このページの本文へ

「クラウド型5Gコア」採用で迅速なスモールスタートが可能、SDNやエッジなどとの統合もアピール

NEC、ローカル5Gの企画/構築/運用をサービス型で提供開始

2020年11月30日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 NECは2020年11月26日、企業や自治体を対象として「ローカル5G」に関するサービスを提供する新たなメニューを発表した。同社が提供するネットワークサービス「NEC Smart Connectivity」のマルチコネクティビティメニューに追加する。NECが培ってきたネットワーク技術や、関連ソリューションの知見と実績を活かし、最適なローカル5Gネットワーク環境の実現を支援するとしている。

ローカル5Gサービスが「NEC Smart Connectivity」のメニューに追加された

NEC 執行役員 網江貴彦氏(右)、同社 新事業推進本部長 新井智也氏(左)

ローカル5Gにまつわる「不安」を解消するエンドトゥエンドのラインアップ

 ローカル5Gは、企業や自治体などが自らの建物や敷地内、地域内に自営で構築/運用して利用する5Gネットワークだ。5Gならではの超高速大容量、超低遅延、多数同時接続といった特徴を持つネットワーク環境を構築でき、同時に産業/地域の個別ニーズに応じた柔軟なシステム構築ができるため、産業の競争力強化や社会課題の解決への貢献が期待されている。

 ただし、NEC 新事業推進本部長の新井智也氏は「企業はローカル5Gに関心があるものの、コストが高いのではないか、運用が難しいのではないか、セキュリティをどう担保するのかといった点での不安がある」と指摘する。また、導入には無線局免許の申請手続きや、電波特性を考慮したネットワーク設計、運用保守など、多くの専門的な知見やノウハウが必要になる。

 今回発表した5Gサービスでは、ローカル5G構築準備段階のコンサルティングサービス(要件定義、電波調査、5G端末検証、実証実験)から、スペシャリストが設計と導入を支援するネットワークインテグレーションサービス(ローカル5G構築、無線免許取得支援)、24時間365日の運用監視/保守を行うマネージドサービス(運用、5Gコアクラウド、機器サブスク)を用意している。こうした幅広いラインアップを通じて、顧客のユースケースに応じて最適な通信環境とサポートを提供する。

NECが提供するローカル5Gサービス一覧。導入前の企画や要件定義から、設計や導入、運用監視までをエンドトゥエンドで提供する

 インテグレーションサービスでは、5G基地局のラインアップとして実用免許の制度化が予定されているSub-6(4.7GHz)帯域対応のスタンドアローン(SA)型を加える。またマネージドサービスでは、基地局やコアネットワークなど、構成機器と保守サービスをセットにして月額100万円から提供するメニューを用意する。

 「価格設定では悩んだ。マネージドサービスは、5G端末だけを用意してもらえれば、月額100万円でローカル5Gシステムをエンドトゥエンドで利用できるようにした。リーズナブルな価格だと考えているが、今後、顧客の声を聞きながら改定も考えたい」(NEC 執行役員の網江貴彦氏)

 また、NECの玉川事業場内で2020年3月から運用している共創施設「ローカル5Gラボ」を活用して、ローカル5Gを体感したり、顧客の機器と5Gネットワークを接続したユースケースの検証も可能にする。新井氏は「パートナーや顧客と一緒になって、5Gの利活用に向けたソリューション共創を進めたい」とコメントする。

 NECでは、製造、建設、流通、交通、公共市場を中心にローカル5Gを展開していく考えを示す。たとえば、建設現場における重機の遠隔操縦や自律運転、1人の作業員による複数重機の操作/監視、危険なエリア外からの遠隔操作などを実現して、生産性向上や省人化、安全性確保といった価値を提供できるという。ほかにも、製造現場におけるインテリジェントAGV(無人搬送車)への適用、鉄道事業者における高精細映像を使った混雑度検知や異常判断などへの活用が考えられる。

とくに5つの業界にフォーカスしてローカル5Gを展開する

クラウド型5Gコア、SDNとの統合、エッジ、――NECローカル5Gの特徴は

 NECが提供するローカル5Gにはいくつかの特徴がある。ひとつめは「クラウド型5Gコア」を採用している点だ。クラウドネイティブなアーキテクチャの採用により、サービス規模や事業計画に応じて柔軟かつコスト効率に優れた導入や運用が実現する。ローカル5Gのスモールスタートも可能で、5Gコアの運用はNECが担うため、運用経験やノウハウがなくても導入ができるとしている。

 またC/U(コントロールプレーン/ユーザープレーン)分離方式に対応した、トラフィック量に応じたU-Plane装置(UPF)をラインアップ。省スペースなボックス型の「UPFmini」も提供する。

特徴のひとつ「クラウド型5Gコア」。迅速なサービス提供開始、スモールスタート、コア運用のアウトソースが実現する

 2つめは「SDNとローカル5Gとの統合」である。SDNによって、LAN/RAN(リモートアクセス網)を含むさまざまなネットワークから、サービスに最適なネットワークを仮想的に提供できる。無線環境を含む可視化や運用の自動化が可能で、ローカル5Gを従来のネットワークと同じように構築、運用できる。

 ローカル5Gとエッジコンピューティングの相乗効果による価値向上にも取り組む。エッジとクラウドの分散協調を図りつつ、デバイス/エッジ/ネットワーク/クラウドの一元的なオーケストレーションを実現するほか、IoTデバイスの真正性確保、アクセラレーターハードウェア活用によるレスポンス向上といったエッジソリューションを提供できる。

 AIを活用する各種の取り組みにも触れた。たとえばアプリケーション通信の高度化/最適化にAIを適用する各種技術のほか、業種要件に応じたローカル5Gシステムの構成を導出する自動設計技術、ローカル5G運用時の品詞連れかをAIが分析/制御する学習型通信分析技術などによる取り組みを強化しているという。

AIによるアプリケーション通信の高度化と設計/運用の自動化。NECはそれぞれのAI技術を有している

 NECでは、5G対応デバイスもラインアップしている。Sub6/SAに対応した5Gゲートウェイ「FG900CS」や、5G通信モジュールを搭載したノートPC「LAVIEProMobile」を製品化済みだ。またエッジAIにおいては、インテルとの連携により最新アクセラレーターを搭載したエッジデバイスを提供開始している。

NECでは、2025年度までに、ローカル5G関連製品やサービスを含む「NEC Smart Connectivity」関連ビジネスで2000億円の売上げを見込んでいる。

「5Gは革命」さらに5Gの先も見据えて取り組む

 NEC 執行役員の網江貴彦氏は、「4Gまでの進化とは異なり、5Gは非連続な(これまでの延長上にはない)“革命”を実現するもの」だと語る。

 「これまでは人と人のコミュニケーションが中心だったが、今後はモノやコトがコミュニケーションをするようになる。5Gは産業での活用を前提に開発されたものであり、AI、IoT時代を支える重要な技術になる。とくにローカル5Gは、超高速大容量/超低遅延/多数同時接という5Gの特徴と、安全性/安定性/柔軟性という自営網の特徴によって、さまざまな産業や地域での活用が期待されている。NECにはすでに数百件の問い合わせがあり、当社への期待の高さを示している」(網江氏)

 また、NECが11月26日に、5Gの先の時代に向けた「Beyond 5G」に関するホワイトペーパーを公開したことにも触れた。2030年の社会における通信と、それを取り巻く技術の進化、NECが社会に提供する価値などについてまとめているという。

5Gの先を見据えた“Beyond 5G”ビジョン

カテゴリートップへ

  • 角川アスキー総合研究所
  • アスキーカード