RPAを導入したのに業務改善していない!?RPA導入の失敗と対策

文●ASCII

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 RPAという言葉がトレンドに入り、多くの企業が業務改善のためにRPAを導入しはじめています。MM総研が行った調査によれば、日本国内でRPAをすでに導入している企業の割合は、全体の32%という結果が出ています(2019年1月)。約半年間で10ポイントも増加しており、この勢いは今後も続くと予想されます。

 しかし、RPAを導入すればすぐに自社の課題をすべて解決できるわけではありません。RPAを導入したものの「想定よりも業務効率がアップしない」「メンテナンスや改修で逆に業務が増える」など、別の問題を抱える企業も存在します。今回は、RPA導入で想定される失敗やその対策をご紹介します。

なぜRPAの導入は失敗するのか?

 業務改善のためにRPAを導入しようと意気込んだにもかかわらず、導入に失敗する企業があります。失敗の最大の原因は、RPA導入の目的がはっきりせず、RPAを導入すること自体が目的になってしまうことです。「とりあえず人気のあるツールを導入してみよう」という安易な考えが、失敗を招きます。

 RPAはあくまでも手段であり、具体的な課題を解決するためにRPAの利用を検討することがポイントです。業務改善や生産性向上のための手段はほかにもあるため、RPAで自動化すべき業務なのかどうかを見極めることが、RPAの導入失敗を防ぐために肝心なことです。つまり、導入前にどれだけ緻密に業務設計ができるかにかかっているといえるでしょう。

 RPAに適した業務であるかの見極めには、単位時間、従事者数、実施サイクルの3つの基準があります。業務において時間と従事者が多くかかり、実施するサイクルの頻度が高い業務にRPAを導入すると、その効果を存分に発揮します。ただし、業務内容の変更が多いものは、そのたびにRPAのプログラムを書き換える必要があり、メンテナンスのコストが多くかかる場合がありますので注意が必要です。

RPAには得意なことと不得意なことがある

 RPAは、どんな業務でも自動化することができると思われがちですが、ツールによっては得意な分野と不得意な分野が存在します。したがって、RPAを導入する際には、解決しようとしている課題がRPAの得意とする分野であることを押さえておく必要があります。業務内容によっては無理してRPAを導入せず、今まで通り人間が業務を行った方が効率が良い場合もあります。

 RPAの得意なことの1つに「パターン化された作業の自動化」を挙げることができます。RPAは画面上で行うパターン化された作業なら大抵のものを自動化できるので、多くのアプリケーションに対応できます。つまり、このアプリケーションは自動化できるが、別のアプリケーションには対応できないという状況に陥りにくく、汎用性が高いのも特長です。

 逆にRPAが不得意なことは、イレギュラーなことが頻発する業務や、状況によって判断や意思決定が必要な業務です。業務プロセスの変更や例外的な状況に対応できるように自動化するには、RPAのシステムを組みなおす必要があります。そのため、自動化することによってかえってコストや時間がかかってしまう可能性があります。システムを組みなおすことが頻繁に起これば、その後のメンテナンスも煩雑になり、担当者が入れ替わったときに、RPAの構造や使い方がわからなくなってしまう可能性もあります。

 例を挙げて考えてみましょう。定期的に更新される名簿を確認し、新規に追加されたデータがあれば、その情報を別のシステムに入力する業務があったとします。このようなパターン化された業務なら、RPAで簡単に自動化することができます。

 ところが、状況により問題が発生することがあります。名簿に入力された名前や住所など、文字数がある一定以上を超えると、うまく処理されずにエラーになるなどの事態です。このような業務を人間が手作業で行っている場合、文字数が多くても、目視で内容を確認し、適宜入力することは簡単です。しかし、RPAには例外的な状況に臨機応変に対処する能力はありません。そこで、あらかじめ発生しうる例外を想定し、その例外に対応できるように事前にシステムを作り込む必要があります。システムの作り込みが複雑になれば、それだけマンパワーや時間がコストとして発生します。

 つまり、RPAを効率よく活用するには、RPAの特性を十分に理解しておくことが重要です。導入前に解決しようとする課題が、RPAにとって得意な分野であることが第一条件となります。それから、考えられるイレギュラーな事態を洗い出し、RPAが対応できない部分は人力でやるのか、システムを作り込み完全自動化するのかを検討します。複雑な業務の完全自動化を目指すのならば、一定以上のスキルを持った人材が必要になります。十分なスキルを持った人材がいない場合は、RPAが苦手な分野については導入を見送る判断も必要になるでしょう。

RPA導入の失敗を防ぐには

 RPAを導入する目的が明確であり、その業務がRPAの得意とする分野であっても、RPAを導入する際には押さえておきたいポイントというものがあります。

 狭い範囲から適用範囲を広げていく

 飛行機や自動車を設計する場合、はじめから実物大で作り始めることはしません。小さいスケールのモデルで試行錯誤を繰り返し、最終的に実物を完成させます。これと同様に、RPAを導入する際もはじめから広範囲の業務の自動化を成功させるのはなかなか難しいでしょう。最初は業務や部門を限定し、狭い範囲で簡単なソフトウェアから始めましょう。効果を検証しながら、試行錯誤を重ねることで、徐々に適用範囲を広げていきます。経営陣がRPA導入に積極的ではなかったとしても、業務改善の効果を具体的な数字で示すことができれば、承認を得やすくなり、広範囲の適用に推進力がつくでしょう。

 利用部門と開発チームが連携する

 RPAを導入する業務は、ルールがマニュアル化されていることが望ましいですが、実際の業務は判断基準が担当者に委ねられている場合が多いでしょう。そのような業務にRPAを導入する場合、ロボットの開発チームに利用部門の人間が積極的にコミットする必要があります。開発チームが作ったロボットをいきなり現場に導入するのではなく、開発段階から利用部門の人に業務に関する十分なヒアリングをすることが、現場で活用してもらうために大切です。

 慎重にツールを選ぶ

 RPAはベンダーによってさまざまなツールがあります。ロボットが人間の業務を代替してくれるという点においては同じですが、操作性や管理のしやすさ等はツールによって差異があります。ベンダーから直接説明を受けているときは簡単に思えたものが、実際に自分でロボットを作るときは使いづらく感じることもあります。

 ツールを選ぶ方法として、同じ業務を異なるツールで実際に自動化して検証するやり方が有効です。そうすることで操作性の違いや使いやすさを確認することができます。ベンダーの説明だけではなく実際に使用してみることが重要です。

明確な目的意識を持つ

 「ユーザー企業のIT活用実態調査 2017年(野村総合研究所による調査)」によれば、調査対象の27.9%の企業が、デスクワークの自動化・効率化のためにRPA導入に興味、関心を示しています。さらに、実際に導入を検討している企業は43.1%という結果が出ており、RPAへの関心の高さが伺えます。

 しかし、RPAを導入すること自体が目的になっていると失敗する場合が多いです。たとえ導入に成功しても管理がうまくいかず、いつの間にか手作業の業務に戻るケースもあります。RPAを導入すれば簡単に業務改善ができると甘く考えるのは危険といえるでしょう。本気で業務改善を目指してRPAの導入を検討するならば、導入目的を明確化することがはじめの1歩です。

※本ページの内容はユーザックシステムの「業務改善とIT活用のトビラ」の転載です。転載元はこちらです。

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