中国の家電メーカー、ハイセンスから電子ペーパーディスプレーを搭載するスマートフォン「A7」「A7 cc」が発表されました。どちらも5Gに対応しますが、クアルコムやMediaTekのチップセットは搭載しません。ハイセンスのスマートフォンは他社とは異なる方向に進もうとしています。
A7は6.7型(1800x900ドット)のモノクロ電子ペーパーディスプレーを搭載。メモリー6GBにストレージ128GBを搭載。バッテリー容量は4770mAhです。カメラは前後ともシングルで画素数の詳細は公開されていません。このスマートフォンでカメラ機能を重視する人はあまりいないだろう、というのんびりした考えなのかもしれません。
一方、A7 CCはカラー電子ペーパーディスプレーを採用します。こちらは2021年2月発売予定なのでカラー電子ペーパーの解像度などもまだ不明。基本スペックはモノクロのA7と同等のようです。どちらもチップセットは中国UNISOC(旧Spreadtrum)のT7510を採用。5Gにも対応しています。
ハイセンスは片面がカラー(有機EL/液晶)、裏面がモノクロ電子ペーパーという2画面スマートフォンを2017年から毎年出していましたが、2019年には電子ペーパーだけを採用したモノクロ表示端末「A5」を投入。2020年にはカラー電子ペーパーだけを搭載する「A5 Pro」「A5C」を発売しました。他社が高画質カメラを搭載するスマートフォンや、コスパに優れた端末を次々と投入する中、電子ペーパーにこだわったスマートフォンを次々と投入しています。
一方、5Gスマートフォンもハイセンスは独自路線を貫きます。2020年には5Gスマートフォンを「F50」「F50+」「T50」と3機種発売しました。価格は2000元(約3万2000円)以下と安く、中国で流行りの低価格5Gスマートフォンの仲間になります。この3機種もチップセットはUNISOCのT7510を採用しています。
2020年12月現在、F50+は1699元(約2万6000円)、T50は1599元(約2万7000円)で販売されています。他社の同価格帯の5Gスマートフォンを見ると、チップセットはMediaTekのDimensity 800または820を使っているケースが多く、さらに下の1000元(約1万5000円)以下の5GスマートフォンもDimensity 720が採用されています。
クアルコムもSnapdragon 750Gや同690をリリースしているものの、低価格5G機を次々に出す中国メーカーにはあまり採用されていません。
これに対してハイセンスは自社の5GスマートフォンすべてがUNISOCのチップセットを採用しています。おそらく両者の間で大きな取引が行なわれているのでしょう。UNISOCの5Gチップセットの実力は未知数ですが、4Gでは実績あるメーカーだけにスマートフォンの動作は問題ないと思われます。
また、ハイセンスは5Gスマートフォンを中国以外で販売する予定はないようなので、UNISOCの5Gモデムの海外キャリアでの動作を保証する必要もありません。2019年から各国で5Gサービスが始まっていますが、自国以外で購入した5Gスマートフォンが自国の5G電波をつかまない例も多くあります。しかし、ハイセンスは中国市場以外を切り離すことで低価格な中国国産の5Gチップセットを集中的に選択しているわけです。
とはいえ、A7やA7 CCの大型電子ペーパーディスプレーの使い勝手は気になります。中国でこの2機種が人気となれば、中国外から販売を要望する声が高まるでしょう。その時は恐らくクアルコムかMediaTekの4Gチップセットを搭載し、低価格な電子ペーパースマートフォンとしてグローバル展開すると考えられます。海外ではアマゾンの「Kindle」などすでに低価格な電子ペーパータブレットが多数存在しますから、5Gには対応させず4Gモデルとして販売するのではないでしょうか。2021年はハイセンスのスマートフォンがちょっと面白い存在になりそうです。
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