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「『現状維持』は退化」、顧客ライフサイクル全体への支援や新パートナー制度を打ち出す

「シスコ自身のビジネスモデル変革も重点戦略」シスコ中川新社長

2021年02月25日 07時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 シスコシステムズ日本法人(シスコジャパン)は2021年2月24日、今年1月社長に就任した中川いち朗氏が出席する記者説明会を開催した。中川氏はシスコジャパンの重点戦略として、日本企業や社会/国全体のデジタル化だけでなく「シスコ自身のビジネスモデル変革」にも取り組むと強調。製品/サービスの提供だけにとどまらない包括的支援を顧客に提供する「カスタマーライフサイクル アプローチ」や、十数年ぶりの刷新となる新たなパートナープログラムなどを紹介した。

中川氏が示したシスコジャパンの重点戦略。顧客企業や社会・国のデジタル変革と同時に「シスコジャパンのビジネスモデル

シスコシステムズ 代表執行役員社長の中川いち朗氏、前社長でシスコシステムズAPJCプレジデントに就任したデイヴ・ウェスト(Dave West)氏

「コロナ禍を好機ととらえ変革を」4つの重点事業戦略を紹介

 中川氏は、前職の日本IBMを経て2014年にシスコジャパンに入社。まず専務執行役員として金融/製造/流通/ITなど大手顧客を担当するエンタープライズ事業を統括し、その後、2018年からは副社長として情報通信産業事業(サービスプロバイダー事業)を統括してきた。

 前社長で今回APJC(アジア太平洋・日本・中国)市場のプレジデントに就任したデイヴ・ウェスト(Dave West)氏は中川氏について、「シスコ入社以後、事業成長や収益性の改善、次世代人材の育成など、あらゆる領域においてすばらしい結果を出してきた。顧客のデジタルジャーニーやパートナーとの良好な関係、そしてシスコジャパンチームの成功に強い情熱と信念を持っている」と紹介する。

中川氏の略歴。シスコではエンタープライズ事業、サービスプロバイダー事業を率いてきた

 その中川氏はまず、シスコでは「すべての人に開かれた未来を創る」というパーパス(企業としての存在意義)を掲げていると紹介する。そのうえで、企業のクラウドシフトやデジタルトランスフォーメーション(DX)進展など、コロナ禍をきっかけに“ニューノーマル”へと進むポジティブな動きも出ていることを好機と見て、「デジタルで、日本のすべての人に開かれた未来を創る」ことを目指すと語る。

 それを実現するためとして、中川氏は「日本企業のデジタル変革を支援」「日本社会の デジタイゼーションに貢献」「お客様のライフサイクルすべてを支援」「新たなパートナーモデルの実装」という、4つの事業戦略を挙げた。

 「日本企業のデジタル変革を支援」については、特に“新しい働き方”への支援を取り上げた。コロナ禍で生じたワークスタイルの変化は一過性のものではなく、今後はオフィス/リモート/在宅での勤務を組み合わせるハイブリッド型のワークスタイルがニューノーマルになる。その実現を支援するため、シスコでは「Cisco DNA(Digital Network Architecture)」フレームワークをベースに、マルチアクセス/マルチクラウド/SD-WAN/ネットワーク運用自動化/ゼロトラストセキュリティのソリューション群を提供する。

 次の「日本社会のデジタイゼーションに貢献」は、先日発表した日本での「Country Digitalization Acceleration(CDA)」プログラム展開をあらためて紹介した。

シスコ自身のビジネスモデル変革も重点戦略として強調

 上記2つとは異なり、残る2つの事業戦略は「シスコ自身のビジネスモデル変革」に向けたものだ。まず「お客様のライフサイクルすべてを支援」では、導入前から導入後までの包括的な支援により、製品/サービスの導入価値を最大化するカスタマーライフサイクル アプローチを紹介した。

 「従来のシスコは、主に(製品/サービスの)需要喚起から購入、導入までに注力してきた。しかし、デジタル化が進展する中で、顧客企業では最新テクノロジーをいち早く導入、活用する必要が生じており、導入後の定着や活用の段階まで支援を要望されるケースが非常に増えている。そこで今後は、導入後の活用や最適化など、ビジネスへの貢献に軸足を置いていく」「このカスタマーライフサイクル アプローチこそが、シスコの新たなビジネスモデル、新たな変革だ」

 具体的には、近年進めてきた製品のソフトウェア化やクラウドサービス化、リカーリングビジネスモデルの採用に加えて、導入後の利用や定着、活用、最適化まで、システムライフサイクル全体にわたって顧客支援を行うカスタマーサクセスチームを用意した。さらに今期からはソフトウェア・サービス営業部門を設立し、ソフトウェアのエンタープライズ契約(Enterprise Agreement)によるインフラ管理簡素化、抜本的なコスト削減、コンサルティングサービスなどを提供すると述べた。

「カスタマーライフサイクル アプローチ」。製品/サービスの提供(導入)段階にとどまらず、定着や活用、最適化までを支援していくとする

 もう1つの「新たなパートナーモデルの実装」においては、「十数年ぶりに刷新した」(中川氏)という新たなパートナープログラム制度を紹介した。従来は、シスコとの取引額に応じてGold/Premier/Silverという3階層でパートナー認定するものだったが、今回はここに「パートナーの役割」という新たな軸を加え、幅を広げて「顧客のライフサイクル全般への価値創造を推進していく」という。

 具体的には、従来型のプロダクト販売や構築、運用を行う「Integrator」パートナーに加えて、マネージド型やas-a-Serviceモデルでのシスコ製品提供を担う「Provider」パートナー、シスコ製品のプログラマビリティを生かして付加価値を創造する「Developer」パートナー、コンサルティングなど経営戦略まで踏み込んだ顧客支援を行う「Advisor」パートナーという、4つのカテゴリーで体系化した。

 「既存のパートナーはほとんどがIntegratorに位置づけられるが、今後、その幅を(ほかのカテゴリへも)拡大していただきたいと考えている。特に現在、顧客企業のニーズはクラウド、マネージドサービスへと移行しており、パートナーがシスコのテクノロジーを活用してサービスを構築し、エンドユーザーに提供するというモデルが今後のパートナー協業の1つの核になる。新たにProviderパートナーを設けて、本格的に稼働させていきたい」

 またウェスト氏は、この新しいパートナープログラムではパートナー自身が「どのような役割を担いたいのか」を選択することができると説明。より柔軟なかたちで、パートナーがこれまでよりも独自色を持ったパートナー活動ができると述べた。

パートナービジネスモデルそのものの変革も視野に入れ、4つのカテゴリを設けた新しいパートナープログラムを発表

 まとめの言葉として中川氏は、社長就任後にあらためて社員に伝えたのは「顧客の成功こそが私たちの成功」という言葉だと述べたうえで、シスコジャパンのビジネス変革に本腰を入れて取り組む姿勢をあらためて強調した。

 「正直、これまでのシスコはインフラの会社というイメージが強かったと思う。しかし、Webexに代表されるようなビジネスソリューション、ソフトウェア、サービスビジネスなど、大きくビジネスポートフォリオと事業を変革してきている」「わたしは『現状維持は退化』だと思っている。シスコも例外ではない。これまでの成功にあぐらをかくことなく、常に変革していかなければならない」

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