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格安データ通信SIMを買って格安に使い倒す! 第164回

政府主導の携帯料金値下げが出る前に、一般のユーザーがやっておきたいことを考えた

2020年11月01日 12時00分更新

文● 正田拓也 編集● ASCII

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総務省のアクション・プランには期待したいが
違和感のある内容も見られる

 発表された総務省の「アクション・プラン」には、料金値下げのほかにも、現在の携帯電話の料金を難解にしている「固定と携帯とのセット割引等の検証」も示されていて、期待できる内容がある。現在キャリアの広告で「月1980円~」などと大きく示される料金は、各キャリアごとに異なる対応固定回線の利用や家族割引の適用が前提になっており、実際に広告の料金で使うのは難しい。

一番大きく書かれている料金は、その右のさまざまな条件がすべて適用された場合。割引対象になる固定回線を使っていないとダメだし、家族割引が使えないケースでも同様。また、期間限定の割引もある。やはりこうした料金の打ち出し方には問題が無いとは言えない

 なかにはスマートフォンの購入に出向いた店で、こうした料金の割引のためにあまり良くない条件で光ファイバー回線をセット契約させられてしまったという本末転倒な例もある。この点にメスが入るのは大歓迎だ。

 eSIMの推進についても、楽天モバイルのように再設定手数料が無料化され、うまく機能すればたいへん便利。最新のiPhoneでは簡単に設定できるうえ、MNPの際もSIMを郵送で受け取る手間がなくなる。そして、総務省が構築する理解促進のポータルサイトは乗り換え方法などを案内するとしているが、中立の立場で各社の料金比較まで踏み込んでくれるならば有益だ。

総務省が示した競争環境整備のための「アクション・プラン」。さまざまな細かな施策が寄せ集めされた感がある

 反対に気になる項目もある。キャリアメール持ち運び実現の検討やMNPの利用環境整備、中古端末の流通活性化といった内容には大きな違和感を感じる。特にキャリアメール持ち運びはMNPを開始した2006年にすべきであり、当時と比べてキャリアメールの利用機会が大きく減少した今、大きな手間をかけてまでやることだろうか。

 MNPについては転出元の手数料削減のほか、引き止め策の大幅制限が示されている。たとえば、キャリアのサポート電話でMNP予約番号を取得しようとすると、引き止め策として端末購入に使えるポイントが提案されるなど、大きな優遇措置が示されるケースがある。これを規制してしまうのはユーザーの利益を損なう可能性がある。手数料削減やネット対応など乗り換えがしやすい環境を整えることに力を入れれば、営業活動は自由にした方が競争促進となるはずだ。

 また、キャリアメールの持ち運びの実現に手間をかけるくらいならば、現在でも乗り換えの障害になっている、一部SNSアプリのiPhoneとAndroid機種間の移行がしにくいことについて対策を示すなどしたほうがいいだろう。日本におけるiPhoneへの過度な偏りの原因のひとつであり、最新iPhoneを買い求めるために3大キャリアに執着する遠因にもなっている。もちろん民間のすることに政府が必要以上に口を出すのは反対だが、それが現実に乗り換えの障害になっているなら、強制とまではいかなくても、何らかの対策はとるべきだろう。

 そして、中古端末についても、すでに流通は盛んであって、補償サービスも充実しつつある。この上で政府が無理に主導するほどのものでもない。中古端末の現実的な問題点として、発売から年月が経つとOSのサポート期間の問題から、安全確実に使える期間が短くなりかねない。また、アフターサポートも複雑で、万人に勧められるようなものでもないからだ。

 それよりも低価格な機種を含めてさまざまなグレードのスマートフォンの利用を促進する流れを作ることが、機器費用も含めた利用コストを下げる点では必要なはずだ。

最終的にはユーザーが賢くなるのがなにより重要

 安くスマートフォンを使うには、サブブランドやMVNOの格安SIMを活用し、スマートフォンもハイエンドだけでなく必要に応じたランクの機種を活用すればいいという見方がある。今回発表された月20GBで4000円前後のプランも、確かに現時点で20GBのプランは空白地帯ではあるが、UQ mobileとY!mobileの既存プランと比較すると、容量が大きめのプランが少し割安で登場したにすぎない。月20GBくらいの通信量を必要とするユーザーが増えてくると、いずれは登場していたとも考えられ、政府の要請のおかげとするには違和感がある。

 一方で、最新iPhoneのようなハイエンド端末を金利なしの分割払いで購入したい、ショップで対応してくれるサポートを追加費用なしに受けたいというのなら、現在の3大キャリアで適切にプランを選び、適切なオプションを選択することが、必ずしも割高であるとは思えない。

 むしろ、政府が料金に介入することで、MVNOの格安SIMとのバランスを崩し、もともと低廉だったそうしたサービスの側が打撃を受けないかが心配だ。さまざまな質や料金のサービスが選べ、自由に競争するほうがユーザーに利益があると思われる。

 ほかにも政府のアクション・プランで指摘したいところはたくさんあるが、そもそも論として、新型コロナウイルスの影響で国内経済に大問題を抱えている今、ことさらに携帯電話、それも民間の仕事に口出しすることを今すべきなのかは大きな疑問。結局のところ、ユーザーである国民ひとりひとりが、携帯電話や政治について賢い判断を積み重ねていかないと、この問題は解決しないのではないだろうか。

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