楽天モバイルは、18日に開催された「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の「移動通信システム等制度WG(第4回)」に提出した意見、およびその背景についてメディア向けに説明会を開催した。
4社の中で唯一プラチナバンドを持たない楽天モバイル
屋内や地下など、エリア構築で不利なのは確か
同社は4Gで1.7GHz帯、5Gで3.7GHz帯/28GHz帯(+東名阪以外で1.7GHz帯)で周波数割当を受けて、携帯電話サービスを開始している。一方で先行するドコモ/KDDI/ソフトバンクと異なり、ビルの影や地下空間、屋内など、電波の届きやすさでキーとなるプラチナバンドについては割当は無い状態となっている。
なお、同社の契約数は現状で約410万。MHzあたりの契約数では、先行する3キャリアに比べると、ずっと少ない状態ではあるものの、このまま順調に契約数を伸ばせば2023年に同程度に追いつくことも考えられるほか、楽天ユーザーの通信量の多さも含めると、先行キャリアにクロスするタイミングは早くなるため、周波数割当に要する時間を考えると早めのアクションが必要としている。
実質的にはほぼ固定化されている周波数の割当
再配分の枠組みが議論されている最中
一方で、今回の「移動通信システム等制度WG」では、「周波数再配分の枠組み」について議論が進められている。現在の携帯電話事業者への周波数割当では、開設計画を提出して審査をクリアした事業者に対し、5~10年の認定期間が適用され、その後も5年ごとに再免許という形で更新されていくことで、実質的には固定的な状況となっている(既存事業者側はそれを前提にした有効利用や投資の計画を立てていると主張する)。
8月に予定されている「デジタル変革時代の電波政策懇談会」の取りまとめで、新規事業者に対する周波数再分配の枠組みが盛り込まることになれば、歴史的な転換点とも言え、ここにプラチナバンドの再配分について具体的な方向性を盛り込んでほしいというのが楽天モバイルとしての考えとなる。
まもなく終了する3キャリアの3Gサービス
プラチナバンドの再配分には適したタイミングという主張
上記の背景に基づく、楽天モバイルの意見を簡単にまとめると以下の5点となる。
・先行キャリアとの競争上、「どこでもつながる」を実現するにはプラチナバンドの有無は重要
・3Gサービス終了のタイミングがプラチナバンドの再配分に適している
・カバレッジ対策に必要なプラチナバンドは公平に配分されるべき
・電波政策懇談会の報告書にプラチナバンド再配分についても具体的に盛り込む必要がある
・再配分時に要するコストや期間は、事業者間の協議だけでなく、中立的な評価・検討ができる枠組みが必要
ドコモは2026年3月、KDDIは2022年3月、ソフトバンクは2024年1月にそれぞれ3Gサービスを終了する。いずれも800MHz帯/900MHz帯で上下5MHz幅ずつで10~20年にわたり、3Gサービスを提供しており、すでに投資コストが回収されているのではないか、またこれらの周波数を再配分の対象とすることで、利用者や各キャリアの影響は小さく(その後も3キャリアは700MHz帯と800MHz帯/900MHz帯でそれぞれ40MHzずつの周波数を持つ)、プラチナバンドの公平な配分が可能であると同社は主張する。
また再配分が決定した場合、移行作業にともなう猶予期間が発生するが、再配分を受けた事業者がそのコストを負担することで、サービス開始時期を前倒しすることがこれまでも実施されている。これまでの移行では従来使っていたのが携帯電話事業者ではなかったため(自衛隊や放送局など)、協議に大きな支障は生じなかったが、競合関係にある企業間ではそれも難しくなるため、仲裁する枠組みの必要性を訴えているわけだ。
3大キャリア側も反論をしている
「すでに大きな投資をしている」「再編の工事に時間を要する」
楽天モバイルからは、こうした同社の考えが前述した8月の報告書に盛り込まれ、2023年4月からは移行期間が始まるという希望が語られたが、一方で3大キャリア側も「800MHz帯は、約7年の歳月と約5000億円の経済負担を伴いながら大きな周波数再編を行っている」(KDDI)、「再編に伴う、変更工事・装置取り換えは、現状進めている5Gエリアの整備等と並行して実施していくこととなり、工事稼働等を考慮して、10年程度かかると想定している」(NTTドコモ)、「割当て周波数が他社より少なく、(当初はプラチナバンドが無く)不利な状況の中で地道なエリア整備によりネットワーク・契約者数を拡大してきた」(ソフトバンク)といった反論をしており、ワーキンググループ内で議論が進められている状況となっている。