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NETGEAR製品導入事例

ゲーム制作の効率改善を目的にエッジのPCまで10G接続、そこでネットギアを選んだ理由は

フロム・ソフトウェア、社内のフル10ギガNW化にネットギア製品を採用

2021年08月20日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp 写真● 曽根田元

提供: ネットギア

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 「DARK SOULS」シリーズや「SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE」など、日本のみならず世界中に熱烈なファンを持つコンシューマーゲーム作品を制作してきたフロム・ソフトウェア。来年(2022年)1月21日には、最新作となるアクションRPG「ELDEN RING」を全世界同時リリース予定だ。

「ELDEN RING(エルデンリング)」は、バンダイナムコエンターテインメントとフロム・ソフトウェアが共同開発する新作アクションRPGだ(https://www.eldenring.jp/

 そのフロム・ソフトウェアでは今年、東京本社/福岡スタジオの社内ネットワークを刷新し、全面的な10GbE(10ギガビットEthernet)化を行った。サーバールームのコアスイッチからディストリビューションスイッチ、ビル内各フロアのフロアスイッチ、各デスクのエッジスイッチ(いわゆる“島ハブ”)まで、ネットギアの10Gスイッチ製品を多数採用した構成となっており、ゲーム制作現場のPCを直接、10GbEでネットワーク接続するものだ。

 今回はフロム・ソフトウェアの社内ITを担当するシステム管理セクション 部長の池田吉志氏、同セクション シニアの坂西勇樹氏に、ゲーム制作現場のネットワークに“フル10G化”が必要になった背景から、10Gスイッチ製品選択における要件、ネットギア製品を選択した理由や評価までをうかがった。

フロム・ソフトウェア システム管理セクション 部長の池田吉志氏、同セクション シニアの坂西勇樹氏。オフィスにある「DARK SOULS」の騎士像とともに

フロム・ソフトウェアは、ゲームもシステムも「真面目な会社」

 ゲーム業界、あるいはゲームファンの中では高い知名度を誇るフロム・ソフトウェアだが、働く人から見た「社風」はどういったものなのだろうか。

 池田氏にそう質問すると「昔から『真面目な会社』という印象が強いですね」という答えが返ってきた。1986年設立のフロム・ソフトウェアは当初、ビジネスアプリケーションの開発からスタートしたという異色の経歴を持つ。

 「ゲームの制作現場というと私服で働いているイメージが強いかもしれませんが、当社は十数年ほど前まで、開発部門含め全員スーツでした。制作するゲームにも、そういう雰囲気は表れているかもしれませんね」(池田氏)

フロム・ソフトウェア 池田氏

 特に近年のゲーム作品ではダークファンタジーの世界観が基調となっており、そうした「静かな世界の中にも、個々の『芯の強さ』を表現する要素が含まれている」部分がフロム・ソフトウェアらしいのではないかと、池田氏は自身の持つ印象を語る。

 一方の坂西氏は、今年4月にモバイルゲームの会社から移籍したばかりで「社風についてはまだコメントできませんが……」と笑いつつ、「社内のシステム構成を見ても『真面目』だなと思います」と語る。以前の職場では業務に利用するクラウドサービスが乱立気味だったが、フロム・ソフトウェアの場合はオンプレミス環境が中心となっており、IT統制が取れた無駄のないシステム構成になっていると説明する。

フロム・ソフトウェア 坂西氏

 もっとも、そうした無駄のないシステム構成は「少ないメンバーでIT管理を回すために効率を求めた結果」でもあると、池田氏は説明する。フロム・ソフトウェアのシステム管理セクションには、社内のPCやインフラを管理する部門(いわゆる情シス部門)のほか、作品のQA管理(品質管理)部門、プロダクトマネジメント部門が統合されている。情シス担当メンバーは3名で、東京本社と福岡スタジオのPCやサーバーインフラを管理している。

 ちなみに、サーバールームにあるゲーム制作系のシステムはファイルサーバー/NASが中心だという。用途に応じてWindowsファイル共有で直接アクセスしたり、バージョン管理システム経由でアクセスしたりとさまざまだが、ファイルサーバーそのものは一般的なものと変わりない。ただし、後述するとおりその容量は大きい。

1Gネットワークでは業務効率低下のおそれ、先手を打った10G化

 フロム・ソフトウェアでは、2012年にサーバー周りの基幹ネットワークを10G化したが、エッジスイッチとPCの間は1G接続のままだった。今回はここも10GbE接続として、社内ネットワーク全体をフル10G化している。ちなみに、インターネットアクセスもすでに10G回線になっている。

 社内ネットワークを刷新し、エッジまでフル10G化を図った理由は何だったのか。池田氏によると、その理由は大きく3つあったという。

 まず1つめの理由は、ゲームにおいてもコンテンツのデータ容量が増え続けていることだ。コンシューマーゲーム機は数年ごとに世代交代がなされ、そのたびにスペックが強化される。たとえば映像の解像度がSDからフルHDへ、そして4Kへと高精細化するたびに、制作側のグラフィックデータも容量が数倍ずつ大きくなる。

 ゲームの制作現場では、こうしたデータをファイルサーバー経由で何度もやり取りしながら作業を進めることになる。そのため、これまでの1GbEネットワークでは「データ転送待ち」の時間が長くなり、業務効率の低下につながる可能性が高まっていた。

 ちなみに同社の場合、ゲーム1タイトルあたりの制作データ容量はファイルサーバーで共有されるものだけで30~40TBに及び、現在のファイルサーバーの総容量はバックアップデータも含めて300~400TBほどに達するという。

最新作・ELDEN RINGのトレイラー映像(フロム・ソフトウェア YouTubeチャンネルより)。コンシューマーゲーム機の進化と作品表現の高度化により、制作にかかるデータ量は大容量化し続けている

 2つめは、社内のクリエイターが制作時の参考資料として「YouTube」などの動画サイトにアクセスする機会が増えていることだ。こちらでも映像の高精細化が進んでおり、社内ネットワークの帯域負荷が高まっていた。

 そして最後の理由が、コロナ禍を通じたリモートワーク/在宅勤務の増加である。社内外の打ち合わせにWeb会議システムやチャットツールが多用されるようになったほか、在宅勤務中のスタッフによるリモートアクセスも増えた。リモートからでも、快適に業務が進められる環境を用意しなければならない。

 こうしたさまざまな事情が重なって、フロム・ソフトウェアではフル10Gネットワークへのリニューアルを決断した。池田氏は「2020年の初頭から検討が始まり、夏ごろには計画が具体化しました」と振り返る。

 新しいネットワークでは、エッジまでのフル10G化に加えてもうひとつ、東京本社のフロア間接続を光ファイバケーブルに置き換えることも要件となった。これまではCat6ケーブルで接続していたが、ビルの縦幹線を通る他の通信ケーブルからの干渉を防いでより安定した通信品質を得るために、光ファイバ化は必須だと考えたという。

「フル10G化」と「フロア間光ケーブル接続」が主な要件

 フロム・ソフトウェアでは、複数社のネットワーク製品を検討したうえで、ネットギア製品を採用することにした。2020年9月に設計を行い、10月に発注、11月から製品の納品が開始された。フロア間の光ファイバ敷設は2021年の1~2月に行い、4月には新しいフル10Gネットワークを導入、運用開始。その後、旧ネットワークの撤去などを行って、東京本社では今年5月にすべての作業が完了した(福岡スタジオはコロナ情勢も見ながら今年度内の対応予定)。

 今回、フロム・ソフトウェアが導入したネットギアのフルマネージ/スマートスイッチ製品群は次のとおりだ。総数で180台を超える規模となっている。

【東京本社】
・コアスイッチ:M4300-48X(2台/スタック構成)
・ディストリビューションスイッチ:M4300-24X24F
・フロアスイッチ:M4300-24X24F(一部はM4300-96X)
・エッジスイッチ:XS748T、XS724EM、XS716E、XS708E

【福岡スタジオ】
・コアスイッチ:XS748T
・エッジスイッチ:XS708E

フロム・ソフトウェアのネットワーク構成図(東京本社、福岡スタジオ)

 コアスイッチにはフルマネージ/48ポート10GBASE-TスイッチのM4300-48Xを採用している。「1台ではポート数が足りなかったので、2台をスタック接続しています」(池田氏)。また、サーバールーム内のディストリビューションスイッチとフロアスイッチには、SFP+ポートを備えるM4300-24X24Fを採用して、フロア間の光ファイバ接続を実現している。

サーバールームのネットワークラックには、コアスイッチの「M4300-48X」やディストリビューションスイッチの「M4300-24X24F」を収容。M4300-24X24Fから延びた光ファイバケーブルは、パッチパネルを経由してフロア間の幹線へとつながる

 デスク周りのエッジスイッチとして、通常はラックスイッチに使われるXS748T(10GBASE-T×44ポート)のような多ポートのモデルも導入しているのはやや不思議だ。この点を尋ねると「ゲーム制作の現場では、PCだけでなく動作確認用のゲーム機もネットワーク接続する必要があるため」という答えが返ってきた。フロム・ソフトウェアでは「PlayStation」「Xbox」など複数のプラットフォーム向けにゲームをリリースしているので、それぞれのゲーム機で確認を行う必要がある。

 「当社内にはおよそ600台のPCがありますが、それに加えてクリエイターは通常、1人あたり3台程度のゲーム機を接続します。過去作では、チームプレイのあるゲームを開発するため、1人で8台のゲーム機を接続しているようなクリエイターもいましたね」(池田氏)

 ネットギアの10G対応スイッチのラインアップを見ると、エッジスイッチでは24ポートが最大だったため、それ以上のポート数を求めてラックスイッチを採用したという。「今後は、静音性を考慮したエッジスイッチでも48ポートモデルをラインアップしていただけるとうれしいですね」(池田氏)。

「低コストと安定稼働」だけではないネットギアの選択理由

 それではなぜ、ネットギア製品を選択したのだろうか。

 池田氏は、いちばん大きな理由としては「導入コストの安さ」と「安定稼働の実績」だと答えた。実は、同社では以前から基幹ネットワークの一部でネットギア製品を利用しており、安定稼働を続けてきた実績がある。これに加えて、ライフタイム保証が標準で提供されており、いざという時の備えとして「心強い」と語る。

 ただし、それ以外にも理由はあるという。たとえば10Gスイッチ製品の豊富なラインアップだ。

 「今回はフロア間の幹線を光ファイバ化する必要がありましたが、ネットギアには10GBASE-TポートとSFP+スロットを混載したスイッチが多数ラインアップされています。必要なポート構成のものを選択しやすいという点でも優れていると思いました」(池田氏)

 また、フルマネージスイッチであってもGUIで簡単に設定ができ、管理しやすい点も評価しているという。実際に、これまでネットギア製品に触れる経験のなかった坂西氏も、GUI操作はわかりやすく、すぐになじむことができたと話す。

 「特に今後、システム管理セクションに新たなメンバーが加わったときの教育コストを考えると、GUIで簡単に設定できるほうが便利です。万が一、機器に大きな障害が発生してゼロから設定しなおす必要に迫られても、設定のバックアップファイルとGUIがあれば迅速に復旧できると思います。『組織で利用するうえで扱いやすい製品』と言えるのではないでしょうか」(池田氏)

* * *

 池田氏は、4K映像を10Gネットワークで伝送できる「SDVoE」についても興味を持っていると語った。「たとえば、制作した4K映像を開発現場をはじめ社内の任意の場所でプレビューしたいといったときに、便利に使えるかもしれませんね」と、その用途について語る。

 「今回の導入プロジェクトでは、スイッチの製造や輸送がコロナ禍の影響を受け、納期の遅延や在庫のある代替モデルへの変更といったさまざまな問題が起こりました。そうした中でもネットギア様および販売代理店様には大変尽力いただき、無事に東京本社側のプロジェクトを完了できました。携わっていただいた数多くのスタッフの皆さんにはとても感謝しています」(池田氏)

(提供:ネットギア)

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