佐々木喜洋のポータブルオーディオトレンド 第33回
音質とコスパの高さが魅力の英国ブランド
RHAの完全ワイヤレスがTrueConnect2に進化 、左右同時伝送に対応
2020年08月03日 13時00分更新
完全ワイヤレスイヤホンには、今では迷うほどの選択肢がある。本連載では1万円台で音質に優れたモデルをいくつか推してきたが、そのグループにまた新製品が登場した。それはRHAの「TrueConnect2」だ。
RHAは英国グラスゴーに本拠を構える2011年創業のイヤホンブランドで、以前このコーナーでも「CL750」を紹介した。リーズナブルな価格と音質を重視するブランドだ。前モデルの「TrueConnect」も音質の良さには定評があったので期待感は大きい。
左右同時伝送に対応して接続性が安定
TrueConnect2は、TrueConnectの後継機で価格は据え置き。下にアンテナ部を伸ばしたデザインも踏襲されている。一見すると違いはないようにも思えるが、中身は大きく改良されていて、接続性・音質・再生時間・通話品質・操作方法などについての向上が図られている。カラーリングはブラックとネイビーブルーが選択可能だ。
音質もTrueConnectに比べて改善が図られ、コンシューマモデルらしく低音が誇張されていたTrueConnectに対して、より上級機のような音造りをしているということだ。連続再生時間は単体で5時間から9時間へと大きく改良され、通話用マイクも2マイクに改良されて通話品質も良くなったとしている。また操作性では後で述べるようにタッチ操作が採用されている。
従来モデルからの大きな進歩のひとつは“左右同時伝送”方式に対応して接続性を向上させたことだ。完全ワイヤレスイヤホンは、プレーヤーからの信号を左右のうち一方が受け、他方に信号を転送することでステレオ再生できるようにするのが一般的。これをリレー方式というが、これは接続の安定性や遅延の面で不利となる。左右同時伝送方式は、左右のユニットがプレーヤーと個別に接続し、同時に信号を受けられるため、接続が安定し、遅延の減少が期待できる。
TrueConnect2の「左右同時伝送」では、クアルコムの「TWS+」方式ではなく、最近採用例が増えているアイロハの「MCSync」方式を使っているようだ。TWS+は、イヤホン側だけでなく、スマホ側の対応(ハード/ソフトの両面)も必要になる。そのため、利用できるのは、上位のSnapdragonプロセッサーを搭載した、Androidスマホが中心となるが、MCSyncでは、こういった制限なくiPhoneなどでも利用できる。
ちなみに、このMCSync方式は、一見するとBluetoothのオーディオプロファイルであるA2DPの仕様(1ユニットとのみ通信可能)と矛盾しているように思えるが、MCsync対応の完全ワイヤレスイヤホンは、左右ユニットが分かれていても、スマホからは同じひとつのユニットにみなせるようだ。また、ポーズやスキップなどの操作信号も、左右ユニット別々にやりとりできる。
高級感があり、年代を問わず使える
箱を開けると充電機能付きの金属製ケースが収まっている。質感が高くコンパクトな点が好感触だ。ケースはけっこうがっちりとしているのでカバンの中に無造作に放り込んでも大丈夫だろう。ケースには充電用のUSB Type-C端子が付いている。
ケースには充電状態を示すインジケーターがあるが、白い控えめなLEDなのが良い。またイヤホン側のLEDインジケーターも耳の内側にくる配置になっているため、外からは派手なLEDの点滅は見えないシックな感じだ。
箱にはイヤーピースがS/M/Lで複数ペア付属している。前モデルに付属していたフォームチップは今回付属していない。イヤーピースは完全ワイヤレス向けの傘が短いタイプだ。
ケースの蓋を少しスイングさせるとイヤホンが現れるが、この動作もスムーズで高級感がある。同様に格納もスムーズだ。イヤホンの装着感も良く、するっと耳に収まる。下に伸びるアンテナ部が気になることもなく、むしろステムが頬にかかることでよりしっかりとホールドされている感覚だ。
TrueConnect2では操作方法が物理ボタンからタッチセンサーに変更されている。タッチセンサーなので押し込まなくても操作はできるので、耳に圧力をかけない点は良い。ただしダブルクリックやトリプルクリックは多少慣れが必要かもしれない。
所用で電車/バスなど交通機関に乗った際に利用したが、問題はまったくなかった。スマホを尻ポケットに入れても、スマホのアンテナ部を手で覆っても、左右ユニットを手で囲っても問題ない。
試聴時は、iPhoneに接続した。ペアリングは他の機種と大差はない。MCSyncを使用しているせいか、他の完全ワイヤレンスによく見られるような「XXX-L」や「XXX-R」のようなスマホ側に表示される左右別の名称表記はない。常に一つの名前だけがスマホのBluetooth設定に現れる。
音質は完全ワイヤレスとしてはかなり高い。ワイヤレスイヤホンというと、音が甘く感じるものが多いが、TruneConnect2は楽器音が鮮明で歯切れが良く、音場の立体的な広がりも気持ちが良い。中高域は綺麗に響く感じで透明感がある。低域は歯ぎれよくインパクトがあって、パワフルに感じるがそれほど低音の誇張感は強くない。ボーカルは明瞭で歌詞がよく聞き取れる。背景の小さな音も鮮明に拾うので解像感も高く感じる。
前モデルTrueConnectと比較すると、一段と音の広がりが良くなり、スケール感の良さが感じられるようになった。また音の歯切れも良くなっているように思う。TrueConnectでは低音域重視だったが、TrueConnect2では低音が前モデルから誇張感は抑えめになり全体のバランスが整えられているように思う。これはRHAの言の通りに上級機を意識した音造りということの成果だろう。
*まとめTrueConnect2は音質の良さもさることながら、質感の高いケースや格納動作、派手すぎないLEDの点灯設計など、大人が使っていても違和感のないシックで高級感がある点が魅力だ。ここが歴史ある英国らしさということなのだろう。音的にもジャズやクラシックなど大人の音楽に向いていると思う。また一方で中音域の再現に優れボーカルが聴き取りやすく、楽器の打撃音も気持ち良いのでアニソンにも良いだろう。
ノイズキャンセリングは不要だが音質には妥協したくない広い年齢層のユーザーにお勧めの完全ワイヤレスイヤホンだ。
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