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国内VDI活用事例も紹介、コールセンターを“全面在宅勤務化”したチューリッヒ保険も登壇

デル、「VDI当たり前時代」に取るべき戦略や技術トレンドを紹介

2020年09月04日 07時00分更新

文● 大河原克行 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 デル・テクノロジーズは2020年9月2日、企業IT担当者を対象とするオンラインセミナー「ニューノーマル時代のリモートワーク最前線 ~これからのクライアント仮想化~」を開催した。

 同セミナーでは、企業におけるリモートワーク推進のためのヒントを探りながら、「VDI当たり前時代」と位置づけるなかでのシンクライアント戦略を説明。それに伴って注目を集めるHCI(ハイパーコンバージドインフラ)製品の動向なども紹介した。また、デルの「Wyseシンクライアント」を導入し、カスタマーケアセンター(コールセンター)業務を在宅勤務に全面移行したチューリッヒ保険会社が登壇したほか、IDC Japanもクライアント仮想化市場の最新動向について説明した。

コールセンター業務の全面的な在宅勤務化を行ったチューリッヒ保険会社の事例も紹介された

デルがRDSH(リモートデスクトップ)よりもVDIを推奨する理由

デル・テクノロジーズ データーセンター・コンピュート&ソリューションズ事業統括 製品本部シニアプロダクトマネージャーの岡野家和氏

 デルの岡野家和氏はまず、クライアント仮想化の方式について「デルではRDHSよりもVDIを推奨している。それには理由がある」と切り出した。

 クライアント仮想化の手法は大きく分けて2種類だ。データセンターにある仮想マシンを1ユーザーごとに割り当てる(1ユーザーが専有する)「VDI」と、単一サーバーOS上で稼働するデスクトップ環境またはアプリケーションを数十~数百ユーザーで共有する「RDSH(リモートデスクトップセッションホスト)」である。RDSHは、さらにデスクトップ画面をクライアントに転送する方式と、個別アプリケーションのウィンドウだけを転送する方式とに分かれる。

 「インフラコストだけを比較すると、RDSHのほうにメリットがある。ただし、かつては数倍の価格差があったものが、現在では30%程度の差に縮まってきている。しかも、VDIでは複数のアプリを操作する際にも、PCと同じような操作ができて利便性が高い。RDHSでは、サーバーOSで動作するアプリに利用が限定されるが、VDIではクライアントOSも動くのでPCと同じアプリが利用できる。そのほか、VDIは仮想マシンを1ユーザーが専有するため、ある端末(仮想マシン)がマルウェア感染してしまっても、マイクロセグメンテーションでその端末だけを切り離して拡散を防ぐことが可能だ。このように、VDIは利便性とセキュリティの観点からメリットがあるので、われわれはVDIを推奨している」(岡野氏)

クライアント仮想化の“2大方式”は、仮想マシン専有型のVDIとサーバーOS共有型のRDSH。デルではメリットのより大きなVDIを推奨している

 そして岡野氏は、デルではVDI環境を構成するためのクライアント端末、サーバー、ストレージ、スイッチのすべてを提供できること、VDIサーバーの保守サポートはハードウェアだけでなく、ハイパーバイザ、サーバーOSまで含めたワンストップ対応が可能だと説明。「デルは、VDIの調達とサポートにおいて理想の環境を提供できる」とまとめる。

 VDIの活用事例として岡野氏が紹介したのが、佐賀県鹿島市にある祐愛会 織田病院である。同病院は100年以上の歴史を持つ、職員数305名(うち看護師118名)、111床規模の病院だ。鹿島市における高齢化率は約30%に達しており、「治す医療」から「治し、支える医療」への転換にITを活用しているという。

 同病院では、サーバー6台とストレージ1台で構成される統合仮想化基盤を構築、これをVDIにも利用している。電子カルテをVDI経由で参照できる仕組みとし、院内および在宅医療向けにタブレット端末を配備して、医師や看護師、介護士、薬剤師、管理栄養士、医療ソーシャルワーカー、ケアマネージャーらが情報を共有しているという。

 「こうした地方都市の病院においても、仮想インフラを当たり前のように利用して、VDIのメリットを享受している。『VDIは当たり前もの』、もはや大企業だけのものではないことを示す事例と言える」(岡野氏)

VDIの技術トレンド:HCI、AMD EPYCサーバー、GPU活用領域の拡大

 岡野氏は、VDI活用における3つの技術トレンドについても説明した。

 ひとつめはHCIである。HCIは仮想化サーバー/SANスイッチ/共有ストレージの三層アーキテクチャを統合し、しかもHCIノードの追加だけで柔軟にスケールアウトすることができる。岡野氏は、VDI用途においてもビジネスニーズに対応する俊敏性や柔軟性、スモールスタートと柔軟な拡張性、導入の迅速さと容易さ、運用と管理のシンプルさといったHCIのメリットが生きてくると説明。そのうえで、デルが提供するHCI「Dell EMC VxRail」を紹介した。

 

 「VxRailは、ヴイエムウェアがサーバーベンダーと共同開発した唯一のHCIシステム。デルでは、VDIに特化したモデルとしてVxRail Vシリーズを製品化している。Vシリーズでは、vGPU(仮想GPU)に対応したGPUを最大6基搭載可能だ。HCIシステム市場でデルは圧倒的な世界シェアを持っており“一強”の状況。VDIにおいても、HCIの活用検討を推奨したい」(岡野氏)

VDIの技術トレンドその1、HCI。スケールアウトが容易であり、ユーザー数の増加に応じて拡張していくVDIのインフラに適している

 国内のある自治体におけるVxRail導入事例にも触れた。この自治体では約2500ユーザー、同時接続2000セッション規模のVDI基盤にVxRailを導入。そのアプライアンス5台に加え、ファイルサーバー、バックアップストレージ、スイッチまで、デルがワンストップで提供している。「保守窓口もデルに統合しており、少人数のプロジェクトチームでもスムーズな運営を行っている」(岡野氏)という。

 2つめの技術トレンドが、第2世代AMD EPYCプロセッサ「AMD EPYC 7002シリーズ」である。突出したコア数を持つことから、1ホストにより多くの仮想マシンを収容したいVDI環境で大きなメリットがあるのが特徴だ。

 「第2世代EPYCプロセッサは、x86サーバー向けCPUとして初めて7nmの製造プロセスを採用し、1ソケットあたり最大64コアを提供できる。VMware製品はソケット単位でライセンスをしており、新たに(2020年4月より)1ソケットあたり32コアという上限が設定されたものの、優位性は変わらない。EPYCプロセッサは仮想化に最適であり、今後は無視できない技術になる」(岡野氏)

第2世代AMD EPYCプロセッサの特徴。メモリ容量のキャパシティも大きく、多数の仮想マシンを動作させる仮想化ホストサーバーに適している

 EPYC搭載サーバーのVDI向け活用事例として、ネットワンシステムズでの導入事例を紹介した。ネットワンシステムズでは2013年からVDI基盤を採用し、約2400人の従業員が利用している。ソケットあたりのコア数が多いことによる、VDI利用時のパフォーマンス優位性を検証し、第1世代EPYCプロセッサを搭載した「Dell EMC PowerEdge R7425」サーバーを42台導入したという。

 3つめの技術トレンドには「GPU活用領域の拡大」を挙げた。

 「これまでも、ワークステーションを仮想化する際にはNVIDIA GPUを活用する例があったが、昨今では『vPC』や『vApps』といった技術を通じて、より一般的なマルチメディアアプリケーション向けにもGPUを活用する例が増えている。VDI基盤として、NVIDIA GRIDソリューションの国内受注も予想以上に多い」(岡野氏)

VDIにおけるGPU活用領域が拡大し、より幅広い(一般的な)業務に対してもサーバー上のGPUが活用されるようになっている

 デルでは、こうした新技術を活用するための「VDIソリューション構築サイジングツール」や「ソリューションガイド」、リファレンス構成情報を提供しており、さらにVDI導入を支援する各種サービスも提供していると紹介した。

 「ユーザー企業の置かれている立場や状況に合わせた導入サービスを用意している。VDI化の検討や計画のフェーズから、実装フェーズ、運用フェーズまで、多岐にわたるサービスが提供できる。導入前にメリットを測るアセスメントサービスも用意している」(岡野氏)

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