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副業・兼業から地方創生を目指す 地方企業に特化した人材マッチング「JOINS」

連載
このスタートアップに聞きたい

  「JOINS」は、人材不足に悩む地方企業と都市部の人材をつなぐ、副業・兼業専門の人材シェアリングサービス。働き方改革による副業の解禁、コロナ禍によるリモートワークの普及で、地方企業で副業人材を活用しやすい環境が整いつつある。これまでのUターンやIターン移住とは違う、副業による地方創生への戦略とは。JOINS株式会社代表取締役の猪尾 愛隆氏にサービスの背景と概要を伺った。

JOINS案件検索画面

副業・兼業を地方創生のインパクトに

 地方の労働人口は年々減り続けている。行政は地方創生に力を入れているが、単純に地方へお金を投入し、移住を推進しても簡単には人は動かない。とくに大都市の企業に勤め、安定した収入を得ている優秀な人材であればあるほど、わざわざ地方に移住しようとは考えないだろう。人材不足によって事業が衰退し、勤め先がないためにますます人は離れてしまうと、地方は負のサイクルに陥ってしまう。

 いきなり完全に転職・移住するのはハードルが高い。だが、事務系やソフトウェア開発といった業務に関しては、わざわざ通勤しなくても、リモートで仕事をする環境が整っている。副業・兼業の形で都会と地方で労働力を共有すれば、地方の人材不足はいくらか解消できるかもしれない。「JOINS」は、こうした背景から生まれた地方企業向けのプロ副業・兼業人材のマッチングサービスだ。

 JOINS株式会社代表取締役の猪尾 愛隆氏は、ミュージックセキュリティーズで投資型クラウドファンディング事業を立ち上げ、12年間運営した経験を持つ。副業・兼業で地方創生を目指すというJOINSの発想はクラウドファンディングと同じ、と猪尾氏。

「クラウドファンディングは小額だからこそ、誰でも気軽に投資できます。同様に、フルタイムは無理だけれど、リモートや兼業で週5時間程度なら、魅力的なプロジェクトに参加してみたい、という人はけっこういるはず。その小さな時間を寄せ集めれば、大きなインパクトになるのでは、という発想で3年前にJOINSを創業しました」

JOINS株式会社 代表取締役 猪尾 愛隆氏

 とくに地方企業が求めているのは、業務の効率化やネット活用といったノウハウがなくできていないデジタル化の業務。これまでも都心部の企業やコンサルを通して外部に業務委託していたが、コストが割高なうえ、担当者と継続的な関係が築きにくいのが難点だった。つてがあれば、直接プロフェッショナル人材と直接契約したい、というのが企業側の希望だ。

紹介料は月々4万円×12ヵ月の分割払い

 そのような地方企業のニーズはJOINSのコストにも反映されている。紹介料は、1人につき初月無料で毎月4万円×最大12回。つまり、成功報酬額48万円を12カ月で分割払いする形だ。

 人材とは企業が直接業務委託契約を結び、12カ月以降は、JOINSへの支払いは不要。いつでも解約可能で、12カ月以内に人材との契約が切れたら、JOINSへの支払いを止められるので、契約時に一括で紹介料を払うリスクを負わずにすむ。サービスを開始してフィードバックを得ながら、少しずつ改訂して、この形に落ち着いたそうだ。

 人材への業務委託費用は、平均時給3000円~4000円×30時間で月10万円前後。契約している副業人材は、都心の大手IT系企業に勤務するエンジニアが中心だそう。ちなみに、作業時間は自己申告制だが、実際にかかった時間よりも長く申告することはまずないそうだ。

「契約は月単位なので、成果物に対して金額が高いと翌月は解約されてしまうかもしれません。人材側からしても、毎月請求書を送るときは緊張するそうです。ライバルに比べて仕事が遅いと思われたくない、という心理も働くので、金額以上にクオリティーの高い成果物が得られると好評です」

 完全なフリーランスとして請け負うには、割に合わないかもしれないが、副業として始めるなら、自分の腕試しやスキルアップにもなるので、一石二鳥だ。会社を通さずに個人として評価が得られるので、やりがいもある。

中規模企業のDXを加速して日本経済に貢献したい

 JOINS株式会社の従業員は、全員がフルリモート、副業・兼業をしている。猪尾氏自身も、JOINSで募集していた案件に応募し、長野県白馬村のグランピング施設で業務委託として働き、現在は東京と長野の二拠点生活を実践しているそうだ。

「きっかけはスポット的な人材のシェアリングでも、継続的に関わりをもち、地域に役立てる喜びを実感すると、土地への愛着がわきます。契約先の企業や地域の社風が気に入れば、起業や移住を考えるようになるかもしれない。副業・兼業は単なる資源の最適配分だけでなく、暮らしを豊かにする起点になると思っています」と猪尾氏。

 2018年の大企業の副業解禁から、副業人材は急増した。さらに2020年は新型コロナの影響からデジタル化のニーズが高まり、地方企業側の求人が増加している。現在は、募集企業数は約100社に対し、登録人材は約2000人という買い手市場だ。今後、口コミでさらに加速するだろう。

「日本のGDPの3分の1は中規模企業が占めており、その大半は地方に集中しています。これら中規模企業のデジタル化やDXが進んで生産性が上がれば、日本経済の大きなインパクトになるはず。都心のエンジニアの方に副業で入ってもらい、ぜひそういった動きを進めていってもらいたいです」

 JOINSでは、今後5年間で募集企業を5000社へと拡大していくのが目標。また、神戸市の「副業・兼業プロ人材活用による企業のコロナ対策実施支援~コロナをバネに!未来を拓く!JOINS×神戸市~」、福岡県直方市内の企業のDXを推進する「副業人材マッチング事業」など、地方自治体と連携事業にも取り組んでいる。

 エンジニア、デザイナーなど専門のスキルがある人に限らず、都心の大手企業での業務経験が地方企業で活かせる部分は多いとのこと。将来、移住や多拠点居住を考えているなら、住んでみたい地方の企業に、副業で貢献してみては。

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