にも対応
すでに述べたように、マイクロソフトは、今のところARM版のWindows 10を、一般ユーザー向けに販売していない。ということは、いくらParallels DesktopがARM版をサポートしていても、正式リリース版としては使えない。このあたりの事情は、以前の記事「M1搭載Mac用「Parallelsプレビュー版」で分かった高い互換性、MacのWindows環境は安泰」に書いた通りだ。
今のところM1搭載Macでは、ARM用WindowsのInsider Preview版を利用するしかない。しかしマイクロソフトとしても、市販するつもりがまったくないものをInsider Preview版として公開し続けるということもないだろうと思われる。しかも、Windows 10だけでなく同11のARM版もInsider Previewを公開しているのだ。これについては、今後のマイクロソフト社の動向を注目しながら待つしかない。あくまで個人の感想だが、Parallelsのような仮想環境を利用することによって、Apple SiliconのMacでもWindowsを正式に利用できるようになるという望みは薄くないように感じられる。
今のところARM版のWindows 11は、同じくARM版のWindows 10からアップデートする形でインストールできる。ところが、Windows 11は同10に比べてハードウェア条件を厳しくチェックするようで、Parallels Desktop 17が登場した時点では、10から11へのアップデートができなくなっていた。それを可能にしたのが、Parallels Desktop 17.0.1だ。
Windows 10のSettings(設定)の「Update & Security」で、「Windows Insider Program」のアップデートのチャンネルを「Dev」または「Beta」にしておくと、Windows 11にアップデートできるようになる。ただし、その前にWindowsのアカウントをInsider Programのアカウントとリンクしておく必要がある。
あとは、通常のWindows Updateの処理で、「Windows 11 Insider Preview」へのアップデートが可能となる。OSのメジャーバージョンのアップデートなので、ダウンロードとインストールには、通常のアップデートよりも時間がかかる。
Windows 11は、仮想マシンのCPUを、「Apple Silicon」と正しく認識した上で、正常に動作しているように見える。
何度も書いているように現在のM1搭載Macや、今後登場するApple Silicon系CPU搭載のMacでWindowsが正式に使えるようになるかどうかは、今後のマイクロソフトの決定しだいであり、現状では何の確約もない。とはいえ、現実には無料で利用できるInsider Preview版が公開され、それをサポートするParallels Desktopも正式にリリースされているので、技術的には十分に可能であることがすでに証明されている。あとは期待して待つしかない。
それでも、Parallels Desktop 17がユニバーサルバイナリとしてリリースされ、これまでのインテルCPU搭載Macでも、十分に利用できるアプリケーションになっている事実は心強い。
これも個人的な想像ながら、最初に購入するMacがApple Silicon搭載機で、その主な目的がWindowsを使うこと、というユーザーは、それほど多くないだろう。MacでWindowsも使いたい人は、しばらくはインテル搭載機上でParallelsを動かして利用すれば、何の問題もないはずだ。
何しろWindowsのメインターゲットも今のところインテルCPUなのだから、そして、ARM版のWindowsが正式リリースされた時点で、Windowsの環境もParallelsごとApple Silicon搭載Macに移行することを考えても、まったく遅くはないだろう。