中小企業層でも導入しやすい「CVAD Standard for Azure」提供開始、WVDとの違いや優位点も説明
シトリックス、DaaSの手軽さとVDIの機能性を両立した新サービス
2020年11月10日 07時00分更新
シトリックス・システムズ・ジャパンは2020年11月5日、Azureクラウド上で稼働するWindowsデスクトップ/アプリケーション仮想化サービス「Citrix Virtual Apps and Desktops Standard for Azure(CVAD Standard for Azure)」を国内提供開始した。DaaS(Desktop-as-a-Service)の手軽さ/柔軟さと本格的なVDI(Virtual Desktop Infrastructure)の機能性とを兼ね備え、中小企業層でも導入しやすい仮想デスクトップとアピールしている。
記者発表会には日本マイクロソフトもゲスト出席し、マイクロソフト自身が提供するDaaS「Windows Virtual Desktop(WVD)」との違いや、CVAD Standard for Azureが持つ優位性について説明した。
「VDIやDaaSの導入をあきらめていた中小企業層でも利用しやすい」
CVAD Standard for Azureは、25~2000ユーザー規模に対応したデスクトップ/アプリケーション仮想化のサービス。シトリックスの國分俊宏氏は、その大きな特徴として「手頃な価格」「Azure専用」「月額や同時接続のライセンスに対応」という3点を挙げた。
「シトリックスのVDIが備える高度な機能を必要最小限に絞り、コストを抑えた。またAzure専用なので、Windows 10や『Microsoft 365』などのライセンス違反を気にすることなく、安心して使える。これまでのように年額だけでなく月額のライセンス販売も用意しており、同時接続数かユーザー/デバイス数かなど、要件と予算に応じて柔軟に選択いただける」(國分氏)
CVAD Standard for Azureが対応するのは25~2000ユーザーの規模。またWindows 10 Enterpriseマルチセッションへの対応や、「Microsoft Teams」「Skype」などWeb会議ツール/マルチメディアの最適化機能なども備えている。参考価格は1ユーザーあたり月額8.75ドルから(1000ユーザー、1年契約の場合)としている。
CVAD Standard for Azureでは、シトリックスが運用する「Citrix Cloud」をコントロールプレーンとして、顧客(またはパートナー)が運用するAzure環境に仮想マシンを展開して利用する。一部の海外リージョンではシトリックスが運用するAzure環境も選択できるが、現時点ではAzure東日本/西日本リージョンは対応しておらず、顧客自身のサブスクリプションを持ち込むかたちとなる(複数サブスクリプションの持ち込みも可能)。
保有するAzureサブスクリプションを持ち込むことで、既存のAzure契約における各種割引が利用できるほか、リザーブドインスタンスやGPU対応インスタンスといったものも選択できる。なお、マイクロソフトのパートナーであるクラウドサービスプロバイダーが、この仕組みを利用してエンドユーザーへのサービスを展開することもできる。
顧客が管理するAzureサブスクリプションを利用すると言っても、VDI環境の展開は「非常にシンプル」だと國分氏は強調した。Citrix Cloudの管理画面から保有するAzureサブスクリプションを登録し、仮想マシンのマスターイメージを作成、カタログに登録して、ユーザーを割り当てるという4ステップで作業が完了する。Azureの管理画面(Azureポータル)での操作は必要ない。
またマスターイメージの管理も、シトリックスが提供するベースイメージをそのまま使えるほか、そこにアプリケーションや設定を追加/変更した独自イメージも簡単に作成/追加できる。AzureからVHD(仮想ディスク)をインポートしてイメージを作成することも可能だ。
なお、CVAD Standard for Azureは「Azure Active Directory(AAD)」に依存しておらず、Active Directoryをオンプレミス運用している企業でもそのまま利用できる。また、オフィス内にある物理PCへのアクセス機能(リモートPCアクセス)も備えており、社内のPC環境をいきなりすべてVDI/クラウドに移行できないといった場合でも、段階的な移行が可能となっている。
日本MSからも高い評価、WVDとの違いと優位点を説明
ゲスト出席した日本マイクロソフトの高添修氏はまず、「Windows Virtual Desktop(WVD)を持っているマイクロソフトが、なぜシトリックスと一緒にやりたいと思っているのか、そこについて話したい」と切り出した。
実際に自らもCVAD Standard for Azureに少し触れてみたという高添氏は、「“超”シンプルな管理ポータル」「イメージ管理機能を包含」「コスト削減に効く柔軟な電源管理」「多様なコミュニケーションツールへの対応」といった部分で、CVADがWVDに対する優位性を持つことを紹介した。
「まずは超シンプルな管理ポータル。正直、WVDを持っているわれわれからするとちょっと悔しいくらい、すごくきれいにできている」「現実のユーザーは(Zoomなど)さまざまなコミュニケーションツールを使うが、WVDの場合はやはり『まずはTeamsを使ってみませんか』と言うことになる。その点、CVADの『ほかのツールでもいいですよ』というスタンスは、やはりマイクロソフトではないからこそ」(高添氏)
また、オフィスにある物理PCにリモートアクセスできる機能については、「たとえば医療系や教育系のユーザーなどでは、パブリッククラウドに(PCの)仮想マシンを上げにくいケースもある」と述べ、まずはリモートPCとして利用しつつ、将来的なクラウド移行へとつなげることができると評価した。
「(マイクロソフトは)Azureのビジネスにおいて、たとえばレッドハット、ネットアップなど、協業する他社パートナーをまったく否定しない姿勢をとっている。ときに競合することがあっても、一緒に(協業を)やるほうが顧客に価値があるのであれば一緒にやろうというスタンス。今回のシトリックスとの協業は、VDIの世界でまさにそれを体現しているものだと考えている。ぜひこれを使って(日本のリモートワーク環境を)より良くできれば」(高添氏)