BALMUDA The Cleaner C01A
11月17日発売
実売価格5万9400円
バルミューダ
https://www.balmuda.com/jp/cleaner/
アスキー家事育児担当の盛田諒ですこんにちは。わが家でも扇風機とトースターを愛用中のバルミューダがついに掃除機を出してきましたよ。先日ダイソンが軽量モデル「Dyson Micro」を発売したばかり。「バルミューダvs.ダイソンか〜?」なんてつぶやきながら10月15日、東京・代官山で開催した発表会に行ってきました。同社代表の寺尾玄社長がなぜかフェンダーを背後に発表したのは、フローリングをツルーっと滑っていく、モップと掃除機をあわせたような製品。吸引力ではなく「かけやすさ」にこだわった「vs.ダイソン」ではなく「vs.クイックルワイパー」な掃除機でした。
●クイックル派も納得の掃除機を作れ
バルミューダが発表した「BALMUDA The Cleaner」は、ジャンルとしてはいわゆるサイクロン式コードレススティック掃除機です。パッと見は「ペーパーモップの手軽さと掃除機の便利さを1台に!」というふれこみで売っていたショップジャパンの「スイブルスイーパーG2」に似ていて笑いましたが、当然というか中身は全然違うものでした。
最大の特徴は床をすべらせたときのツルツル感。ヘッドに入った2つのブラシを内向きに回すことで床との摩擦を減らし、エアホッケーのような浮遊感をもたせています。摩擦を減らしただけではすっとんでいってしまうので、左右にキャスターをつけてスイスイ動かせるようにしています。ヘッドとスティックをつなぐジョイント部は360度に動き、クイックルワイパーのようにくるくる回し、隙間に入れやすくしています。2つのブラシどちらもモーターがついているので本体重量は3.1kgとやや重めですが、重心が下にあり、ヘッドがツルツルなので手元が軽いというからくりになっています。
笑えるのがヘッドの四隅についた「角ローラー」。ローラーを壁に走らせて、ごみのたまりやすい部屋の隅をシャーっと滑らせて掃除をするというもの。いわく社長がミニ四駆に着想を得て「4つの車輪をつけたら角を掃除しやすいんじゃないか」と思いついたってことでした。よく採用しますわ。
なぜかけやすさにこだわりツルツル感を与えたかといえば、いわく社長がクイックルワイパー派だったから。社長によれば、掃除機はクイックルワイパーに比べ、前後にしか動かせないし、部屋に置くには色味が合わない。しかも重くて取り出しにくいことが不便だった。そこでエンジニア数人を行きつけのそば屋に集めて、「掃除を始めるまでの心理的距離と運動エネルギーを最小にし、かつ、自在に操れるクリーナーって、作れないかな?」と提案。かくしてクイックルワイパー派の社長も納得できる掃除機を作ることになった、というのが今回のストーリーでした。
●驚くほど手元が軽く、標準的な吸引力
実際に動かすとむちゃくちゃ手元が軽くて驚きました。うっかりすると勢いあまって壁にぶつかるんじゃってくらい。実際、すべりやすさはこれでもおさえたほどで開発時はもっとツルツルにすべっていたということ。手で動かす力が一番軽くなるところをゴールにすべりを調整したのだそうです。
発表会で説明担当者に聞いたところ、ブラシに使われている毛羽は普通の素材ですが、ブラシ脇の毛羽はすべりやすい素材にこだわったという話でした。ただしカーペットはツルツルとはいきませんでした。カーペットの素材によっては手元が重くなりますね。
ヘッドがくるくる回るので、イスやテーブルの足回りが掃除しやすいのも特徴でした。ジョイント部がくねくね動くのでソファの下にスッともぐりこませることができます。そのままズズッと奥深くまでつっこもうとするとヘッドが持ちあがってしまうのですが、通常の使用なら問題なさそうです。
ヘッドが重いので左右に首を振るときやや重くなりますが、ホウキのように両手で持てば動かしやすくなります。
自立はしませんが、重心が低いのでホウキのように立てかけておくことができます。宅配便が来たときはそのへんの壁にちょっと立てかけて応対すればよさそうです。
吸引力は一般的なコードレススティック掃除機並み。いわく集じん力のチャンピオンをめざしているわけではなく、めちゃめちゃ吸うことではなく、すいすい動くことこそがブラシの目標。しっかりごみをとれるギリギリの線をミートラインに、その中で自由自在にヘッドを動かせることにこだわったのですという話をしていました。吸引力にこだわったパワー寄りの掃除機は床に吸いついて動かしづらくなるのでむしろ逆をやっている印象もあります。そのためか運転音は比較的静かでした。
●1本のホウキのような自由さ
ごみはサイクロンで遠心分離。ごみを捨てるときには本体からダストケースを外し、ごみ箱にポンとごみを落とすことになります。カップと、サイクロン部分、フィルターは水洗いもできます。容量は5回使うとMAXまでごみがたまるくらいの仕様ですが、ごみがMAX近くまでたまってくるとわかりやすく吸引力が落ち、壁際のごみも残していたので、まめにごみ捨てをする必要がありそうです。
電源ボタンはスティックのてっぺんにあり、長押しするとパワー切り替えという変わった作り。ハンドルを握ったときの親指位置にボタンを持ってこなかったのは操作の自由度を上げたかったためということ。たしかにスティックをくるくる回しながら使うので、ボタンが左右どっちかにあったら若干混乱しそうです。全体に「シンプルに、自由に」というコンセプトで1本のホウキをイメージとして作られていて、ボタン位置もそれに準じたものになっているようでした。
充電台は、生活空間に置いたときに自然に美しく見えるようにということで、あえて直立ではなく、わずかに後ろ向きに角度をつけています。寺尾社長いわく「自分が生きている空間に置ける初めての掃除機を見たと感じた」ということ。このあたりは本領発揮という感じです。充電台から掃除機を出すときと戻すときは本体を持ちあげる必要があり、若干よっこらせ感がありますが、それは安全性を重視して倒れにくくするためだということでした。電源はリチウムイオンバッテリーで、連続使用時間は最大30分です。
準備に一手間ありますが、スティックを取り外し、操作部のアタッチメントを替え、ノズルを替えれば、ハンディ掃除機としても使えます。ハンディ掃除機のときは電源ボタンがハンドル部分についてきます。なおノズルセットは開発中で来春発売予定。11月の発売時には隙間ノズルのみを同梱することになるそうです。できれば付けてほしかった。
●わが道を行くバルミューダ
BALMUDA The Cleanerはとにかくかけやすいことにこだわったことがよくわかる掃除機。掃除機をかけるのが気持ちいいというのが新鮮で、新ジャンルという印象がありました。バルミューダ社内では男性社員が面白がって掃除を良くするようになったと話していました。いや普段からやれよお前という気がしなくもないですが気持ちはわかります。吸引力はそこそこで、それこそDyson Microのような軽量タイプと比べたらどうなのかは気になるところ。クイックルワイパーと比べてしまうと本体が重くて価格が高い気もしますが、かけやすさという点では断トツです。
バルミューダは最近あえて土俵をずらして勝負するというか、わが道を行く製品を作ってきますね。たとえばワイヤレススピーカー「BALMUDA The Speaker」の音質も普通だったし、今回の掃除機の吸引力も普通ですが、スピーカーは光の演出でライブハウスのような臨場感を出し、掃除機は取り回しのよさでペーパーモップのような軽さを出しました。通常の評価軸とは異なる第3の軸を作っちまえということなんだろうと思います。いわゆるゲームチェンジャーの発想で個人的には好きですが、第3の軸を提案してきたバルミューダの製品が当たっているのかよくわかりません。「風が気持ちいい扇風機」「パンがおいしいトースター」のようなわかりやすさがないぶん「発想は面白かったんだけどね〜〜」というマイナー商品になっていないかが若干心配です。
掃除機は、扇風機などの空調家電、トースターなどの調理家電に続き、バルミューダが柱として育てたい製品ジャンル。今後クリーナーシリーズとして少なくとも5製品計画しているそうで、第1弾であるBALMUDA The Cleanerの反応は気になるところ。わが道を行くバルミューダをおもろいと思ってついてくる人が果たしてどれだけいるか。スベらんといいですなあ。
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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