写真編集や動画エンコードでの性能は?
Ryzen PRO 4000Gシリーズは非常に優秀な内蔵GPUを持っているため、ビデオカードを組み込まなくてもコア数の多い(6〜8コア)システムが組める。ではCPUパワーがモノを言いやすいクリエイティブ系アプリではどの程度のパフォーマンスが出せるのだろうか?
まずはRAW現像アプリの定番「Lightroom Classic」で試してみよう。100枚のDNGファイル(24メガピクセル)を用意し、簡単な補正をかけた後に100枚全てを最高画質のJPEGファイルに書き出す時間を計測する。書き出し時にはシャープネス処理(スクリーン用、標準)を付与している。
Zen 2ベースのRyzenは特にLightroom Classicの処理が高速である、ということに筆者は折に触れて言及している。その理由についてはZen 2が大容量L3キャッシュを持っているからではないか、と推測してきたが、Ryzen 3000シリーズに比べてRyzen PRO 4000Gシリーズはかなり時間がかかっていることから、この推測が確かなことが確認できた。8C/16TのRyzen 7 PRO 4750Gよりも、4C/8TのRyzen 3 3300Xの方が1分以上早く処理を終えているのだ。Lightroomを使う人は、L3キャッシュの多いRyzen 3000シリーズを使った方がより快適ということになる。
続いては動画エンコード時のパフォーマンスを「Media Encoder 2020」と「HandBrake」で比較してみよう。
まず「Media Encoder 2020」は、「Premiere Pro 2020」で編集した約3分半の4K動画をMedia Encoder 2020にキュー出しして1本のMP4動画にエンコードする時間を比較する。コーデックはH.264(80Mbps、VBR 1パス)およびH.265(50Mbps、VBR 1パス)である。
L3キャッシュ量で処理時間が大きく変わったLightroom Classicと違い、こちらは前回触れたCINEBENCH R20の結果に非常に近いものとなった。動画エンコードではL3キャッシュよりもコア数が支配的であるため、Ryzen 7 PRO 4750Gはコア数の少ないRyzen 5 3600Xよりも短時間で処理を終える。
ただ同コア数対決だとRyzen 3000シリーズの方が早く終了する。Core i7-10700Kも健闘しているが、Ryzen 7 PRO 4750Gに一歩及ばない。前世代のRyzen 3000Gシリーズに比べ、今回のRyzen PRO 4000GシリーズはCPUが大幅に強化され、より万能型のCPUになったといえるだろう。
続いて「HandBrake」だが、こちらは再生時間約5分の4K動画(H.264)をフルHDのMP4およびMKV形式にエンコードする時間を計測した。コーデックや画質設定はプリセットの「(H.264)Super HQ 1080p30 Surround」「H.265 MKV 1080p30」を使用した。
こちらの結果もMedia Encoder 2020と同傾向であることが確認できた。
ちなみに、HandBrakeもPremiere Pro 2020もテストラン時にCPU温度を「HWiNFO」で追跡し、サーマルスロットリングに入っていない事を確認している。今回のテスト環境ではCore i7-10700Kが最も高温になったが、80度台にとどまっており、Thermal EventフラグもThermal Limitフラグも立っていないことを確認している。

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