下北沢に「鶏」にこだわるラーメン店が登場
若者に人気の街、下北沢。小劇場やライブハウス、古着店などが多く、さまざまな文化が息づく人気スポットだ。おしゃれなカフェや、古くからの定食など、飲食に関しても個性的な店が揃っている。
そんな下北沢にオープンしたばかりのラーメン店が「壱鵠堂」。下北沢駅(小田急中央口)から徒歩1分もかからない、まさに駅近の立地もさることながら、ラーメン店にしては大きな建物で、2階建てのモダンな外装も目を引く。
看板から「鶏ラーメン」とうたっていることもあり、鶏を活かしたラーメンが特徴なのだという。また、ラーメンだけではなく、サイドメニューも鶏にこだわっているのが特徴なのだとか。
夜でも店内の隅々まで明るく、和モダンな内装も魅力的。とはいえ、ラーメン店のポイントはラーメン。さっそく、こだわりのラーメンを食べてみよう。
濃厚な鶏のスープ、食べごたえのあるチャーシュー
かえしの魚介もポイント
壱鵠堂の基本ともいえるメニューは「壱鵠鶏骨らーめん」(820円)。“豚骨(とんこつ)”ではなく“鶏骨(とりこつ)”である。
今回は「鶏尽くしらーめん」(1050円)を注文。基本の壱鵠鶏骨らーめんに、むねチャーシューと軟骨つくねがトッピングされたものだ。言うなれば、壱鵠堂のチャーシューメン。
鶏をメインにしたラーメンと聞けば、ここ数年のラーメンのトレンドでいえば、「鶏白湯」「鶏と水」といったスープを想像される人も多いかもしれない。ただ、壱鵠堂は、それらとは異なる。鶏の出汁とコラーゲンが染み込んでいるスープは、思った以上に濃厚だ。
ポイントは醤油のかえし。北海道産昆布、サバ、カツオ、煮干しを配合したタレは、口に入れたときのキリッとした味わいをもたらしている。一口目から、主張がはっきりと感じられるスープになっているわけだ。
極端な言い方をすれば、スープのまろやかな口当たりと、しっかりした味のパンチは、家系ラーメンのそれに近いかもしれない。豚骨のようなクリーミーさも感じられるほか、醤油+魚介の力強い味が舌に残る。とはいっても、くどすぎない、濃すぎないように、バランスが取られていると感じる。
麺は見ての通りの細麺。北海道産のうどん用粉と、小麦粉をまるごと一本挽きにしたという製パン用粉をブレンドしたもの。細麺でありながら、“つるつる”というよりは、スープがまとわりやすい「もっちり」した食感になっている。ちょっと意外な食感だが、個性のあるスープに負けないように配慮したのだろう。
チャーシューは、もちろん鶏肉を使っており、ほろっとした食感でやわらかめに仕上がっている。ぼそぼそとしていないところに好感を抱く。鶏にこだわるラーメンの面目躍如といったところ。
鶏にこだわっているのが実感できるのは、軟骨つくね。鶏のミンチに軟骨を入れているが、この軟骨がやや大きめに入っているため、歯ごたえがとても楽しい。また、スープを吸ったときの「鶏」の味わいが口に広がっていくのも魅力的だ。
むねチャーシューは胸肉をしっとりと仕上げており、いかにも、鶏のラーメンにふさわしい具材だ。もちろん、ももチャーシューも鶏肉なのだが、より「鶏肉ならではの食感」を味わえるのはこちらだろう。
全体的に、「鶏骨」というワードからイメージされるようなスッキリした味わいというよりは、どっしりとした濃厚さで食べさせるラーメンになっている。とはいっても、ていねいに下処理をしたという若鶏を使ったダシには、鶏特有の匂いは控えめで、ギトギトした感じはない。
麺が細麺でありながら、もちもちした歯ごたえで、スープと絡みやすいのも、よく考えられている。鶏にこだわったスープとチャーシューの味わいに負けない自己主張がある。総じて、「しっかりしているし、まとまっている」一杯に仕上がっていると感じた。
鶏尽くしらーめんは、3つのチャーシューが入っていることもあって、まず最初に食べてほしいメニューといえそうだ。
思った以上に個性がしっかりしている「黒」
壱鵠堂のメニューの中で、もう一つ注目したいラーメンが、「鶏骨らーめん『黒』」(870円)だ。オリジナルレシピの黒マー油をトッピングしたもので、焦がしにんにくの香ばしさと旨味がプラスされている、とうたう。
これだけだと、「なんだ、通常のメニューに黒マー油を入れただけか」と思われるかもしれない。ただ、それが実に効いている。
黒マー油のガツンと来る刺激が、鶏骨のコクの中でアクセントになり、「調味料を入れました」以上の変化をもたらしている。誤解をおそれずに言えば、より「豚骨ラーメン」的な味わいになり、ノーマルの壱鵠鶏骨らーめんとはかなり違った風情だ。もちろん、豚骨ではなく鶏骨なので、ワイルドでありながらまろやかさも保たれている、なかなかよいバランス。
黒マー油でこんなに変わるものか、と意外に思うかもしれない。壱鵠堂の個性を感じられる上に、パンチに欠けることもないので、人によっては、こちらのほうが好みだと感じてもおかしくないかもしれない。それぐらい、個性がはっきり分かれている。
ちなみに、壱鵠堂では、ホタテなどのダシを使ったかえしが特徴の「淡麗鶏骨塩らーめん」(940円)、淡麗鶏骨塩らーめんのスープをベースにした「野菜たんめん」(980円)と、辛味噌を使った「鶏骨らーめん『地獄』」(980円)もある。鶏の味をベースにしているのは変わらないので、食べ比べてみるのもおもしろそうだ。
アスキーグルメ・ナベコのラーメンチェック!
こんにちは! アスキーグルメのナベコです。私も壱鵠堂におじゃまして、ラーメンの味をチェックしてみました。ラーメンは大好きですし、お酒が大好きなので、飲みのシメにラーメンを食べることもあります。
壱鵠堂さんのラーメンは鶏がメインということで、あっさりしたスープを想像していたんですけど、思ったよりしっかりした味。かえしの魚介が効いているのがポイントだと思いました。
鶏尽くしらーめんもおいしいけど、自分のオススメは鶏骨らーめん「黒」。黒マー油の香りと鶏骨の濃厚な味わいは、メジャーなところで例えるなら、熊本ラーメンのよう。だけど、あくまで鶏のダシなので、豚骨とはやっぱり違うんですね。ガツンとボディがあるのにしつこくない、ありそうでない味わいは、お酒を飲んだあとでもするするといけちゃいそう。
サイドメニューも鶏づくし、ラーメン飲みにも便利
ラーメンを見てきてわかるように、壱鵠堂は「鶏」にこだわるお店だ。それゆえに、サイドメニューも鶏尽くし。ここも注目すべきポイントといえる。
鶏肉を堪能したいなら、ももの一枚肉を片栗粉に付けて揚げた竜田揚げがオススメといえそうだ。「チキン南蛮」「油淋鶏」「竜田揚げねぎ塩レモン」の3種があり、いずれも550円。
それぞれに個性があるので、その日の気分や、ラーメンに合わせて、お酒のおつまみに……と、好きなように選べる。強いてオススメを挙げるなら、チキン南蛮だろうか。タルタルソースは店で手作りしており、柴漬けを合わせているのも本格的。もちろん鶏肉自体の食感もよく、ラーメン店のサイドメニューとして考えるとよくできている。
ラーメン店のサイドメニューでおなじみ、餃子にも鶏が使われている。「軟骨にら餃子」「軟骨にら餃子」(4個230円、8個450円)の2種類があり、いずれも、皮は“パリッ”ではなく、“もちもち”系の餃子。
軟骨にら餃子は、その名の通り、軟骨とニラを使った餃子。軟骨のこりこりした食感と、ニラの香りが、ガツンと来るスタミナ系のメニューといえる。普通の餃子をイメージすると、ちょっと驚くかもしれない。壱鵠堂で餃子を食べるなら、ぜひ注文したいメニューだ。
鶏汁しそ餃子は、鶏肉がメインに使いつつ、しその香りもあいまって、よくある餃子とは少し異なるあっさりした後味が印象に残る。醤油でもいいが、酢にコショウを多めに入れて、それで食べるのもおもしろいだろう。
シンプルに「鶏肉を食べたい」ということであれば、讃岐うどん店を彷彿とさせるような「かしわ天」(1本200円、2本380円)もある。
ちなみに、平日11時から15時のランチメニューでは、かしわ天、ライス、鶏汁しそ餃子+半ライスを付けたセットもあるので、チェックされたい。
レモンサワー以外にも「鶏」に合うお酒が揃っている
壱鵠堂はドリンクメニューの種類も多い。レモンサワーはもちろんのこと、日本酒やグラスワインなども用意。サイドメニューとあわせて、“飲めるラーメン店”としての魅力もあるのだ。
※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、酒類を提供していない場合があります。
ラーメンともサイドメニューとも合いそうなのが、「生絞りレモンサワー」(490円)。半分に切ったレモン1個が添えられていて、好みの量を絞って入れられる。コクのあるラーメンのスープ、竜田揚げなどを味わいながら飲むのに向いていそうだ。
ビールやハイボールはもちろん、日本酒、梅酒、グラスワインなども揃えているのは、ラーメン店にしては充実している。好みの飲み方が選べるのはありがたい。
ほかにも「プレーンサラダ」(250円)や、「ピリ辛メンマ」(190円)など、サッと出てくる系のおつまみもあるので、ちょい飲みをしてから最後にサクッとラーメンを食べる、といった使い方にも対応する。
「壱鵠鶏骨らーめん(ハーフ)」(540円)や、「鶏だし茶漬け」(540円)など、シメに使えるメニューもあるのが、抜かりなしという印象だ。
アスキーグルメ・ナベコの飲みメニューチェック!
またまたこんにちは、アスキーグルメのナベコです。お酒が大好きな私は、おつまみはもちろん、ドリンクメニューにも注目したいです。ビール、レモンサワー、ハイボールはもちろん、個人的には日本酒の「奥の松 あだたら吟醸」が入っているのが胸アツポイントでした。福島、二本松の銘酒、奥の松。毎日飲める吟醸酒を目指したというあだたら吟醸。
かしわ天もしっかり衣に味がついていて、おつまみにはもちろん、ラーメンのスープに浸しても負けない味になっているのが好感触です。サイドメニューのクオリティーが高いこと、ラーメン店としてはドリンクメニューが充実しているところに、いま流行の「ラ飲み」に応えるポテンシャルが高いと感じました!
竜田揚げシリーズやかしわ天には、サワー系がオススメ。「生絞りレモンサワー」で、レモンの酸味でさわやかに。餃子も注文するならハイボールが鉄板ですね。フルーティーさもあり、飲み口のよい日奥の松 あだたら吟醸とラーメンの組み合わせもおもしろそう。
下北沢に新しいラーメンの選択肢!
壱鵠堂を訪れて気づいたのは、清潔感があるだけでなく、店内が広々としているところだ。カウンターだけでなく、テーブル席が多い(2階はテーブル席のみ)のも、下北沢のラーメン店にはめずらしいタイプ。ラーメンも飲みもゆったりと楽しめる。
鶏骨を活かしたラーメンの魅力はもちろん、おつまみのメニューも揃っているので、居酒屋代わりに使えるポテンシャルもある。営業時間は11時から翌朝6時と、深夜早朝まで営業しているのもポイント。
ラーメン自体も、鶏にこだわったとうたうだけあって、いたずらに鶏の味と香りを押し出すわけではなく、全体として味の主張がバランスよく感じられる、“よくできた”一杯になっている。
ラーメン店として考えれば、サイドメニューとドリンクの充実ぶりも特筆すべきだろう。ひとつの店で、お酒を飲み、シメにラーメンまでおいしく食べられる店舗を「『ラ飲み』ができる」と表現することがあるが、壱鵠堂はまさに、「ラ飲み」もできる新名所になるかもしれない。
ランチはもちろんのこと、営業時間的に、仕事帰りや、飲み会の終わりにラーメンを食べに行くなどの利用方法もアリ。下北沢でラーメンを食べたい、あるいはラーメンで飲みたいというときは、駅から近いということもあって、有力な選択肢になりそうだ。