サードパーティを含むハイブリッド/マルチクラウド環境に、フルスタックの可観測性を提供
オラクル「Cloud Observability and Management Platform」を紹介
2020年11月18日 07時00分更新
日本オラクルは、2020年10月に発表した新しい運用管理ソリューション「Oracle Cloud Observability and Management Platform」のサービス構成や、それぞれの詳しい機能に関する記者説明会を開催した。ハイブリッド/マルチクラウド化を背景に複雑化するIT環境に対し、フルスタックを一元的に監視/可視化できるプラットフォームを提供し、運用管理業務の効率化に加えて運用/開発チーム間の情報共有によるDevOps推進も支援する狙いがある。
IT運用管理にまつわる複雑さ/非効率さ、Dev-Ops間の“分断”を解消する狙い
Oracle Cloud Observability and Management Platformは、6つの新しいサービスと既存の3サービスにより構成される。オープンスタンダード技術/形式(fluentd、CNCF cloudevents)に対応しており、Oracle Cloud Infrastructure(OCI)のサービスだけでなくオンプレミスや他クラウドサービス、さらにインフラレイヤーだけでなく仮想化/OS/データベース(DB)/アプリケーション/エンドユーザー体験レイヤーというフルスタックをカバーして、一元的な監視と分析、可観測性(Observability)を提供するものだ。
日本オラクル テクノロジー事業戦略統括 ビジネス推進本部 マネージャーの清水美佳子氏は、IT運用管理における昨今の課題として、「ハイブリッド/マルチクラウド環境の本格導入に伴う煩雑化」「テクノロジーごとに個別最適化された複数のツールを使う非効率さ」「運用チームと開発チーム間の連携不足によるDevOps推進の阻害」という3点を指摘する。
「同じ運用管理作業をするのに、オンプレミス/クラウドで別々のツールを使うことで運用フローが煩雑化してしまっている。ガートナーの予測によると、3分の2以上の組織が『30以上の監視ツール』を使っている。こうしたツール間で情報連携ができなければ、システム全体のメトリクスが分散、サイロ化し、保有する資産(リソース)全体が見渡せないので効率的な運用ができない。また、開発者と運用者がそれぞれ別のツールで監視しており、情報連携が密にできていないという企業も多い。たとえばシステム障害が発生し、開発者に修正を依頼するときにも、それに必要な(インフラのログなどの)情報を管理者が用意して伝えるといった非効率な手間が生じ、解決までの時間もかかってしまう」(清水氏)
フルスタックでの一元的な可観測性を提供することで、こうした課題の解消を目指すのがCloud Observability and Management Platformのコンセプトだ。とくに“オラクルならでは”の強み、優位性について、清水氏は「フルスタックの可観測性と管理について深い経験を持つこと」「オンプレミスとクラウド、両方のテクノロジーに精通していること」「ミッションクリティカルレベルの卓越したデータ管理技術を備えること」の3点を挙げた。
想定するユースケースは当然、前述したような運用管理の課題を抱えたIT運用管理の現場ということになる。
「管理者と開発者の双方から、共通で利用できるオブザーバビリティとマネジメントの新しいプラットフォームを提供することが目的。フルスタックの可観測性を提供することで、管理性の向上を実現できると考えている」(清水氏)
6つの新サービスを発表、サードパーティ製品/サービスも統合可能
続いて清水氏は、Cloud Observability and Management Platformを構成するものとして新たに提供を開始した6サービスを紹介していった。これらの多くはすでに東京リージョンでも提供を開始している。
●Logging
同プラットフォームの基盤をなすサービス。システム全体から監査/インフラ/DB/アプリケーションのログを収集し、管理するとともに、検索や関連づけの機能を提供する。
ログ収集にはオープンソースのデータコレクタ「fluentd」を採用、またログ保存形式は「CNCF cloudevents 1.0」に準拠しており、オラクルの製品やサービスに限定されない幅広いデータソースからのログ収集と、「Splunk」などサードパーティ製品によるログ分析にも対応している。利用料金は、ログストレージ容量にのみかかる仕組み。
●Logging Analytics
ログデータの分析に機械学習技術も適用し、「パターン」や「外れ値(異常値)」を簡単に可視化/分析することで、リアルタイムにシステム異常を検出できるサービス。上述のLoggingサービスを使って収集したデータだけでなく、オンプレミスのシステム、またオラクル以外の製品/サービスから収集したログにも対応している。
●Application Performance Monitoring(今後リリース予定)
エンドユーザー側でのパフォーマンス性能を可視化するサービス。サーバー/ブラウザ/トランザクションのメトリックを収集/分析するとともに、グローバル複数拠点からトランザクションのポーリングテストを実施する。
「システム管理者はインフラ中心の見方になりがちだが、エンドユーザー体験を考えるとシステムの外側からの外形監視も重要だ。このサービスを使うことで、パフォーマンス劣化をユーザー側からのクレームよりも前に検知できるような、プロアクティブな監視を実現できる」(清水氏)
●Database Management(今後リリース予定)
オンプレミス/クラウド配置にかかわらず、複数のOracle Database全体の使用状況を一元的に監視/管理するためのサービス。「Oracle Enterprise Manager」が提供する一部機能も実装されており、パフォーマンス診断やリアルタイムSQL監視機能などが用意されている。
●Operations Insights
DBリソースの利用状況を長期的な履歴データに基づいて分析し、さらに将来的な需要やパフォーマンスの予測を行うサービス。Oracle Databaseに対応するが、現在はまず「Oracle Autonomous Database」に対応したサービスのみ提供中(無償)。
●Service Connector Hub
OCIのサービス間や、OCIとサードパーティサービスの間でデータ連携を容易にするサービス。「Apache Kafka」互換のOCI Streaming Serviceを使用して、ログなどのデータを柔軟に移動できるため、データワークフローがシンプル化される。
「Service Connector Hubを介して、たとえばOCIのログをSplunkで分析したり、PagerDutyで通知管理を行ったり、Grafanaのダッシュボードにエクスポートしたりすることができる。ユーザーがすでに投資している既存の運用管理の仕組みを有効活用できる」(清水氏)
これら6つのサービスに加えて、「OS Management」(インスタンスにインストールされているパッケージの監視や更新)、「Monitoring」(OCIのメトリック監視)、「Notifications」(大量の宛先へのメッセージ通知)の既存3サービスを加えて、Cloud Observability and Management Platformが構成されている。
なお、Database Managementなどのデータベース監視サービスについて、今後のリリースでは他社が提供するデータベース製品やデータベースサービスへの対応も計画されているという。具体的な製品/サービス名についての言及は避けたが、将来的に「エンタープライズの包括的なシステム監視/管理サービスとして提供していく」方針だとしている。