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インテルMac用として究極の仮想環境「Parallels Desktop 16 for Mac」レビュー

2020年09月09日 09時00分更新

文● 柴田文彦 編集●飯島恵里子/ASCII

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 毎年恒例となったParallels Desktop(以下Parallels)のメジャーアップデートの季節がやってきた。Parallelsは、毎年macOSの新しいバージョンの正式リリースに合わせ、その少し前に新バージョンを発売している。今回はもちろん、macOS Big Sur対応のParallels Desktop 16だ。

 Parallelsは、macOS上でWindowsやLinuxをはじめとする、さまざまなOSを動作させ、それらのアプリケーションを利用可能にする、いわゆる仮想環境ソフトウェア。ハードウェアよりも、OSの内部構造に依存する部分が大きいので、OSのバージョンが大きく変わると、それに合わせてParallels内部もアップデートを必要とする部分が大きくなる。macOSと足並みをそろえて毎年新バージョンが登場するのは、そのためだ。

 なお、今年の場合、Macユーザーとして気になるのは、WWDCでデモされたApple Silicon用のParallels Desktopプロトタイプが、いつ、どのような形で製品化されるかということだろう。しかし、Parallels関係者は、それについてはWWDC以降も固く口をつぐんでいる。今回の新バージョン発表会でも何も語られなかった。これについては、時機が来るまで待つ必要があるだろう。ここでは、インテルMac用の最新バージョン、Parallels Desktop 16をレビューする。

今年のバージョンはBig Sur対応に注力

 理想を言えばParallelsは、いわば透明な存在であるべきソフトウェアだとも考えられる。ただそれは、MacをあたかもWindows PCのように動作させ、本物のPCとまったく同じようにWindowsが使えるようにすることを目標と考えた場合のこと。しかし、Parallelsによって構築される仮想マシンと、本物のPCには決定的な違いがある。それは言うまでもなく、その仮想マシンは、あくまでのmacOS上の1つのアプリとして動作すること。つまりほかのmacOSのアプリと同時に同じMac上で動く。そして複数の仮想マシンを用意することで、macOSとWindowsだけでなく、新旧バージョンのWindowsなども含めてほかのOSも同時に使うことができる。

 MacをWindows PCと同じように動作させるだけなら、アップル純正のBootcampがある。それは確かにかなり透明な存在に近い。次に起動するOSの切り替えや、Mac固有のハードウェアの設定など、ごく一部の機能を除けば、ユーザーはMac上でWindowsを動かしていることを忘れてしまうほど、本物のPCとの機能的な差もない。

 しかしParallelsが目指すのは、macOSと複数の仮想マシンを同時に動かすことを前提とした利便性とパフォーマンスだ。これはBootcampに求められるものとはまったく異なる世界だ。仮想環境として、必ずしも透明な存在である必要はない。本物のPCでは不可能な、便利な機能をできるだけ多く提供することが求められる。それでいて、あたかもMacのハードウェア上で直接ほかのOSを動かしているかのようなパフォーマンスも求められる。そこには、本物のPCでは動作しても仮想環境上ではうまく動かないソフトウェアをできるだけなくすという互換性の向上も含まれる。

 これまでのParallelsは、そうした要求を両立させるために、今日までバージョンアップを繰り返してきたと言っても過言ではない。そして、バージョンアップが必要なもう1つの理由として、冒頭で触れた、Parallelsの動作の基盤としてのmacOS自体のバージョンの変化がある。つまり、Parallelsは、常にこの3つの要素のバランスを取りながら進化してきたと言える。

 Parallelsの新バージョンには、毎年これでもかというほどの新機能が搭載され、毎回、まだこんな手があったのか、こんなところに改良の余地があったのかと驚かされることも少なくない。もちろん、年々パフォーマンスも向上している。それが今年のバージョン16は、例年に比べて、珍しく新機能の追加は控えめのように思われる。それにも理由がある。一言で言えば、今回はmacOSの新バージョン、Big Surへの対応のために開発リソースを消費していたからだ。

 Big Surでは、インテルとApple Silicon両対応のOSとなるが、現行のCatalinaとの違いはそれだけではない。OS自体の機能を拡張する「カーネル拡張(kext)」まわりの仕様が変更され、サードパーティ製のカーネル拡張は利用できなくなるのだ。Parallelsをはじめとする仮想環境ソフトウェアは、これまで独自のカーネル拡張を開発して、ハイパーバイザーと呼ばれる仮想化のレイヤーを実現していた。Big Surでは、それが使えなくなり、アップル純正のカーネル拡張(システム拡張)によってハイパーバイザーを実現する必要がある。

カーネル拡張によるハイパーバイザー

 そのための作業は口で言うほど簡単ではなく、Parallelsでは25人年の労力を必要としたという。すでに述べたように、Parallelsは1年に1度のペースでメジャーなアップデートを繰り返していることから、今回のバージョンでは、システム拡張への対応のためだけに、25人ものエンジニアが張り付いていたことになる。これは、ソフトウェア会社にとって、かなり大きな負担だったはずだ。そのために、表面的な新機能の追加が控えめなものとなったのはやむを得ない。

 それでも、昨年までのバージョンとは異なるいくつかの新機能が搭載されている。また実行パフォーマンスの向上も見られる。そのあたりも順に見ておこう。

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