3月10日、DRAMやNANDフラッシュのトップベンダーで、SSD市場御三家の一角を成すSamsungが、初のDRAMバッファレスとなるPCI Express 3.0対応NVMe M.2 SSDの「980」を発表した。
同社が“Value-NVMe”と呼ぶクラスで、M.2 SSD激戦区となるエントリーモデルで250GBモデル(MZ-V8V250B/IT)、500GBモデル(MZ-V8V500B/IT)、1TB(MZ-V8V1T0B/IT)をラインアップ。日本サムスンの国内代理店ITGマーケティングより、3月12日より発売予定になっている。
想定売価は、低コストPC自作のメインストレージにベストな500GBモデルで7980円、データ保存や写真、動画の保存も余裕の1TBモデルで1万4480円と、なかなか魅力ある価格帯になっている。
とくに1TBモデルは注目で、同じDRAMレスで低コストPC自作の定番M.2 SSDのひとつであるWestern Digital「WD Blue SN550 NVMe」のパフォーマンスを大きく上回るリード3500MB/sec、ライト3000MB/secというスペックを備えている。
今回はそんな1TBモデル「MZ-V8V1T0B/IT」を入手できたので、各種ベンチマークでその実力を見ていきたい。
Samsung初のDRAMレスNVMe M.2 SSDの「980」シリーズだが、NVM Express 1.2で仕様に追加されたメインメモリーの一部を間借りして、外部バッファとして使用する「HMB(Host Memory Buffer)」を利用し、コストダウンを図りつつ、パフォーマンスを維持している。この「HMB」採用の製品は珍しくなく、2019年ごろからエントリーNVMe M.2 SSDの多くに採用されている機能なので、ある意味、不安なく使えると言える。
最大リード3500MB/sec、ライト3000MB/secのパフォーマンスを発揮する「980」シリーズのコントローラーは、珍しく非公開になっているが「Samsung in-house Controller」と、これまでと同じくSamsung製のようだ。
NANDフラッシュは、他社で言うところのTLC NANDフラッシュになる「Samsung V-NAND 3bit MLC」を採用。そのほか150万時間のMTBF(平均故障時間)や、最大600TBのTBW(総書込容量)、5年保証と耐久性や保証面は、メインストリームの「970 EVO PLUS」や、7GB/secを実現する次世代ハイクラス「980 PRO」と同じになっている。
| Samsung SSD 980のラインアップと主要スペック | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 型番 | MZ-V8V250B/IT | MZ-V8V500B/IT | MZ-V8V1T0B/IT | |||
| 容量 | 250GB | 500GB | 1TB | |||
| フォームファクター | M.2 Type2280 | |||||
| NANDフラッシュ | Samsung V-NAND 3bit MLC | |||||
| コントローラー | Samsung in-house Controller | |||||
| DRAMキャッシュメモリー | ー | |||||
| インターフェース | PCIe Gen3.0×4、NVMe1.4 | |||||
| シーケンシャルリード | 2900MB/sec | 3100MB/sec | 3500MB/sec | |||
| シーケンシャルライト | 1300MB/sec | 2600MB/sec | 3000MB/sec | |||
| ランダムリード(QD1/T1) | 1万7000IOPS | 1万7000IOPS | 1万7000IOPS | |||
| ランダムライト(QD1/T1) | 5万3000IOPS | 5万4000IOPS | 5万4000IOPS | |||
| ランダムリード(QD32/T16) | 23万IOPS | 40万IOPS | 50万IOPS | |||
| ランダムライト(QD32/T16) | 32万IOPS | 47万IOPS | 48万IOPS | |||
| MTBF(平均故障間隔) | 150万時間 | |||||
| TBW(総書込容量) | 150TB | 300TB | 600TB | |||
| ハードウェア暗号化 | AES256ビット暗号化、TCG Opal 2.0準拠、IEEE-1667準拠 | |||||
| 保証期間 | 5年間 | |||||
| 想定売価(税込) | 5480円 | 7980円 | 1万4480円 | |||
そのほか、Samsung製SSDのSLCキャッシュ機能である「Intelligent TurboWrite 2.0」も搭載している。ただ、これまではTurboWriteの割り当て容量や、容量を超えた際のリード・ライト性能を公表していたが、「980」では総容量のみの公開になっている。
TurboWriteの容量は250GBモデルで45GB、500GBモデルで122GB、1TBで160GBになっており、500GBと1TBモデルは最上位の「980 PRO」よりも容量が割り当てられている。
| Intelligent TurboWriteの仕様 | ||||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 250GB | 500GB | 1TB | ||||
| TurboWrite総容量 | 45GB | 122GB | 160GB | |||
1TBモデルも2チップ構成の「980」を眺める
まずは外観から「980」をチェックしていこう。構成はコントローラーとNANDフラッシュメモリーの2チップとシンプル。基板裏面には熱伝導性に優れる銅箔を積層したラベルが貼られており、熱の放熱性を高めている。この辺はDRAMレスのエントリークラスと言え、抜かりなしといったところだ。
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