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高齢化時代に合わせた“タクシー業界のアップデート”はどうあるべきか、日本MSのセミナーで講演

クラウド型タクシー配車センターの電脳交通が考える地域交通の未来

2020年11月16日 08時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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コロナ禍に対応してタクシー配車業務の在宅勤務化も実現

 コロナ禍による経済的ダメージは、タクシー業界においても大きい。近藤氏は外食、宿泊とともに交通分野も影響を受けたと語り、具体的には「3月以降、前年比で50%程度に売上が減少した状況が続いている」と語る。

 「その一方で、エッセンシャルな(社会に不可欠な)仕事でもある。運転手だけでなく、コールセンターのオペレーターも出勤しなければ配車ができないため、配車センターがクラスター発生の原因になるおそれもあった。そこで当社では、在宅やリモートワークでも配車業務ができる環境づくりを実現した。これはタクシー業界のなかからも大きな注目を集めている」(近藤氏)

 具体的には、セキュリティ対策を行った業務PCをオペレーターに支給し、自宅からネットにつなぐだけで、タクシーを注文する電話が転送され、顧客情報を参照しながら乗務員に配車指示を行うというシステムだ。必要に応じて、利用客や乗務員と通話することもできる。

 「コールセンター業務をリモートワークにすると、オペレーター間のコミュニケーションが取りにくくなるという課題が発生する。それを解決するためにMicrosoft Teamsを利用している。たとえば、お客様の忘れ物をどの運転手が預かっているかという情報も、Teamsで情報共有している」(近藤氏)

コールセンターの“密”を避ける目的で配車業務のリモートワーク化を実施した

高齢化社会に適した新たな公共交通システムの社会実装にも取り組む

 さらに近藤氏は、電脳交通が目指す次のステップとして、タクシーを利用した新たな交通システムの可能性についても言及した。

 たとえば山口市阿東地区では、コミュニティバスの利用者数が少ないため、これをタクシーに置き換え、無料で利用できるという実証実験を4社(NTTドコモ中国支社や地元タクシー会社と電脳交通)で行った。その結果、8日間でコミュニティバスの6倍となる約470組の利用があったという。

 「コミュニティバスは100円で利用できるが、停留所まで行くのが体力面でつらい、膝が痛くてバスに乗車しづらいといった(利用しない)理由があった。また実証実験では、利用者の43%が『生まれて初めてタクシーを使う』という高齢者だった。高齢者の多い地域で、タクシーが使われてこなかった実態や理由がわかった」(近藤氏)

 近藤氏は、タクシーを含めたこれまでの公共交通システムが、高齢化の進む社会に合わなくなってきていると指摘する。

 「いま求められているのは、自宅の前から目的地まで移動できる交通サービスだ。それを実現するためにコストを見直す努力をしたり、10人乗りのクルマでオンデマンド交通や相乗りを行うことで、1人あたりのコストを下げるといった努力が必要になる。新たな交通体験を実現するために、課題を見つけ、それを解決するための仕組みを実現することに取り組みたい」(近藤氏)

従来型のサービスだけでなく公共交通サービスや乗合タクシー、さらには観光型MaaSとの連携、貨客混載やフードデリバリーといった幅広いタクシー活用の取り組みを始めている

* * *

 電脳交通のクラウド型配車システムやクラウド型配車センターは、現在、西日本を中心に25都道府県で展開している。2020年12月からは、全国に展開していくという。

 また2020年10月には、三菱商事、JR東日本スタートアップ、第一交通産業グループ、エムケイ、阿波銀行、いよぎんキャピタルを引受先とした総額5億円の資金調達を実施。これまでのMobility Technologies(旧JapanTaxi)、JR西日本イノベーションズ、NTTドコモ・ベンチャーズ、ブロードバンドタワーを含めて、累計約10億円の資金調達に成功している。近藤氏は意気込みを次のように語った。

 「電脳交通では今後3年以内に、クラウド型配車システムの採用率を50%以上に高めることを目指している。業務の効率化などによって、人件費を圧縮し、利益率を高め、タクシー会社の持続可能性を高め、地方のタクシー会社の課題に対応したい。日本のどこでもタクシーが走りまわり、新たな交通サービスが機能する環境を作りたい」(近藤氏)

 タクシー業界が抱えるさまざまな課題を、新たなツールの活用によって解決し、業界全体が存続に向けて、挑戦を行える環境づくりを支援する企業であると言えるだろう。

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