会計処理から勤怠管理まで! あらゆる業務を自動化するRPAの実力

文●ASCII

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 ロイヤルホテルが運営するリーガロイヤルホテルでは、会計処理に関する業務へのRPA(Robotic Process Automation)導入に成功しています。月末に売り掛けを締めるための日々の業務がRPAで自動化されたことにより、担当者は月末に抽出データが正確に計上されているかを確認するだけになり、1ヵ月で約200時間の業務時間が短縮されました。

 今回は、会計処理や勤怠管理のような定型業務のRPA活用法を紹介します。

企業が自動化したいのは手間のかかる定型業務

 ユーザックシステムでは、RPA導入を検討中の企業や実際にRPAを利用している企業に対して、2019年10月にアンケートを実施しました。調査結果に、RPAを利用して自動化したいと考える業務が示されていますので、以下に見てみましょう。

 ニーズが高かったのは、RPAに適している、パターン化された定型業務はもちろんのこと、Excelデータを利用したシステムへの登録やレポートの作成業務です。ほかには、複数のシステム間でのデータのやりとりや、ウェブサイトからの情報収集も挙げられています。

 また、この調査からは、多くの企業がある特定の業務だけをRPAで自動化しているのではなく、複数の業務をまたいでRPAを利用していることもわかりました。

「自動化した(したい)業務内容」
(「RPAマガジン第3号」より引用)

・処理手順が明確な事務作業
・Excelなどの電子データからシステムへの登録
・繰り返し行われるデータ入力や確認作業
・システムからExcelなどでレポートの作成作業
・複数のシステム間でのデータ転記、登録作業
・複数のウェブサイトから情報収集作業
・大量に集中する定期的な事務処理
・ウェブサイトや社外システムへのデータ登録作業
・システムの運用監視

 さらに同調査によれば、RPA自体を他の機能と連携させて業務効率を上げることを期待している企業が多いことも判明しています。

 RPAと連携させたい機能としてもっとも希望が多かったのは、OCR(Optical Character Recognition、光学文字認識)。OCRとは、手書きの文章や印刷された書類をスキャナーやカメラによって取り込み、パソコンで利用できるデジタルデータに変換する技術です。

 例えば、大量の手書きの領収書をデータとしてパソコンに保存し、会計管理を自動化するには、OCRでの読み取りとRPAによる自動化の連携的な運用が必須です。業務に関するデータがほとんどデジタル化され、ペーパーレス化が進んでいる現代でも、手書きの領収書や過去に印刷された書類など、業務に関して紙媒体は依然として利用されており、OCRの技術はまだまだ重要です。

 OCRの次にRPAとの連携が期待されているのはAIです。AIと連携させることによって、従来人間が行っていた判断をAIに任せ、業務はRPAで自動化する考え方です。例えば、過去の売上データや景気の状況、顧客データを判断材料とし、その時点でどの業務を行うべきかをAIに判断させることが可能になります。将来的には広く社会に普及し、人間の業務を代替すると考えられています。

 そのほか、会計やBIツールについてもRPAとの連携を多くの企業が期待してます。RPA単独で運用するだけではなく、他の機能と連携させることによって、より幅広い分野で柔軟に業務を自動化することができるのも、RPAの魅力です。

「将来RPAと連携させたい機能」
(「RPAマガジン第3号」より引用)

・OCR 29%
・AI 18%
・会計 17%
・BIツール 10%
・勤怠 9%
・申請 7%
・人事 5%

RPAで会計処理・経理業務を自動化する

 会計処理・経理業務をRPAによって自動化する例を見てみましょう。会計や経理の分野は、業務の標準化・パターン化が進んでいる領域なので、RPAの導入効果が高い分野といえます。RPAで代替できる業務は下記のようなものです。

・買掛金の処理に関する業務
・買掛金や売掛金の管理
・固定資産や棚卸資産の管理
・総勘定元帳の管理
・決算に関する業務
・経費精算に関する業務

 以下に、会計処理や経理業務におけるRPAの導入事例を紹介します。

会計処理のRPA事例1

 ヨーロッパのある製造業の会社では、RPAを買掛金業務に導入することに成功しています。RPA導入前は、担当者が請求書を読み、内容を理解したうえでシステムに情報を入力し、入力情報と発注や納品システムのデータを検証していました。そこから、総勘定元帳にデータを転記するという業務フローです。

 RPAの導入により、まず請求書をスキャナーで読み、データを取り込みます。取り込んだ請求書の情報をシステムに入力、検証、転記する作業をすべて自動化することに成功しました。

 RPAの導入効果として、買掛金業務にかかる作業時間は約65~75%の削減を達成しています。データの読み取りや入力ミスが減少、エラー数の削減にも繋がり、作業の品質向上によるメリットも得られています。

会計処理のRPA事例2

 経費精算に関わる業務を自動化した事例もあります。経費の精算処理における上長の確認や承認をRPAによって自動化しました。

 RPA導入前は、従業員が申請する経費は、所属長やその上長が確認と承認をする業務がありました。これらの業務はマニュアル化されていましたが、非常に属人的で、業務負担がかかるうえに、不正発見の効果には疑わしい部分が多くありました。

 RPAの導入により、所属長と上長による確認業務はすべて廃止となりました。例外的なケースの対応方法はルール化し、内部監査に関する業務も効率化されました。その結果、不正や浪費などを明確にすることが可能になり、それらの検知、追跡、防止することができるようになったのです。

RPAで勤怠管理を自動化する

 次に、勤怠管理を自動化するRPAの導入事例を紹介しましょう。勤怠管理もパターン化された定型業務なので、RPAによる自動化の得意分野といえます。

 勤怠管理の業務フローでは、毎月、各部門や事務所の勤怠情報がCSVやExcelデータとして業務担当者に送られてくることが多いでしょう。担当者は、このデータをシステムへ登録し集計する業務を行う必要があります。情報量が膨大になるケースがあり、入力ミスも許されないため大きな業務負担になります。この勤怠管理に関する業務にRPAを導入すれば、担当者はデータ処理のエラーを確認するだけで業務を終わらせることができるのです。

 RPAを利用した業務フローでは、勤怠情報収集の際に、情報が紙の書類やファックスで送られてくる場合には、OCRを利用してデータを読み取り、テキストデータ化します。収集されたデータをソフトウェアロボットが認識し、部署名や社員番号、勤怠データを読み込み、人事給与に関連するシステムにログインし、勤怠データを登録していきます。これら一連の流れはRPAによって自動で行われるため、業務の担当者はエラーチェックのみを行えばよいのです。

勤怠管理のRPA事例1

 ある会社では人事部門にRPAを導入することで、業務改革に成功しました。RPA導入前は、勤怠システムからデータを抽出し加工する作業は、業務担当者が行っていました。単調な作業ですがミスが許されないため、複数名でのチェック体制をとっており、大きな業務負担となっていたのです。

 この課題を解決するためにRPA導入が決定し、約半年間で20台のソフトウェアロボットを開発しました。その結果、業務にかかる時間は1年間で約370時間の削減に成功しました。作業時間の削減だけではなく、ロボットによる業務処理により、入力ミスといったヒューマンエラーが起こらなくなりました。この会社では将来的に500時間の業務削減をめざしています。

会計処理、勤怠管理は自動化できる

 会計処理や勤怠管理はRPAが自動化を得意とする分野です。業務改善の効果が見えやすく、RPAの導入効果が発揮されやすい領域なので、積極的な導入を検討してみましょう。限られた人材や時間を有効活用するためには、RPAの導入は急務といえるのではないでしょうか。

■関連サイト

※本ページの内容はユーザックシステムの「業務改善とIT活用のトビラ」の転載です。転載元はこちらです。

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