津賀氏は9年と長期の在任
一方、津賀社長は、9年間というパナソニックのトップとしては長期の社長在任期間を次のように振り返った。
津賀 「社長就任時は、経営者としての経験が少なく、経営に慣れることからスタートしたが、それが、逆に技術者の目線で、経営をシンプルに考えることにつながったともいえる。事業部制を導入して、同じ尺度で見えるようにしたり、統合した松下電工は、松下電器と言葉も違えば、帳票の意味も違っており、事業現場に足を運び、ひとつひとつを理解していった。こうした取り組みを通じて、経営のイメージが少しずつ理解でき、会社のなかが、よく見えるようになった。大きな会社の全体の見える化が進んだことは、一番の自己評価である。手触り感が生まれ、自信を持って改革を進める決断ができた」
と語り、
津賀 「社長としてやりたかったことは、単純に、収益を伴う成長をしたいということだったが、それが簡単でないことも学んだ。そこで、今回の改革案のなかには、長期の構えや足元を固めることが改めて必要であることを盛り込んだ」とする。
津賀社長が就任した2012年度は、7000億円以上の赤字を計上していた時期であり、看板事業でありながらも赤字に陥っていたプラズマディスプレイ事業からの撤退を決断。半導体事業の売却や液晶パネル事業からも撤退するなど、大鉈を振るい、業績を回復。2018年には、創業100周年の節目を迎えた。
また、新たな取り組みにも積極的に乗り出し、日本マイクロソフトの社長から、パナソニックの代表取締役専務に就任した樋口泰行氏が率いるコネクティッドソリューションズ社では、現場プロセスイノベーションを推進し、リカーリング型モデルを確立。ハードウェアを作り、売って、利益を稼ぐという、従来のパナソニックとは違うモデルで、現場の課題を解決している。さらに、米Google幹部からパナソニック入りした松岡陽子氏が推進している「Team Yoky」では、くらしのアップデートを推進し、人に寄り添って困りごとを解決するビジネスモデルに取り組んでおり、挑戦領域事業に入ってきている。
こうした津賀氏が築いた新たな基盤を、楠見次期社長がどう成長させるのかにも注目が集まる。
パナソニックの社長には、創業者である松下幸之助氏が社長を退いた65歳を越えないとい不文律がある。55歳で社長に就任した津賀氏も、9年という期間を経て、そのタイミングに入ってきたなかでのバトンタッチだ。
これに当てはめれば、現在、55歳の楠見次期社長も、津賀社長と同じ10年近い長期政権になる可能性が高い。
2022年4月には、持株会社制という新たな体制へと移行するなかで、今後、パナソニックはどんな成長戦略を描くことになるのか。楠見次期社長の舵取りが楽しみである。
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