「SDGs(エスディージーズ)」をご存じでしょうか? 2015年9月の国連のサミットで採択された、2016年から2030年までの15年間で達成をめざしている“持続可能な開発のための国際目標“のこと。「貧困をなくそう」「海の豊かさを守ろう」など、大きな17の目標と、それを達成するための具体的な169のターゲット、進捗を評価する232の指標が設けられています。
「SDGsは私たち一人一人にも関係する」
と、言われてもわかりづらいですよね
私たち一人一人が実はSDGsに関わっています。政府や大企業の取り組みだけではなく、SDGsとは世界の様々な様相を包括的に捉えた、普遍的な課題を提示しています。
と言われても、では具体的にSDGsとはなにか? なぜ私たちに関わってくるのか? わかりづらいですよね。そんなSDGsについて理解が深まる「SDGsカードゲーム」が注目を集めています。
SDGsの理念を集約させて、誰もがゲーム感覚でその構造を気軽に体験できるSDGsカードゲーム、正式名称「カードゲーム『2030SDGs』」は、企業や学校、自治体などの研修で取り入れられる例も多々。カードゲームと聞くとおもしろそうではないですか。実際にどのように行われているのか、ダイドードリンコ社のSDGsカードゲームを使用した社内研修の様子を見てきました。
ダイドー社のSDGsカードゲームを採用した社内研修
SDGsカードゲームは養成講座を受講した公認ファシリテーターの司会で開催されます。カードキット自体、ファシリテーター以外の人向けに市販されておらず、ゲームをプレイするためには各地で開催されるイベントを探して参加したり、公認ファシリテーターをアテンドしたりするなどの方法があります。ダイドードリンコではSDGsへの取り組みを強化していることもあり、人事担当者が公認ファシリテーターを取得し社内でSDGsカードゲームを主催しています。
ゲームのネタバレを防ぐために仔細の説明は省きますが、大まかには、配られたカードを交換、プロジェクトを実行するなどして、プレイヤーごとのゴールを達成するという流れ。プロジェクトとはSDGsでいうところの169のターゲット。プロジェクトの実行には「時間」「お金」「世界の状況メーター」の3つがキー。プロジェクトごとに時間のカードやお金のカードの条件が指定されます。またプロジェクトを実行したら、やりがいや想い、経験などを表す「意思」をもらえることもあります。リアリティありますね。
プロジェクトに必要なカードの条件を揃えるためにプレイヤー同士で手札の交換が可能。驚いたことに交換は完全に自由。近くの人に「お金が欲しいから時間と交換して」、「このプロジェクトは必要ないから誰か代わりにやりませんか」という交渉を持ち掛けて、交渉を受けた側はその人の判断でカードを交換したり、時には譲渡にも応じます。ゲームとはいえ人との話し合いや交渉など、現実の世界でも起こり得ることがデザインされているのが大きな特徴。
「世界」のことを考えているつもりで
「自分」の問題へ立ち返れる
プレイヤーがプロジェクトを実行していくと、ゲーム全体(世界)の経済、社会、環境のパラメーターが変動していきます。プロジェクトは必ず多面的な影響を及ぼすのです。考えてみましょう。例えば、「経済発展」のためにインフラを整備する一方で、森林伐採が進んで「環境」が悪くなる可能性がある。プロジェクトはもちろん、それぞれがSDGsで提示された、世界をよくするための課題です。それらが一つしかない「正」へつきすすむのではなく、場合によっては、どちらかを増やしたらどちらかが減る、シーソーゲームのよう。
では、どうしたらいいのかと考えさせられるのがキモ。核心的な部分だと、プレイヤーごとのゴールは設定されますが、決して勝ち負けを争うゲームではなく、実はちょっとしたどんでん返しも……!
ゲームを通してSDGsを理解すると、世界をよくしていくためには一極的な取り組みではだめだということが見えてきます。また、プロジェクト単位の意義や、実行する人の意思など、様々な視点があって、いずれかをないがしろにするのではなく、包括的に捉えることが大事であると気付かされます。ミニマムな単位だとひとりひとりの想いもとても大事。だからSDGsは我々一人一人に関係してくるのですね。
不思議と、世界の課題を考えるうちに、自分自身の身の回りについても同じような捉え方ができるのではないかと考えが及びます。普遍的な“考えるヒント” を教えてくれるのがSDGsカードゲームの魅力。
SDGsを身近なものとして捉えられるのみならず、幅広い視点を持つ人間育成のためにも。社内研修でカードゲームを採用すると社員同士の会話が生まれて風通しがよくなるメリットもあるようですよ。ゲームという気軽さで肩ひじ張らずに楽しめます。