創立記念品を地道に集めています
断捨離よりは何でも取っておく方が好きなんですけど、その割にはコレクションと呼べるものはほとんどないワタシ。唯一それっぽいのは、アメリカ海兵隊の創立記念日の記念品です。
毎年11月10日の創立記念日になると世界各地の海兵隊基地で「Birthday Ball」というパーティーが開かれます。これは海兵隊最大のイベントのひとつで、セレモニーやダンスパーティー、ケーキカット、食事会などを催します。
その出席者にお土産として渡されるのがワタシが集めている記念品。もちろんそんなパーティーに呼ばれるはずもないので、余剰品や持ち主が手放した物を買い集めているだけなんですけれども。
この海兵隊の記念品紹介は2年ぶり3回目になります(第171回「アメリカ海兵隊の創立記念グッズが増えました!」)。持っている中で一番古いのは1998年の第223回の時のクリスタルガラスの置物で、とりあえずそれ以降の物を集めているんですが、抜けているのがあと6年分と減ってきたこともあってすっかり収集ペースが落ちてきてしまいました。今回4品ゲットしたんであと2つなんですけど、これがなかなか見つからず。コンプリートしたら1997年以前の物も集めたいと思っているのに、いつになることやら……。
2019年は金属製のマグカップ
アイテムのひとつ目はマグカップ。これまでに入手した記念品は置物やペーパーウエイト、メダル、コインが2/3を占めているんですが、カップとタンブラーもこれで4個目となかなかの頻度です。
2019年の第244回で配られた物で、素材は金属。黄色みを抑えた銅のような金色をしています。一瞬銅製かと思ったんですけど、内側は銀色なんですよね。試しに磁石を近づけてみたらくっついたので、ステンレス製かな。
右手で持った時に前面に来るのは、おなじみの海兵隊マークです。周囲に書かれている文字は「244TH MARINE CORPS BIRTHDAY★OKINAWA JAPAN」とシンプルなものでした。マークも文字もくっきりしているので、レーザー加工じゃないかと思います。
海兵隊っぽくない謎の建物
今回、注目なのは裏側。何やら立体レリーフが貼られています。
何かの建物が大きく描かれ、右奥には船が浮かんでいるのが見えます。初めて見る図柄で、およそ海兵隊っぽくないんですが一体何なんでしょう。
ヒントになりそうなのは周囲とイラスト内に書かれている文字です。まず周囲に書かれている文字。上には「BIRTHPLACE OF THE MARINES」と書かれています。
これって海兵隊の発祥地っていうことですよね。で、そう書いてあったら昔の海兵隊の施設なのかな? と思うじゃないですか。建物の下にある「NOVEMBER 10 1775」は海兵隊の創立日ですし。でも全然違いました。下にある「TUN TAVERN」という単語を調べてみたら、思いも寄らない建物だったんです。
フィラデルフィアの酒場でした
TUN TAVERNというのは店名で、tavernは酒屋、tunは古英語でビール樽という意味。なんとこの建物、酒場でした。そういうニックネームがついた海兵隊施設などではなく、正真正銘、民間人が経営していた酒場です。
オープンは1686年と古く、当時のことだから宿屋も兼ねていたんじゃないかと思います。ペンシルベニア州フィラデルフィアにあったのだとかで、そういえば確かに建物の下にPHILADELPHIAって書かれています。
でもまさか酒場が海兵隊発祥の地っていうことはないし、いったい酒場が海兵隊と何の関係が? とさらに調べてみるとなんとビックリ。ここが本当に米海兵隊発祥の地だったのです。
前身の大陸海兵隊のスタート地点
1775年11月10日、アメリカ独立戦争が始まって間もないころ、米海兵隊の前身となる大陸海兵隊(Continental Marines)という組織が作られました。
でも当時の軍隊である大陸軍が兵士を取られるのを嫌がり、組織ができても人がいません。じゃあもう新規募集するしかないよね、ということでその任務を任されたのが大陸海兵隊士官であり後に初の総司令官となったサミュエル・ニコラスという人物。2個大隊を編成するよう命じられ、TUN TAVERNのオーナーのロバート・ムランをチーフリクルーターに据えて、店内で隊員募集を始めたのだとか。これが海兵隊の第一歩であり、まさに“birthplace”。海兵隊発祥の地と呼ばれるのも納得です。
それはそうとして、なんで酒場? とクエスチョンマークが浮かんでしまいますが、ここはそれまでにも多くの組織や団体のミーティングが開かれたり、集会所として使われていることで有名な店だそうで、海兵隊もそれにならったみたいです。冷たいビールと目新しい仕事に釣られた人も多かったかもしれないですね。
独立前は13植民地
ところで、なぜこの時期に大陸海兵隊が作られたのでしょう。考えてみたら独立戦争自体、イギリスから独立するために戦ったんだよなという程度しか知りません。中学のころは学校が荒れてて授業が進まず、高校の時は理系クラスだったため日本史をちょっとだけ学んだぐらいで、恥ずかしながら世界史は初耳なことだらけなのです。
あ、でもアメリカの最初の州が13州というのは知っています。星条旗のストライプの数で、星が現在の週の数ですよね。この13州は北アメリカの東海岸にあり、元々はイギリスの植民地。ちょうど日本と同じぐらいの縦長のエリアですが、ひとつの大きな植民地ではなく13のエリアに分かれていて、それぞれの自治がそれなりに認められていました。ここまでは何となく知っています。
<13植民地のエリアと名称>
北部
マサチューセッツ、ニューハンプシャー、ロードアイランド、コネティカット
中部
ニューヨーク、ペンシルベニア、ニュージャージー、デラウェア
南部
メリーランド、バージニア、ノースカロライナ、サウスカロライナ、ジョージア
最初に建設されたのはバージニア植民地。1607年のことでした。最後は1732年のジョージア。このあたりからもう全然知りません。最初の入植から125年もかけて作られていったんですね。
13の植民地は大きく3つに分かれていて、北部は商工業、南部は大規模農業、中部は小麦の輸出や商業が発展したのだとか。ほかにも北部はイギリスでの弾圧から逃れてきたピューリタンが多かったため自由を重視していたとか、南部は大地主や貴族が封建的な体制を取り、次第に奴隷を使うようになっていったっていう違いもあって、風土や経済活動は結構異なっていたみたいです。
アメリカ独立戦争の始まり
そんな13植民地がイギリスからの独立を求めて立ち上がったのが1775年。フレンチ=インディアン戦争で勝利したものの財政難になったイギリスが植民地への課税を強めてギューギューと搾り取ろうとしたり、東インド会社に植民地で紅茶を免税の激安価格で売る許可を与える茶法なんていう法律を作ったりしたもんだから、植民地の人たちはいい加減ブチ切れ。
マサチューセッツのボストン港に停泊していた東インド会社の船を襲撃して積荷のお茶をポイポイ投げ捨てるボストン茶会事件を起こしたものの、それに対してボストン港の閉鎖にマサチューセッツ植民地の自治権剥奪、さらには損害賠償を求められたりしたため、もう我慢ならんと対立が深まります。
そしてほかの植民地もそうだそうだと結束し、1775年4月19日にボストン北西のレキシントンとコンコードでイギリス軍vs植民地民兵隊の武力衝突が勃発しました。アメリカ独立戦争の始まりです。
対英戦のために大陸海兵隊が発足
そして開戦から7ヵ月ほど経った1775年11月10日、イギリス軍の海兵隊にならって大陸海兵隊が作られました。この大陸海兵隊を組織し、サミュエル・ニコラスにTUN TAVERNで隊員募集をさせたのは第2次大陸会議という会議体。13植民地の代表で構成され、第1次は1774年に開催、第2次は1775年5月から1781年3月まで開催されています。
このとき定められた大陸海兵隊に関する法律では、イギリスとの戦争に従軍できる腕の良い者を採用することとか、大陸会議により解散されるまでの間を期限とするとなっていたそうです。期限付きだったんですね。完全に独立戦争の対イギリス戦のための組織っていう感じです。実際その通りで、大陸海兵隊は1783年の終戦と時を同じくして解散となりました。
ちなみにTUN TAVERNは残念ながらアメリカ独立戦争の最中の1781年に全焼してしまったそうです。
海兵隊の再結成
そんな海兵隊が再結成されたのは1798年7月11日のこと。フランス革命によりフランス王国から新政府になったフランスに対抗する必要が出てきたためです。
フランスはアメリカ独立戦争でアメリカの味方をしたのに、アメリカときたら、いざ独立したらフランスと敵対しているイギリスと貿易を始めたり、イギリスに敵対する国(つまりフランス)の船には補給しません、独立戦争時の借金はフランス王国に対するもので新政府には払いません、みたいなことを言い出したりしました。
これにフランスが激怒。1798年から1800年にかけて疑似戦争という戦いが起こったため、その対抗措置として海軍と共に米海兵隊が再創立されたのです。
今度はもうアメリカになっているので、名称はアメリカ海兵隊(United States Marine Corps - USMC)となりました。一旦解散して間がちょっと空いているので当初はこの新しい海兵隊の創立日である7月11日が創立記念日とされていましたが、1921年に11月10日に改定。ルーツは大陸海兵隊にあるということですね。
1921年11月1日に発行されたMARINE CORPS ORDERS No. 47(Series 1921)ー海兵隊命令1921年第47号ーで、11月10日を創立日とすることや、それを記念して祝うのがふさわしいときちんと定められています。以前は簡素な式典だけが開かれていたそうですが、これを機にもうちょっと祝おうよということになり、1925年から毎年開催されているのがBirthday Ballです。
ちょっと長くなってしまったので今回はここまで。それにしても海兵隊の出だしをちらっと調べるだけでこんなに色々出てくるんだから、歴史を勉強するのって大変ですね。これで1/1000ぐらいは説明できてるのかなぁ。
この連載の記事
-
最終回
デジタル
本物の元素を1cm角キューブにした”標本セット”を買いました -
第352回
デジタル
全9種類! ミリタリー風「蚊取り線香」ホルダーでどんな線香が使えるのか試してみました -
第351回
デジタル
ミリタリーテイスト満点の「蚊取り線香」ホルダー、こんなモノまでタクティカル! -
第350回
デジタル
「スキンヘッド専用シェーバー」は今年買ってよかったもの大賞、金賞候補です -
第349回
デジタル
スキンヘッド専用シェーバーで頭ツルツル -
第348回
デジタル
靴底補修剤でカカトに空いた穴を直してみました -
第347回
デジタル
ダイヤルを回すだけでフィットするシューズ「DICTATOR」を衝動買い! -
第346回
デジタル
ハンヴィーのシート交換で若干のトラブルが! -
第345回
デジタル
未使用新品&中古美品のハンヴィー用シートをまとめ買い! -
第344回
デジタル
Beatsのヘッドホンが手放せなくなりました -
第343回
デジタル
そっぽを向いていたハンヴィーのタイヤが直りました! - この連載の一覧へ