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松村太郎の「アップル時評」ニュース解説・戦略分析 第146回

アップルはiOS 15で「時間の支配権」をユーザーの手に取り戻させようとしている

2021年07月13日 09時00分更新

文● 松村太郎 編集● ASCII

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時間の支配権を取り戻せ

 アップルがiOS 15で解決しようとしているのは、時間の支配権を、秒単位も含めて、ユーザーの手に取り戻すこと。

 最近ではSlackのように、仕事の通知もたくさん届きます。しかしそれすら実は今自分が目の前でやっていたことを中断してコミュニケーションを取ることになります。それをやめよう、というのがアップルの主張です。

 この指摘は自虐的かもしれません。より多くの時間をスマートフォンに接してほしいと取り組んできたし、そのことをエコシステムにいる開発者にもアピールしてきたはずです。

 しかし今度は、デバイスとの時間を必要最低限に抑えていこうという流れは、あるいは開発者からすると、はしごを外される形になってしまうからです。この点にもアップルのねらいが透けます。

 ではアプリ開発者は、なぜ自分のアプリを必要以上に頻繁に開かせ、長い滞在時間を稼ごうとしているのかを考える必要があります。

 アプリがもしユーザーの仕事や生活の効率性を追究しているなら、アプリを使う時間はより短くなることが正しい進化です。またその点をアプリの価値とするなら、ユーザーはアプリの購入やサブスクリプションによって、その価値を手に入れようと行動します。

 しかし、長い滞在時間を稼ごうとするアプリが存在するのはおかしいと思いませんか? そうしたアプリには、滞在時間を延ばそうとする別のロジックが働いていると気づかなければなりません。

 たとえばユーザーに本当に必要なもの以外も買ってもらおうとしていたり、広告がビジネスモデルである場合、ユーザーの目的以上にアプリを開く時間を稼がなければならないのです。

 そしてアップルは、「ユーザーのためにならないアプリ滞在時間稼ぎをやめろ」と通告しているのです。

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