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業務を変えるkintoneユーザー事例 第90回

まとまると強い、活用すればもっと強い

ニットの派手髪社員が語る「カスタマーサクセスをkintoneで運営した話」

2020年09月28日 09時00分更新

文● 柳谷智宣 編集●大谷イビサ

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 2020年5月20日、「kintone hive osaka vol.8」が開催された。kintone hiveはkintoneのユーザーによる事例紹介や活用事例を発表するイベントだが、新型コロナウィルスの影響により、オンラインでの開催となっている。今回は、大阪で3番手となる「まとまると本当に強かった!! フルリモートでサービス運営する会社の顧客管理×データドリブン術」というタイトルの株式会社ニット 平島奈美氏のプレゼンをレポートする。

奈良からフルリモートで働く平島氏が大阪のkintone hiveに登壇

カスタマーサクセスを立ち上げて、顧客満足度を上げよ

 ニットは東京都品川区にオフィスを構えているが、プレゼンターの平島氏は奈良在住で、奈良県からフルリモートで営業をしているそう。同社はオンラインアシスタントサービス「HELPYOU」を運営しており、平島氏も最初はそのスタッフとして登録して、働いていた。その後、そのまま運営母体であるニットへ正社員として登用されたという。「現在は、派手髪社員として、マーケティングや情報管理をしています」(平島氏)。

 同社は、「『あなたがいてよかった』をすべての人に」というミッションの元、社員全員がフルリモートで運営している。海外在住やアドレスホッパーのメンバーもいるので本格的だ。

派手髪社員のニット 平島奈美氏

 平島氏が社員になった時、同社では多数のツールを使っていたそう。すでにペーパーレス化は進んでおり、紙での管理はなかったが、複数のツールに情報が分散していた。その上、管理ルールもなかったという。

 同じオフィスで働いていれば、ツールの使い方や情報のある場所を気軽に質問できるが、テレワーク環境でわざわざチャットを使うのもコミュニケーションコストがかかってしまう。このような課題がある中で、平島氏に社員として化せられたミッションが、「カスタマーサクセスを立ち上げて、顧客満足度を上げること」だった。

多数のツールに情報が分散していた

「カスタマーサクセスは顧客からのアクションに対してリアクションする受動的なサポートを行ですが、カスタマーサクセスは、こちらから能動的にアクションを起こして顧客満足度を上げていきます。顧客満足度を上げることは、つまり継続率を上げるということになります。環境があまりよくない中、超重要なミッションが降ってきました」(平島氏)

 そこでいきなり、3つの壁に当たってしまった。1つ目が「属人化」問題で、担当者しかわからない情報がたくさんちらばっていた。メモに書いていればまだいい方で、ひどいときには頭の中にしかないということもあった。情報がどこにあるのかが、人に完全に紐付いてしまっていたのだ。

 2つ目が「情報管理」問題。Googleスプレッドシートを利用していたのだが、エクセルと同様にコピーにコピーが重ねられ、どれが最新のファイル化わからなくなっていた。そして3つ目が「情報共有、管理」問題。同社ではある顧客に関わる担当者が複数いるのだが、情報共有ができておらず、伝言ゲームで無駄なコミュニケーションが発生していたという。

 そこで平島氏は、大きく2つの施策を考えた。1つ目が「オンボーディング率の向上」。顧客満足度の向上と言っても、基準となる観測指標がなかったからだ。同じ案件でも、人によっては「うまくいっている」と「危ないのでフォローしないと」という風に判断が完全に人にひも付いていた。

カスタマーサクセスを構築するために二つの施策を考えた

 そこで、データを扱うインフラ部分を整理しないと話にならないと考えた平島氏は、新たに利用するツールの選定を行うことにした。ポイントは4つあり、一番重要なのが「変わっていく業務フローに対応できる柔軟性があること」だった。

「弊社はスタートアップなので、ころころ変わるわけではありませんが、業務フローや提供するサービスが変わる可能性があります。そのときに、既存のツールなどでシステムやフローが決まってしまうものだと、うまく管理できなくなります。そこで、カスタマイズ性が高く、いろんなツールと連携も可能なkintoneに出会いました」(平島氏)

収集、連携、分析、活用の4ステップで導入を推進

 平島氏は元々アパレル畑なので、ITに詳しいわけではないという。いくらkintoneがわかりやすいと言っても、すぐにフル活用するのは無理な話。そこで、収集して、連携して、分析して、活用する4ステップにフローを分解して、手を付けることにした。

kintoneを活用するための4ステップを設定した

 まずは、情報の収集。ビジネスフローごとに情報がちらばっていたのを、kintoneへ一元化することにした。例えば、問い合わせはGoogleスプレッドシートで管理し、営業履歴はワークマネジメントプラットフォームの「Asana」や個人メモを使っていたが、kintoneの「お問い合わせ管理アプリ」に集約した。見込み顧客に対しての顧客管理ツールだが、マーケティングオートメーションツールやSFAツールの機能を持たせようと考えた。

 問い合わせフォームに入力すると、自動的に管理アプリに登録させる仕組みにした。どのサイトから問い合わせたのかも記録し、流入分析も行なえるようにしている。商談前には、営業がお問い合わせ情報を元に準備をして、想定課題を把握できるようになった。商談フェーズも可視化できた。以前は、営業によって情報の粒度がばらばらだったが、入力する項目やテンプレートを整備することで、粒度を統一できたという。

問い合わせ管理アプリにMAやSFAの機能を搭載した

「もうひとつ、受注したお客さまに対して、定性情報を管理する顧客カルテアプリを作成しています。CRMツールの機能を持たせたいと思い、弊社の場合、契約や運用の状況を変動性が高いので、情報を漏れなく管理できるような工夫をしています」(平島氏)

 満足度調査のための定期ヒアリングや、トラブルなども管理できるようにした。ビジネスフローがkintoneに集約されたことで、ルックアップや関連レコードを活用して、データの連携ができるようになった。さらに、必要なデータは自動更新できるので、無駄なコピペ作業も削減できた。

顧客カルテアプリにはCRMの機能を搭載した

 この2つのアプリで、情報を集めて連携できるようになったが、ここまでは当たり前のことだと平島氏は語る。集った情報をしっかりと分析しなければ意味がないからだ。

「サービスごとのターゲットと、実際の流入ターゲットとの乖離はどうだろうとか、抱えている課題といった分析をしています。営業時に失注した時に失注理由を放置するのではなく、クライアントのニーズやサービスの課題発見をするためにデータを分析しています」(平島氏)

 解約時にはしっかりとヒアリングをして、次回の運用時の注意点を発見するなど、ノウハウを溜めるようにもしている。その上で、これまでに収集して連携し、分析したデータをフル活用した「顧客マスターアプリ」を作成した。優良顧客の定義を数値化したものだ。

「ヘルススコアの管理ツールはたくさん世に出回っていますが、弊社のサービスは変動性が高く、カバー仕切れないことが多々ありました」(平島氏)

優良顧客の定義を数値化して、ヘルススコアを独自に設計した

 しかし、独自のヘルススコアを作ることで、今まで人に紐付いていた判断基準が数字で管理できるようになった。スコアという基準に、解約フォローをするのか、拡大フォローをするのか、という判断ができるようになる。

更新率や顧客満足度が向上し、売り上げも伸びた

 収集した声や分析したデータは、サービスのブラッシュアップにも活用している。クレームが多かったり、トラブル対応が多かった、サービス範囲を削除したり、逆にニーズの高いサービス内容に関してはラインナップを増やしたりして、顧客満足度の向上につなげた。

 そのおかげで、はっきりとした効果が出た。導入初期での更新率は69%から86.4%に15.4%増え、最初のミッションとして課せられていた継続利用率は85%から13%アップして98%になった。さらには、しっかりフォローできる設計を行なうことで、1社当たりの平均売上が1.8倍に伸びた。かなり高い、満足度指標を得たと言ってよいだろう。

平島氏がkintoneを導入して得られた効果

「今後の活用展望としては、情報は共有し、可視化し、活用されるもので、その活用されるデータは経営指標になります。そこで、ダッシュボード機能を実装して、リアルタイムに経営判断を行えるような状況を作っていきたいと考えています。また、今は会計ツールと連動できていないので、請求書データをCSVで吐き出している状況ですが、kintoneと会計データ、会計ツールをつなぎ合わせて自動化したいと考えています」(平島氏)

 ステップを設定してkintoneを導入し、データの収集と連携にとどまらず、分析と活用まで取り組んだ結果、大きな導入効果を達成した平島氏。kintoneを活用することで、まとまると強い、というキャッチコピーを体感したそう。

「まとまると強い、活用すればもっと強い、それがkintoneと考えています」と平島氏は締めてくれた。

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