コロナ渦の在宅勤務を支えるインターネットサービスを目指す
誰にでも使えるIPv6を目指したGMOインターネットとJPNEのチャレンジ
緊急事態宣言の在宅勤務を支えることができた
-次にコロナ禍におけるISP事業についてお聞かせください。緊急事態宣言で多くの会社で在宅勤務が必須となったこともあり、インターネット接続の需要は急増したと思うのですが、GMOインターネットはどうだったのでしょうか?
伊藤:はい。ISP事業って基本的に引っ越し時期に契約が伸びる傾向があるのですが、正直この3・4月は今までと比べても突き抜けたような伸びがありました。
当初は「明日から在宅勤務が急遽必要になった!」みたいな感じで緊急性が求められたので、モバイルルーターがかなりの勢いではけました。ただ、パケットや速度の上限値もあるし、時間によっては混むので、恒久的なテレワークを見据えて5月くらいからは固定回線のFTTHに需要がシフトしていきました。
今回、特に切実な声をいただいたのは学生さんです。学校に行けなくなり、自宅でオンライン授業を受けるのですが、モバイルだとインターネットが遅いとか、パケット代がかかるといった声が多く上がっていました。こうした悩みに対して、v6プラスを使ったわれわれのサービスが役に立てたという実感があります。
-JPNE側から見て、こうした需要の増加はどのような感じでしたか?
石田:他のISP含めて、コロナ禍以前に想定していたよりも回線数は伸びていますね。回線数の増加に比して、トラフィックがさらに増えてしまうのが悩みの種なのですが(笑)。
-やはり悩みの種なんですね。
石田:使った分の従量課金ではなく、固定料金で使い放題という日本のサービス形態は、事業者としては正直苦しいところです。トラフィックは増え続けていますし、業界内でも「これでいいのか?」という議論はつねに出てきます。
でも、固定料金で通信料を気にせずにインターネットを使えたからこそ、日本は今回のコロナ禍を乗り越えられたのではないかとも思っています。ユーザーが通信料を意識せずとも、Web会議でコミュニケーションし、クラウドを利用した在宅勤務にシフトできた。今後もわれわれ事業者は技術革新によって、こうした課題を乗り越えて行かなければなりません。
-GMOインターネットは今回のコロナ禍において、いち早く全社一丸での在宅勤務を進めたり、印鑑をなくしたり、といった行動を自ら示し、業界をリードしてきた印象があります。
伊藤:今回のコロナ禍で、もはやインターネットがなければ仕事ができない、生活ができないという風になったと思います。
これは弊社でも同じです。われわれはインターネットの会社ですが、普段はオフィスで働いて、家に帰ったらそれほどインターネットを使わないというパートナー(従業員)ももちろんいます。そんなパートナーが、いざ家で仕事をやろうと思ったら、ネットが遅すぎて、「壁にマウスを投げそう(なくらいのストレス)だった」という話もありました(笑)。同じように、インターネット接続の安定性や速度が重要になることもみなさん実感したのではないでしょうか?
私見ですが、いまの30~50代くらいの方は、この20年くらいで非常に濃厚なインターネット体験をしているので、詳しい人も多いです。でも、ネットが当たり前にあった若い世代は、そもそも固定回線でインターネットを使えることを知らない人も多いし、FTTHや光ファイバーってなんですか?という方もいます。その点、今回はインターネット体験を見直すいい機会になったと思います。
ポストコロナの新しい働き方とサービスを提案していく
-最後、ポストコロナに向けたGMOインターネットのサービス戦略について教えてください。
伊藤:すべての会社が新しい働き方をできているとは思いません。インターネットを使いこなしていない会社は、今でも社員はストレスを抱えて在宅勤務をしています。もちろん、われわれが行動で示していくのも重要ですが、課題を解消するソリューションやサービスを提供していくのもわれわれの役割だと思っています。お客さまが新しい働き方に腰を据えて取り組んでいただけるよう、わかりやすく提供して、見せていきたいと思います。
石田:会社の方向性というより、アイデアに近いものですが、「入社していきなりテレワーク」みたいな新入社員などに向けた在宅勤務パッケージみたいなものを提供できるのもよいのかなと思います。インターネットに困っていたり、スマホだけでは難しいといった課題を抱えていると聞いているので、パソコンとFTTHをワンストップで提供できたら、ユーザーも喜ぶのではないでしょうか?
-「GMO在宅勤務パッケージ」みたいなサービスですね。今までのように会社で仕事するのが当たり前という時代は会社のネットワークを増強してきたのですが、これからは個人と会社のインフラが「対称的なスペック」という時代になるかもしれません。新しいビジネスが広がりそうです。最後、今後のサービスの方向性やチャレンジについてコメントいただけますか?
伊藤:われわれはインターネットで仕事を変えていくことにチャレンジしていきます。でも、冒頭からお話ししているように、サービスがわかりにくいことは、お客さまにとってインターネット利用のハードルになります。だから、v6プラスによって「つなげばすぐ使える」という環境を実現することが、今後もわれわれにとって重要だと考えています。
われわれから見たJPNEさんは、新しい技術で課題を解決してくれる会社。単純にトラフィックをさばくだけの会社ではないんです。JPNEさんも、今はIPv6というところに取り組んでいますが、5~10年先を見据えて、さらに新しいサービスを作っていただき、私たちはそれをお客さまにわかりやすく提供していきたいです。
-石田社長、インフラを担うJPNEへの期待は大きいようです。
石田:すごく重い宿題をいただきました(笑)。ただ、方向性として固定とモバイルの一体化という流れだと思っています。今までは固定か、モバイルかという二者択一でしたが、5Gの時代はモバイル回線だけではなく、バックエンドの光ファイバー網と一体化した1つのシステムが求められます。
利用する端末は進化したスマホや、進化したパソコンなのかもしれませんが、とにかく後ろではシステムがうまく機能することで、固定やモバイル、あるいは事業者の違いを意識しないでインターネットを利用できるようにしていきたいです。その上で、eスポーツのような低遅延が重要なコンテンツ、Web会議のような多人数でトラフィックを大量に利用するアプリケーションなどを、意識せずに使える仕組みを作っていくのがわれわれの役割だと思っています。
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