バッテリーを交換したものの
こないだミサイル発射スイッチみたいなスイッチカバーを取り付けたハンヴィーですが、もうひとつ作業がありました。電圧計のチェックです。
【スイッチ取り付け第1回】
「263回 ハンヴィーに付いていたスイッチをミリタリーテイストにしたい」
【スイッチ取り付け第2回】
「264回 スイッチをハンヴィーに流用するため航空機のパネルを分解しました」
【スイッチ取り付け第3回】
「265回 航空機のコックピットのスイッチを米軍車両のハンヴィーに取り付けます」
普通のクルマの電装系が12Vなのに対し、ハンヴィーをはじめ多くの軍用車は24V。車種や用途によっては24Vバッテリーを搭載していますが、ハンヴィーでは12Vのバッテリーを2個直列につないで24Vにしています。
3年ほど前に電圧計の表示が低いことに気づき、その時にまず疑ったのはバッテリーでした。乗らずにいたら上がり気味になってしまったため充電して使い続けていたんですけど、一度そうなると寿命が短くなったりするんですよね。
そうでなくても少なくとも3年半以上使っていて交換時期だったので、まずはバッテリーを交換してみたんです(「129回 米軍車両ハンヴィーのバッテリーを交換してみました」)。
が、針の位置はやっぱり低いまま。直ったりはしませんでした。
電圧計がアヤしい
でも考えてみたら変わらないのは当然の話です。エンジンには発電をするオルタネーターと電圧を制御するレギュレーターが付いていて、走行中にバッテリーに充電するようになっています。
充電するにはバッテリーの電圧を上回る必要があり、ハンヴィーの正常値は27〜29V。エンジンが動いている時はこの電圧が電装系にかかるため、電圧計に表示されるのはこの数値なんですよね。バッテリーの電圧が表示されているわけではないので、バッテリーを交換したって変化があるわけありません。
となると疑わしいのはオルタネーターやレギュレーター、または電圧計そのものです。
まず疑ったのは充電系。で、バッテリーを交換した時についでにチェックしてもらったんですが、結果は正常とのことでした。発電能力は十分と。こうなると俄然アヤしさを増すのが電圧計です。正しく動いているのやらどうなのやら。
そもそも正確さに欠けるハンヴィーの電圧計
これ、その時は今すぐにでも確認しようって思っていたんですよね。それがなんということでしょう。月日が経つのは早いもので、あっという間に3年が過ぎてしまいました。
でもずっと気にはなっているんで、スイッチカバーを付けた時に作業をするついでに調べてみようと思い立った次第です。
電圧計が正しく動作しているかどうかは、テスターで測った電圧と合っているかを確認すればいいんですが、ここでひとつ大きな問題が。
ハンヴィーの電圧計は、範囲が色分けされているだけで具体的な数値がわからないんです。なんという大雑把なつくりなんでしょう。
「とにかく緑の範囲に入っていればオーケー」というのはパッと見てわかるので便利な反面、今回のようにメーターそのものの動作チェックをしたい場合は困ってしまいます。
メンテナンスマニュアルにも、どの色が何ボルトから何ボルトまでなのかは書かれていません。これでは実際の電圧がわかったところで、メーターが正しいのかどうか判断ができません。
ミルスペックを見つけました
頼みの綱のマニュアルがそれじゃチェックのしようがないわけですが、探してみたらいい資料が見つかりました。軍のMiltary Standard(MS)、通称ミルスペックの仕様書です。
この電圧計の仕様書番号はMS24532で、初めて定義された時から何度か改正され、現在のリビジョンはJのようです。1994年に若干の設計変更があり、MS24532-2と枝番が付いています。
色分けと電圧の関係は以下のとおりでした。
赤:18-22V
黄:22-26V
緑:26-30V
赤:30-34V
緑のエリアには小さい線が描かれていて、何だろう? とずっと思っていたんですけど、仕様書によるとこの線は28.5Vとのこと。エンジン回転が安定したら針がだいたいこのあたりを指すようになっているということのようです。
ちなみにメーターを販売しているショップのサイトでは表示範囲は19-32Vで短い線は27.6Vとなっていることが多く、仕様書とは違っています。どこから出た数字なのかはわかりませんが、仕様書が間違っているなんてそんなはずはありません。ということで、仕様書に則ってチェックを進めます。
冷えている時の始動時は表示が低くなる
ところで、クルマの電圧計はエンジンをかけていない状態の時はバッテリーの電圧を表示し、前述のとおりエンジンが動いている時はオルタネーターが発電する電圧(正確にはレギュレーターの出力電圧)を表示します。
ハンヴィーの場合、エンジンをかけず何も電力を使っていない状態では針が黄色いエリアを指し、回転中は緑色のエリアを指します。
ではもうひとつ、ハンヴィーのエンジン始動時はどうなるのが正しいでしょう。
正解は、エンジンが冷えている時はめっちゃ低くなる、です。
ハンヴィーのエンジンはディーゼルで、ガソリンエンジンとは着火の仕組みが異なります。ガソリンエンジンが霧状になったガソリンと空気が混ざった混合気に点火プラグで着火するのに対し、ディーゼルエンジンは圧縮されて熱くなった空気に霧状の軽油を噴射することで自然着火させています。
そのためエンジンが冷えていると圧縮しただけでは着火温度まで上がりきらないので、グロープラグというヒーターを使ってあらかじめ内部を温めておく必要があるんですよね。このとき発熱に電力を使うので、グロープラグがオンになっている間は電圧計の針はかなり低いところを指すことになります。
電圧のパターンは3種類
というわけで、エンジン停止中の電圧の状態はグロープラグがオンの場合とオフの場合の2種類あるため、ハンヴィーの場合、エンジン動作中を含めて合計3種類あることになります。
実際、交換前の電圧計の動きは以下のとおりでした。
グロープラグがオンの間は針が完全に赤いエリアまで落ちています。これがひとつ目の状態。
グロープラグは数秒で自動的にオフになります。すると電圧表示はバッテリー出力の値になり、針は緑と黄色の境目あたりに。ほぼ真ん中ですね。これが2つ目の状態です。
最後はエンジン動作中の電圧表示。
エンジンが始動すると電圧計はオルタネーターの出力電圧を示し、針は緑のエリアに移動します。ただ、うちのハンヴィーの場合は緑エリアには入るものの、短い線どころか半分にも届きません。かなり低い感じです。
また写真では1/3あたりを指していますが、始動直後は1/4だったりもっとギリギリだったりして、さらに低めに。そこからじわじわと針が上がって、なんとか1/3ぐらいになるというような動きをします。
あれ?もしかして正しい?
ただ、色のエリアをみる限り、それほど間違っていない気もするんですよね。電圧計が色分けで表示するようになっているため、マニュアルの説明も色だけで説明されています。エンジン停止中は黄色、動作中は緑と、ただそれだけ。動作中の表示は緑エリアの短い線まで届かず、低いですが、それ以外は正常範囲なのではないかと。
色のエリアを仕様書で判明した電圧に直すと、正常な電圧はエンジン停止中が22-26V、動作中は26-30Vで、基本は28.5Vということになります。
はたして実際の電圧はどうなのか。次回はテスターで電圧を測ってみたいと思います。
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