これからICTを導入しようとしている中小規模の介護施設・事業所にうってつけなツールがLINE WORKSだ。導入企業はすでに25万社以上という国内市場でトップシェアのビジネスチャット(※)で、介護業界でも導入する施設・事業所が増えていて、介護スタッフの募集や定着にも効果アリという導入施設からの声もある。今回はLINE WORKSでスマートフォンを無線インカムとして活用している事例を紹介しよう。
※富士キメラ総研「ソフトウェアビジネス新市場2020年版」調べ
職員間の情報共有、コミュニケーションの円滑化。
介護現場の情報通信機器として、常時装着し、通話ができるインカム(マイクロホンが取り付けられたイヤホン)の活用が進もうとしている。令和3年度介護報酬改定でも、特別養護老人ホームにおける夜間の人員配置基準を見守りセンサーやインカム等のICTを活用する場合に緩和するという見直しが行われた。インカムの有用性を国も認めたかたちだ。
先端技術の導入に積極的に取り組んできた社会福祉法人善光会(東京都大田区)では、通話アプリとしてLINE WORKSを使い、骨伝導ワイヤレスヘッドセットとスマートフォンをBluetoothで接続し、無線インカムとして活用している。導入の経緯や利用法などを、社会福祉法人善光会「フロース東糀谷」副施設長・谷口尚洋さんにうかがった。
骨伝導ヘッドセットの導入
──社会福祉法人善光会は積極的に介護現場への先端技術の導入を行ってきたそうですね。
先端技術を取り入れて介護の現場を変える、というビジョンのもと、ロボットスーツやセグウェイ、夜間の見守りセンサー、排泄予知デバイスなどをいち早く導入してきました。
──特養を運営する中、職員間のコミュニケーションについてどのような課題を感じていましたか。
特別養護老人ホーム「フロース東糀谷」はユニット型で、1フロアに4ユニットあります。日勤帯の職員は自分が担当するユニットに1人でいることが多く、2人がかりで移乗や移動をしたいとき、入浴などで人手がほしいとき、それまではPHSを使って連絡していたのですが、一人ずつしか連絡できませんから、断られたら、次の人に連絡しなければなりませんでした。その間、高齢者を待たせたり、目を離したりすれば、トラブルが起きるかもしれません。また、日勤リーダーが各職員に必要な情報を伝えるような場合も伝言ゲームになりがちで、確実に伝わったか確認しにくいことも課題と感じていました。さらにPHSは通話時に片手がふさがるため、いちいち介助作業を中断しなければならないというデメリットもありました。別の通信手段を検討しましたが、トランシーバーも片手がふさがります。そこで、インカムがよいのではないか、と。
──LINE WORKSを選ばれたポイントは。
ヘッドセットやアプリはそれぞれ10種類以上試し、装着性、音声の質の高さ、骨伝導のBluetoothイヤホンとの相性の良さからLINE WORKSを選択しました。
──どのように利用されていますか。
1フロアを担当する6人の介護職員がいつでも話せるように、Wi-Fiを使い、無料のグループ通話を常時つなげています。普段はミュートにしておき、話したいときだけミュートを外します。ヘッドセットとスマートフォンは個々の職員に支給しているのではなく、各フロアにセットを用意しておき、出勤してきた職員に渡すかたちにしています。導入直後は職員に慣れてもらうため、会話をするときは必ず利用するよう、声かけを心がけ、また、どのようなシーンで使うかマニュアルを作成したこともあってスムーズに導入できました。オペレーションを確立した現在、3か所の特養のほか、老健、障害者支援施設、デイサービスでも利用しています。
両手も耳もふさがらない
──LINE WORKSのインカムを利用して、どのような効果がありましたか。
骨伝導ヘッドセットは、装着したまま周囲の音を把握できます。介護職員は、高齢者の言葉をしっかり聴く必要があり、また目で観察するだけでなく、少しの物音を聞き分けることも大切ですから、耳をふさぐことがあってはなりません。また通話中、両手を使えるため、介助の手を止めなくていいのも利点です。目を離さず、両手を離さずにすめば、それだけ転倒や転落のリスクを防げます。
もちろん、迅速な情報共有の効果も大きいです。人手が足りないとき、「誰か手伝ってください」と簡単に全員にヘルプを呼べ、他の通信手段と比べて手の空いた職員を探す手間が格段にはぶけます。業務効率が上がれば、職員が直接的なサービスを提供する時間が長くなり、時間的なゆとりを持ちながら、高齢者のペースに合わせて向き合うことができます。
──情報共有のための時間の縮減ではどの程度の定量的な効果があったのでしょうか。
情報共有に要する時間を分析したところ、1日1人当たり15~20分、PHSの3分の2〜半分ほど削減できていました。また細かい情報を共有しやすいことからOJTの時間も3分の2程度になりました。生産性向上だけでなく、緊急時の対応にも威力を発揮します。容体が急変するなど、緊急時には複数の職員が救急搬送や家族へ連絡、痰吸引機などに手分けして当たりますが、このとき、リーダーが瞬時に複数の職員に指示を出し、スピーディに対応できれば命も救うことに直結します。
平時には、「こんなところに内出血があった」といった気づきを共有することもサービスの質の向上につながります。こうしたさまざまなメリットを実感できるため、職員の間から「一度使うと手放せない」という声が出ています。ICTの活用による介護現場の生産性向上が求められていますが、その中核となりうるものです。ぜひ利用が広まってほしいですね。
LINE WORKSのグループ通話は最大200人まで可能
LINE WORKSのライトプラン以上では、最大200人までのグループ通話ができる(フリープランでは、1:1での通話が可能)。無線LAN(Wi-Fi)環境で接続すれば、通話料金やデータ通信料金の心配もなく、ずっとつなぎっぱなしにしておける。
グループ通話を開始する
受信者の画面
通話中の操作と終了方法
次回は、LINE WORKSの翻訳機能を使った外国人スタッフとのコミュニケーションに活用した実例を紹介しよう。
LINE WORKSを提供しているワークスモバイルジャパンでは、介護・福祉事業者向けにLINE WORKSデモ体験セミナーを開催している。ぜひ参加してみよう。
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